みなさま、こんにちは。白香夏です。

私は最近、どこかに避難している夢をよく見ます。
今これをご覧になっている方の中にも、私と似たような状態の方がいらっしゃるかもしれません。

被災していない私ですらそうなのですから、実際に被災されている方々の心労たるや想像を絶するものがあると思います。

いつかまた、被災されたかたがこのブログを訪れて下さり、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

さて、今日は『ソ・ジソブの道』を翻訳した時の、ちょっとした裏話をご紹介します。
みなさんはソ・ジソブとソ・ジソプ、どちらが正しいか迷ったことはありませんか?

多分、ネット上で検索してみると、両方とも記述が出てくると思うんですよね。
実は私、当然のように、ソ・ジソ「プ(PU)」と訳して原稿をクライアント様にあげました。
そうしましたら即座にお返事を頂いて、「ブ(BU)」に直してくださいと言われまして。その時初めて、公式ファンクラブでは「ブ(BU)」になっていることを知りました。

これは本当に話すと長くなるのですが(なのでかいつまみます。笑)、近年韓国語翻訳者を悩ましているのがこの「名前表記をめぐるたたかい」なんです。

今でこそ日本で韓国人を見かけるのは珍しくもなんともなくなりましたが、例えば私が学生の時代など、韓国からの留学生など一握りしかいませんでした。

なにしろ韓国は軍人が支配する独裁政権が長らく続いていましたし、軍人以外の人が大統領になったのはようやく1993年になってのことです。韓国の人が外国に留学するのはまだ一般的ではなかった時代でした。

今の韓国のイメージからするとちょっと意外かもしれませんね。でも、韓流ファンのみなさんの中には昔の韓国のイメージをお分かりの年代の方も大勢いらっしゃると思います。

その頃は、私のような祖父母の代から日本に住んでいる在日コリアンのことは「オールドカマー」、仕事や留学で日本に来ている韓国人を「ニューカマー」と分けて呼ぶことが社会学的には一般的でした。

「オールドカマー」と「ニューカマー」が接触する機会も実はあまり多くはなく、言葉に関しても、東京外国語大学の菅野裕臣先生が体系的に確立された朝鮮語(韓国語)の法則がもっとも正しく権威あるものとされていました。

日本で確立されている法則から申しますと、ぶっちゃけさせていただけば、ソ・ジソ「ブ(BU)」ではななく、「ソ・ジソプ(PU)」と音訳するのが語学的にはより正しいのではないと私は思っています。

でも、今は韓国からこられた方がとても多くなりましたし、韓国と直接取引するお仕事も非常に増えました。

韓国の方からすれば、自分のつかっている言葉や表記が正しいに違いないと思うのは、至極当然のこと。

ただし、韓国のローマ字は、音を表しているのではなく、ハングル文字を表しているという点からすると、日本語に音訳する際にはそれが必ずしも「正しい音訳」であるとは言えないんですよね。


소지섭 SO Ji-Sub


これが韓国における正式の英語(ローマ字)表記です。

これを日本でのローマ字の常識に直すと「ソ・ジス(ブ?)」となると思います。


韓国の母音には二通りのオがありまして、 ㅓ と  ㅗ があります。
「ソ」・ジソブさんの ソ は ㅗ を使うほうのオ(소)で、ジソブの「ソ」はㅓを使うほうのオ(서)。
もっと言いますと、ジソブではなく、ソの字に子音 ㅂ(p or b)がついたものです。

例えていうなら、ビッグといった時のBig、「グ」の部分ですね。これをパッチムといいます。(専門的には終音といいます。子音+母音+子音の形で、最後にくる子音をさします)

このパッチムとしてのㅂに関しては、ぱぴぷぺぽで音訳するのが、韓流ブームが沸き起こる以前までの日本の韓国語翻訳における常識だったと、少なくとも私は認識しています。

ですが、その常識は韓流ブームとともに目に見えて大きく変わりました。



韓国語には「ぱぴぷぺぽ」にあたる子音が三種類あります。

ㅂ ㅍ ㅃ です。

ㅂに関しては、言葉の並び次第で濁音になったり、ぱぴぷぺぽになったりする法則があります。

これを韓国でのローマ字表記に直すと、ㅂはB(or P)、ㅍはP、ㅃはpp・・・・・・。

字の区別をローマ字で表現しようとしているので、えらくややこしいのです。

2004年ごろには、こんなこともありました。
私の中で「ゴン・サンウ事件」と名づけているものなのですが、フジテレビが『天国の階段』ですとか、『悲しい恋歌』などを放送する際、宣伝番組などで一時期「ゴン・サンウ」「ゴン・サンウ」と連呼していたのです。

あの「ゴン・サンウ」の衝撃はいまだに忘れられません。(笑)

권상우 クォン・サンウ のクォン/コンはGだ、と誰かネイティブの韓国の方が主張されたのだろうと推測しております。

韓国語を一つの言語として客観的に習得した人間であれば、絶対に姓は濁らないし、単語の一番最初の音は濁らない法則があるのを熟知しているので、日本語で韓国人の名前を音訳する際に姓に濁音を使うことは常識的にほぼありえないと思います。

これも、日本語に音訳した時に「かきくけこ」に当たる文字が韓国で三種類あるところからきた行き違いです。

同じ理由から、一時期ペ・ヨンジュンさんのお名前ですら「ベ(Be)・ヨンジュン」となっているのを見ました。

また、確かペ・ヨンジュンさんは ぺをBAEとローマ字表記されていると思うんですよね。

これも、「ゴン・サンウ」理論で言えば「ベ・ヨンジュンじゃないの?なんでこれはぺなの?」と私はお聞きしたい衝動に駆られるわけですが、こちらのほうは日本での常識的な音訳をさせてくださっているというわけです。


・・・・・・あら? 

なにかわたし、ジソブさんの「ブ」に異議を唱えているような感じになってますでしょうか??

いえいえ、そういうわけでは、でもそうではないとも言い切れず(笑)、こんなことが名前表記、音訳表記の裏に隠されているんですよということを、ちょっとお伝えしようと思った次第です。

やはり韓国語も外来語ですから、誰もが満足し、納得のいく音訳はない、ということかもしれませんね。

特に韓国では濁音の概念が日本ほどはっきりしていないので起きる問題でもあります。(私もネイティブコリアンの友人に「チでもジでもどっちでも同じじゃん」、などとよく言われます。でも、日本語にとってはチとジはどこまでいっても同じにはなりません)

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ついつい長くなってしまいました。


韓国語の翻訳にまつわるお話は、これからも書いていこうと思っています。


今日がみなさまにとって良い一日になりますように。