みなさま、こんにちは。

今日は、前回書いた『三食ごはん コチャン編』の予告編映像に使われていたカンサネさんの歌『おじいちゃんとスイカ』(邦題仮)をご紹介しようと思います。

漁村から農村に移った『三食ごはん コチャン編』の予告編。

農村風景とまさかの田植え作業という絵面に「ええっ?!」と笑ってしまった視聴者ですが、期待を高めてくれる予告編に使われていたカンサネさんの歌があまりに雰囲気にぴったりで、すっかり楽しくなってしまいました。

『三食ごはん コチャン編』予告編動画、再掲しておきます。
(記事はコチラ

 

 

 

予告編で使われたこの曲『おじいちゃんとスイカ』(邦題仮)は、カンサネ/강산에さんが1992年に発表したデヴューアルバム‹Vol.0›の1曲目に収録されています。

 

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カンサネさん。
ハングルがお分かりの方ならお気づきかと思いますが、このお名前、単純に「カン(姓)サネ(名)」ではないんですよね。一文節で「山河に」という意味なんです。原語では川(カン)が先にきていますが。

カンサネさんの本名はカン・ヨンゴル。
この名前が田舎臭くて好きになれず、大学の時に「カンサネにすれば」と人にすすめられ、以降カンサネと名乗られるようになったのだそうです。
本来なら「カン・サネ」と区切るべきところでしょうが、ここでは意味を優先して区切らずに表記します。

カンサネさんはいわゆる韓流スターではないかもしれませんが、日本になにかとゆかりのある方でもあるので、韓流ブームが起こる前から韓国の大衆芸能に触れる機会がおありだった方にはよく知られていると思います。

韓国では知らない人のいない、若い人でも歌は聞いたことがあるであろうカンサネさんですが、今回ここではじめて知ったという方向けに少しご紹介してみます。

カンサネさんは1963年生まれ。
代表曲といえば、なんと言っても真っ先に「・・・ラグヨ」が思い浮かびます。
「・・・ラグヨ」は“…라구요”と書き、意味は「『○○』ってね」、「『○○』だってさ」のように、引用句につく終助詞。
歌のタイトルとしてはとてもユニークですよね。
ちなみに「ラゴヨ/라고요」でも同じ意味です。

「・・・ラグヨ」の歌詞は、朝鮮戦争により故郷を追われ韓国側に逃れてきた父が、帰れなくなった故郷を思い出すたびに焼酎をあおり、涙ながらに「一度でいいから行きたい」と語る姿を伝えるもので、聞くと鼻の奥がツーンとしてしまいます。

実際、カンサネさんのご両親は、ともに北側から南側に朝鮮戦争中に逃れてこられたそうで、北側に家族を残したまま韓国で同じ境遇の者同士、新たに家庭を築かれたそうです。
そうしたこともあり、「・・・ラグヨ」は離散家族の心情を代表する曲となっています。

住んでいた地元・釜山から逃れたい一心で進学したソウルの慶煕大学漢医学部を中退後、日本に渡ったカンサネさんは、そこで伴侶となる日本人女性に音楽を通じてめぐり合い、91年にご結婚されています。
まだ韓国が日本の大衆文化を受け入れていなかった頃、カンサネさんは新聞のインタビューなどを通じて日本の文化をすぐにでも全面的に受け入れるべきだと自分の言葉で伝えていました。
なにをどう受け止めるかは個々人が判断すべきもので、韓国と似て非なる異質な日本文化を受け入れることは、すなわち韓国自身を振り返り、自らを知る手がかりにもなるのだと。

1996年6月27日付け、くしくもちょうど20年前の今日、ハンギョレ新聞のインタビューで「日本の人や文化とすぐに出会うべきだ」と主張していたカンサネさん。
当時韓国で唯一無二の存在として知られていたX-JAPANについて触れたくだりで、「日本の中で彼らは一つの人気グループに過ぎない。もっと多様なジャンルの、実力を備えたミュージシャンが数え切れないほどいる」とインタビューで答えているのを読み、くすっと笑ってしまうと同時に時代の空気に感慨深くなりました。

音楽通の韓国の方が「カンサネいいよ」ということでファーストアルバムを下さったため、私自身も割りと早く彼の音楽に触れてはいたのですが、カンサネさんの魅力に開眼したのはもっとあとの2003年の野外フェスでした。

もう、とにかく、かっこよかったんですよね。
ユン・ドヒョンさん目当てに行ったのですが、カンサネさんのかっこよさがハンパなかったです。
パジャマじゃないかっていうくらいヨレヨレでダルダルのTシャツとパンツに帽子を合わせたいでたちだったのですが、歌の上手さもさることながら、あの独特の動きと間合い。
一緒にみていた女子7、8名全員がカンサネさんにやられるという、稀有な現象が起きました。(笑)
2002年に発表された7枚目のアルバム「カン・ヨンゴル」をみんなで買って帰ったのは言うまでもありません。
7枚目も本当に名盤で、確実に新たなファン層を獲得したと思います。

自分自身を受け入れ、「田舎臭い」と嫌っていた親からつけられた名前をアルバムタイトルにし、『明太(ミョンテ)』(タラの意)ではお父さんの故郷・咸境道の方言を全面的に歌詞に取り入れたカンサネさん。
裏に秘められた物語には胸につまされるものがありつつ、音楽自体はとてもファンキーなので、また機会があればそうした曲もご紹介できればと思います。

 

ちなみにカンサネさんの正規アルバムは8枚目まであり、その他にもEPアルバムなどを発表されています。

こちらは2011年4月に発表されたミニアルバム、“Kiss”のジャケット。

 

 

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なんだか年を追うごとに素敵なんですよね、この方も。

というわけで、今日は『おじいちゃんとスイカ』。

公式の動画がなかったので、you tubeにあったものを貼っておきます。

リンク切れの際はご了承ください。

 

 



할아버지와 수박

할아버지 그 하얀 수염 쓰다듬으시며 언제나
이웃 복덕방에 내기 장기 두러 나가셨지

해 질 무렵 콧노래를 흥얼거리시고 큰기침하고
집으로 돌아오시던 그 날

아마 내기 장기에서 또 이기셨나 봐
시원한 큰 수박을 양손에 들고 오시네

하하하 웃는 빨간 얼굴에 그 하얀 수염
울 할아버지 생각나네

울 할아버지 울 할아버지 보고 싶어
울 할아버지 울 할아버지 나의 친구

울 할아버지 울 할아버지 그리고 파란 수박
코가 찡하도록 생각나네

할아버지 그 하얀 수염 쓰다듬으시며 언제나
이웃 복덕방에 내기 장기 두러 나가셨지

해 질 무렵 콧노래를 흥얼거리시고 큰기침하고
집으로 돌아오시던 그 날

나는 즐거워 하네 수박도 너무 크네
너무 잘 익었네 나는 기뻐하네

그런 나를 따뜻한 눈길로 어루만져 주던
울 할아버지 생각나네

울 할아버지 울 할아버지 보고 싶어
울 할아버지 울 할아버지 나의 친구

울 할아버지 울 할아버지 그리고 파란 수박
코가 찡하도록 생각나네

코가 찡하도록 생각나네

 

おじいちゃんは例の白い髭を撫でつけながら
いつも
近所の不動産屋に 賭け将棋しに出かけたっけ

日暮れ間際に 鼻歌を歌いながら 大きく咳払いして
家に戻ってきたあの日

たぶん賭け将棋で また勝ったんだろう
冷たくて大きなスイカを両手に抱えて帰ってきたのをみると

ハハハと笑う赤い顔とあの白い髭
うちのおじいちゃんを思い出す 

うちのじいちゃん うちのじいちゃん 会いたいよ
うちのじいちゃん うちのじいちゃん 僕の友だち

うちのじいちゃん うちのじいちゃん そして青いスイカ
鼻がツーンとするほど思い出す

おじいちゃんは例の白い髭を撫でつけながら
いつも
近所の不動産屋に 賭け将棋しに出かけたっけ

日暮れ間際に 鼻歌を歌いながら 大きく咳払いして
家に戻ってきたあの日

僕ははしゃいでた スイカもすごく大きかった
すっごく熟れててさ 僕は喜んだんだ

そんな僕をあたたかい眼差しで撫でてくれた
うちのおじいちゃんを思い出す

うちのじいちゃん うちのじいちゃん 会いたいよ
うちのじいちゃん うちのじいちゃん 僕の友だち

うちのじいちゃん うちのじいちゃん そして青いスイカ
鼻がツーンとするほど思い出す

鼻がツーンとするほど思い出す

 

ハラボジ ク ハヤン スヨ スダムシミョ オンジェナ
イウッ ポットンパンエ ネギ チャンギ トゥロ ナガショッチ

ヘジ ムリョ コンノレル フンオゴリシゴ クンギチハゴ
チブロ トラオシドン クナ

アマ ネギ チャンギエソ ト イギションナバ
シウォナン クン スバグ ヤンソネ トゥゴ オシネ

ハハハ ウンヌン パガン オグレ ク ハヤン スヨ
 ハラボジ センガンナネ

 ハラボジ ウ ハラボジ ポゴシッポ
 ハラボジ ウ ハラボジ ナエ チング

 ハラボジ ウ ハラボジ クリゴ パラン スバ
コガ チンハドロ センガンナネ

ハラボジ ク ハヤン スヨ スダムシミョ オンジェナ
イウッ ポットンパンエ ネギ チャンギ トゥロ ナガショッチ

ヘジ ムリョ コンノレル フンオゴリシゴ クンギチハゴ
チブロ トラオシドン クナ

ナヌン チュゴウォ ハネ スバト ノム クネ
ノム チャ イゴンネ ナヌン キッポハネ

クロン ナル タトゥタン ヌンキロ オルマンジョジュドン
 ハラボジ センガンナネ

 ハラボジ ウ ハラボジ ポゴシッポ
 ハラボジ ウ ハラボジ ナエ チング

 ハラボジ ウ ハラボジ クリゴ パラン スバ
コガ チンハドロ センガンナネ

コガ チンハドロ センガンナネ

 

これ、おじいちゃんと仲良かった人が聞いたら、泣きませんか?(笑)

いいですよね、「賭け将棋」とか。
それが近所の不動産屋さんで行われていたりとか。
このゆるーい感じにホッコリします。

カンサネさんのこの歌が世に出た頃は、おじいちゃんを「僕の友だち」と言い切ってしまう感性って、あまり見かけなかったような気がします。
特に韓国だとそうかもしれません。
今や孫がおじいちゃん、おばあちゃんの関係を「友だち」と表現しても突飛でもなんでもありませんが、20年前はまだ新鮮な響きがありました。

赤ら顔をしてスイカを抱え、ご機嫌に帰宅するおじいちゃん。

大きなスイカに歓声を上げる「僕」。

可愛がってくれた大好きなおじいちゃんとの暮らしを懐かしむ歌。

なかなか突いてきますよね、夏休みに番組を見る視聴者のツボを、音楽監督ってば。(笑)

楽しいのに鼻の奥がツーンとさせられてしまうこの名曲のよさを、『三食ごはん コチャン編』の予告編でまた思い出しました。