みなさま、こんにちは。

今日から11月になりました。
光陰矢のごとしとは言いますが、今年も残り早2ヶ月なんですね。
年始に掲げた「今年中にやるべきことリスト」、まだまだ消化できていない自分に愕然とする美しき秋の日です。(笑)

では、今日は先月韓国で見てきた『観相』(邦題仮)の感想など。

感想に入る前に。

今日は第50回大鐘賞(テジョンサン)映画祭の授賞式が行われる日。
ノミネートされている作品と俳優を見てみると、今年も本当に粒揃いだなぁと改めて韓国映画界の活力を感じます。

大きく分けると『7号室の贈り物』(邦題仮)と『観相』の受賞争い。
そこへ絡んでくる『新世界』(邦題仮)と日本でも公開された『ベルリンファイル』(原題:ベルリン)。
いやいや忘れちゃいけない、日本公開も控えた『スノーピアサー』(原題:雪国列車)と。それはそれはまあ、豪華絢爛なんでございます。

1300万人の観客動員をたたき出した号泣映画の『7号室の贈り物』と『観相』をダブルで大賞に選んでいただきたいですが、きっとそんなことはありませんね。
僅差で・・・・・・「7号室」かなぁ。(なぜか弱気。笑)
でも、主演男優賞は、ソン・ガンホさんで。

そんな感じで予想してみました。

わがチョ・ジョンソクさんは助演男優賞にノミネートされてるんですが、取ってもらいたいですね。ええ、絶対に。(笑)

『観相』からそれますが、パク・シフさんも『殺人の告白』(原題:私が殺人犯だ)で新人男優賞にノミネートされていますね。
順当にいけば、新人男優賞は間違いなくパク・シフさんだったでしょうね。
作品のクオリティーや俳優の力量からして。
でもどうでしょう・・・・・・。キム・スヒョン君が持っていくのかなぁ。
実は今日の授賞式をきっかけにパク・シフさんの活動再開とか、あったりするのかもしれませんが。
夜の結果が楽しみですね。

ちなみに受賞式は生放送ではなく、録画放送だそうです。
KBS2、野球中継が午後7時台から入っているので。
授賞式見に行っている人たちがツイートとかしそうですよね、フライングで。(笑)

というわけで、前置きが長くなりましたが、1000万人越えを目指して現在も絶賛上映中の『観相』。

kwansang_poster_image1_3

この映画の感想をまずはマルバツでざっくりあらわしてみますと。

・全体的な面白さ    マル
・シナリオ 設定    マル
・俳優の演技      マル
・おすすめ度       マル
・鑑賞後の後味     バツ

後味が苦いです。

苦すぎます。

にしたって、NAVER映画の評論家採点、低すぎー!(怒!)

いきなり吠えましたが。(笑)

以下、ほどほどにネタバレしつつ書いてみます。
毎度のネタバレ、まことに恐縮です。

ストーリーは都・漢陽(ハニャン)で妓楼を営むヨノン(キム・ヘス扮)が、謀反の嫌疑で地位を追われ片田舎で隠遁生活を送っている没落両班で観相家のイ・ネギョン(ソン・ガンホ)を訪ねてくるところから始まります。

ヨノンは自らも妓楼で観相家然と客を占っているのですが、息子ジニョン(イ・ジョンソク扮)と義弟ペンホン(チョ・ジョンソク扮)と暮らすネギョンの噂を聞き、店で荒稼ぎさせるだけの実力があるかを見極めるべく、案内人をともなってやってきたのでした。

絹の反物を売る商売人だと偽る二人の嘘を、顔相から即座に見破るネギョンに舌を巻くヨノン。これは本物だと確信し、身分を明かした上で自分の店で働いて欲しいと誘い文句を残します。

そんな正体不明の訪問者がすこぶる気に入らない息子ジニョンは、まさかまた観相を始めるつもりではないだろうなと父親を激しくけん制。
もはやなれる筈もない両班になるべく科挙の勉強を続けている息子が哀れでたまらない父ネギョンなのですが、結局ネギョンはペンホンとともに上京することを選びます。
足の不自由な息子に薬を買ってあげたい親心からでした。

kwansang_stealcut6

・・・・・・絵面が汚すぎる。

両班の面影、ナッシング。

そりゃ息子に疎まれもしましょう。(笑)

都で一番の妓楼でチヤホヤともてなされ、すっかりいい気分に出来上がる二人なのですが、こすっからい女将ヨノンにまんまとしてやられ、来る日も来る日も人の顔を観て過ごす羽目になるのですが、やがて転機が。

妓楼を離れるには身分の高い人と知り合うのが早道だと考えたネギョンは、ヨノンが両班と話しているところにすかさず歩み出て、観相家としての実力を見事にアピール。

kwansang_stealcut3

笑いながら怒っているヨノンの顔が最高な場面です。

しかしこれがまた、コメディからシリアスへの転換点なんですよね。

この後ネギョンは歴史上の人物である文宗(ムンジョン)、キム・ジョンソ、スヤン大君に会うことになり、王座を狙う文宗の弟スヤンと元老キム・ジョンソとの政争にいやおうもなく巻き込まれていくことになるのですが、そのあたりのことはきっと日本公開があるだろうということで一旦は伏せておきます。

伏せておくんですが。

この映画一番の見所は、スヤン大君登場シーンです。

圧巻。

ある意味スヤンがセクシーすぎる。(笑)

すっごくカッコイイんです、イ・ジョンジェさん。
カッコよく見せる演出が光ってます。

この映画のシナリオは2010年の韓国シナリオ公募展での大賞受賞作で、シナリオを元にハン・ジェリム監督が演出を手がけたのですが、キム・ヘスさんはシナリオを読んで「男装のスヤンにするつもりはないか」と監督に打診したそうです。スヤン大君の描き方が魅力的で、自分が演じたくなったとのことでしたが、野心あふれるスヤン大君の姿は確かに映画の中でも十分魅力的です。
イ・ジョンジェさんがこんなにカッコイイのは、『砂時計/モレシゲ』のチェヒ以来です、私にとっては。(チェヒはほぼ無言でしたが。笑)

kwansang_stealcut4

kwansang_stealcut5

どうですか、この感じ。

いかにも野心満々そうじゃないですか?(笑)

一大政争劇に巻き込まれてしまった観相家ネギョンと息子ジニョン、そして義弟ペンホンの辿る結末は、能天気に「とにかくハッピーエンドを」と望むのが癖になりつつあったぬるい鑑賞者にとっては、なかなか辛いものがありました。

だって、ネギョンとペンホン、途中まではこんな感じだったんです。

kwansang_steal_image_3

kwansang_stealcut

kwansang_stealcut8

kwansang_stealcut7

kwansang_stealcut9

kwansang_stealcut10

kwansang_stealcut13

・・・・・・つきあってる?

すみません。(笑)

とにかくこの二人、息がぴったりなんですよね。
カップル賞にノミネートされてもおかしくないくらいの勢いです。
こんなふうにのべつ幕なしイチャイチャ楽しそうだった二人だったのに・・・・・・。

最後のほうのペンホンは、すっかりこんな顔。

kwansang_stealcut11

kwansang_stealcut12

悲しくてもう書けない。(涙)

ちなみにヨノンの役柄はシナリオにはなく、今回キム・ヘスさんのために新たに加えられたキャラクターだそうです。
シースルーのチョゴリなどのアイデアを出したのもキム・ヘスさんなのだそう。
この映画にキム・ヘスさん演じるヨノンというキャラクターが加わったのは、大成功だったと思います。
世捨て人同然だったネギョンを都に誘った重要人物ヨノン。華やかな容姿の下に秘められた抜け目のないこすっからさをキム・ヘスさんがさすがの演技力で見事に表現してくれています。

最後まではネタバレせずにおきます。
日本公開になった暁には、是非劇場でご覧になってみてくださいね。
上映時間が2時間20分と、割と長めなはずなのですが、まったく時間を感じさせずに最後まで見せてくれる映画です。
お勧めします。

ネタバレは控えますが、感想を記しておきます。
以下、私的総評。

『観相』のタイトルに違わぬ、役者たちの滲み出るような「顔つき」が光る本作品。
出演者の魅力的かつ多彩な演技は本当に素晴らしく、ここまで揃いも揃って名演技が引き出されていることに、感嘆を覚えます。
実力のある俳優を揃えた結果でもありましょうし、演出力の賜物とも言えるのでしょうね。

しかし、批評家たちの評価はいまひとつ辛い。
冒頭ではああ述べたものの、実は故なきことではないと私も感じています。

要因は、なんと言ってもこの映画には絶大な比較対象が存在しているという点。

そう、『王になった男』。

『王になった男』の公開よりこの映画のほうが先であれば、これだけの舞台設定と映像のクオリティ、俳優の演技を前に、不足を覚える人は圧倒的に少なかったのではないかと想像します。
なにしろ、『王になった男』が良すぎたんです。いくら別の映画だといっても、最高に良質なものを既に観てしまっている観客にとっては、『観相』の批判精神の不在は致命的な物足りなさとして映ります。
『王になった男』以降の時代劇映画は、ことごとく厳しい目にさらされるでしょうね。超えるのがあまりにも難しい。

そう考えると、チョ・ジョンソクさんの次回映画も時代劇なので、早くも不安がよぎりますが・・・・・・。(笑)

二つ目は、絶好の舞台設定を生かしきれなかった点。

韓国の人たちにとっては歴史的な事件として広く知られている癸酉靖難(ケユジョンナン:계유정난)。
誰が誰になにをしたのかという事実関係はもう確定的なので、「そうきたかー!」と見る者が思わず膝を打つような展開がいやがうえにも求められると思うんです。

稀代の観相家がキム・ジョンソとスヤン大君との政争に巻き込まれるなんて、ものすごく新鮮でワクワクする舞台設定です。その上演じるのはソン・ガンホ。
同じ結果にたどり着いたとしても、「もしかしたら違う結果があったのかもしれない」と思わせてくれるような会心の展開があることを、誰もが期待していました。
でも、肝心のそこが、弱い。
あるにはあるのですが、いかんせん、弱い。
そもそものメッセージ性が足りないとも言えます。
「娯楽なんだから、ここまで出来がよければ十分じゃん」という意見と「もうちょっと、もう一歩、あって欲しかった」という声とのせめぎあい。
私は多くの場合は前者ながら、この映画に関しては後者です。

極上の素材だからこそ、もっともっとと求めてしまうんでしょうね。
「最終兵器 虎」ならぬ『最終兵器 弓』(邦題:神弓-KAMIYUMI)には、誰もここまで求めません。(笑)

遠からず日本にも入ってくればいいのですが。
日本で公開されたら、是非ご覧になってみてください。
色々書き連ねてハードルをあげましたが、十二分に楽しめる映画であることは、間違いないです。

あー、また観たいな~。