12/6 追加のお知らせ
『ワンドゥギ』原語版(韓国語版)が出版元のオンラインサイトでも購入できるようになったそうなので、お知らせいたします。
該当ページのリンクはコチラです。

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みなさま、こんにちは。

今日は私が翻訳した韓国の大ベストセラー青春小説『ワンドゥギ』について、お知らせかねがねご紹介いたします。

いやぁ。感無量です。
とうとうこの日を迎えられました。

韓国で2008年3月に発刊され、瞬く間に大ベストセラーとなった『ワンドゥギ』(チャンビ刊)。
手に取って読み始めたそばから日本の読者に届けたいと思い続けてきた韓国を代表する青春小説なのですが、その『ワンドゥギ』が世に出ることになりました。

これが小説『ワンドゥギ』日本語版の表紙。

wandugi1

写真が若干暗いのは、お許しくださいませ。

毎度のことながら、撮った私に技量がないせいです。(笑)

この装丁は、実は韓国版の本家『ワンドゥギ』の色違いバージョンなんですよね。

ちなみに本家は、こんな色合いです。

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・・・・・・今度はちょっと色が薄いですね。(笑)

ご覧いただければお分かりかと思いますが、日本と韓国では書籍の扉が逆なんです。なので、ワンドゥギの位置も逆に。(笑)

『ワンドゥギ』は韓国有数の出版社である「チャンビ」が企画した「第1回 チャンビ青少年文学賞」で受賞の栄誉に輝いた作品で、作者は金呂玲(キム・リョリョン)さん。
金呂玲さんは、当時韓国文学界では全くの新人でしたが、いまや人気作家リストに名を連ねられています。

『ワンドゥギ』は2011年にはユ・アインさんとキム・ユンソクさん主演で映画化もされ、日本でも翌年に公開されましたので、映画のほうで既にご存知の方もいらっしゃるかもしれません。また、『ワンドゥギ』以外にも『優雅な嘘』という金呂玲さんの作品が映画化されているので、そちらのほうをご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんよね。
映画『優雅な嘘』は日本では『優しい嘘』というタイトルで公開され、キム・ヒエさん、コ・アソンさん、キム・ユジョンさんが出演されました。『ワンドゥギ』と同じ監督が撮られたということで、ユ・アインさんもカメオを出演されていました。
発刊以来愛され続けている『ワンドゥギ』は、映画のほかにミュージカルも何度か上映されています。

そんな金呂玲さんの『ワンドゥギ』。
実は私は、「すごく面白い小説がある」と韓国の知り合いに興奮気味に勧められたのがきっかけで、2009年の秋に『ワンドゥギ』に出会いました。

少年漫画チックな絵がほどこされた表紙。
いかにも「青少年向き」な装丁だなというのが、手に取った時の最初の印象でした。
韓国の書籍もお読みになるという方はご存知でしょうが、韓国には表紙や中身に漫画が書いてある本が、とにかく多いのです。

ごちゃごちゃとにぎやかな本の裏には、こんな言葉が書いてありました。


<Cha-Cha-Chaより愉快に、キック・ボクシングより痛快に!>
第一回チャンビ青少年文学賞受賞作

 キム・リョリョンの『ワンドゥギ』は冒頭の一文から読者を惹きつけ、最後の1ページを読み終えるまで目が離せなくなる。カリカチュアされた人物設定とリズミカルな会話、随所にちりばめられたユーモアは、読ませる作品というレベルを超えて、まるで目の前で漫画のページが繰られていくような感覚すら与える。

貧しい家庭の中で育ち、成績も落ちこぼれだが、ケンカだけは誰にも負けない主人公。温室育ちの人間には決して知りえない生活感覚と人間味を備えたワンドゥギは、最近の青少年文学に足りなかった活力を存分に放ってくれる魅力的なキャラクターだ。

都市のスラム、しょうがい者、外国人労働者など、韓国社会の影の部分としてひときわ重みを持つテーマを取り扱いながらも、ワンドゥギというフィルターを通すことによって、これらは情感溢れる、生き生きした隣人の顔で読むものに近づいてくる。青少年は勿論、楽しくてかつ感動的なエンターテイメントを求める若い読者層からも大いに反響があることだろう。

-審査委員講評より-

「なるほど。社会問題が背景になっている本なのね。
でも、外国人労働者問題。貧困。しょうがい者・・・・・・。重たそうだなぁ」

というのが私の本を読む前の率直な印象でした。

それで、ぱらぱらと本を読み始めたのですが。

もう、これが本当に。

最初の数ページでやられました。

めちゃくちゃ面白い。

こんなに面白い韓国の小説、今まで読んだことがなかったです。

私はこれまでも韓国の小説には触れてきていました。
純粋に自分のために読むもの以外で言うと、仕事柄読むものも結構ありました。本として出版するかどうかを決めるための出版社からのリーディング依頼なども、仕事にあったりするんですよね。
目を通したもののうち、実際に世に出たものからリーディング段階でお蔵入りになったものなど様々あるのですが、たとえ韓国ではネームバリューがあり、何十万部も売り上げた作家の本でも、日本の読者の視点では面白いとは限らないことを、それらの経験から知ってもいました。

なので正直に言えば、『ワンドゥギ』に関しても「本当にそんなに面白いの?」と半信半疑でページを開いたというのが実際のところでした。
あっという間に反省しましたが。(笑)

スピード感あふれる文章。
なんとも魅力的な登場人物たち。
気がつけばソウルの外れのごちゃごちゃして薄汚れた坂の上の家々の風景や、中でもとりわけ心もとなさそうに屋上にぽつんとある吹けば飛びそうなオクタッパン(屋根部屋)の光景が、頭の中に完璧なまでに再現されていました。

韓国ドラマでおなじみのオクタッパン(屋根部屋)。
観光地ではないソウルの町で目にする、ドラマの比ではないギョッとするほど薄汚れた、実際のオクタッパン。そのオクタッパンに想像の中のワンドゥギが、担任の糞トンジュが、本を読み終える頃には完全に住みついていたんですよね。
ちなみに「糞トンジュ」というのは、ワンドゥギの担任のイ・トンジュ先生のあだ名です。あんまりなあだ名ですよね。(笑)

小説『ワンドゥギ』は、読み終えた瞬間から日本の読者に紹介されるべき本だという思いにそわそわさせた、私にとっては稀有な本でした。

日本と韓国は、国は違えども似ているところもたくさんある。
そんなことをきっと感じさせるであろうワンドゥギの物語。
この社会のどこかに、もしかしたら私のすぐ隣りにいる、ワンドゥギの物語。この温かい物語に、きっと日本の読者も共感の心を寄せてくれる。
そんな思いを強くしていました。

『ワンドゥギ』は2008年の下半期には、中高生の課題図書や推薦図書に選定されており、これまでの類型販売数は80万部にのぼります。2008年以降、韓国の中高生のうちかなり人口がこの作品を読んでいるんですよね。
また、子どもになにを読ませるのかをしっかり吟味する多くの親たちや、楽しい物語を求める本好きな人たちにも、この作品は選ばれています。

中高生の推薦図書になっているのと関連して、一つ面白いやり取りも身近でありました。
小説の中のワンドゥギは高校1年生の設定なのですが、中学生に読ませるのは早いと考える親たちもいるようなんです。実際私の周りに、「うちの子はウブだから・・・・・・」という理由で、中学2年生の息子に『ワンドゥギ』はまだ早いと判断した人がいました。

「中学二年の息子を『ウブ』だと思い込んでるのは、オンマだけですよ」と笑いそうになったのを思い出します。お母さんってきっと、息子がいくつになってもウブだと思いたいんでしょうね。
などと書くと、ワンドゥギになんだかエライコトが書いてあるかのように誤解されそうですが、全くそういう意味ではありません。(笑)

2008年以降に中学・高校生時代をすごした現在の10代、20代は勿論、多くの大人の読者とファンを抱えている『ワンドゥギ』。
その『ワンドゥギ』という共通項でいつか韓国と日本の読者とが疎通できたらどんなに素晴らしいだろうと思い続ける中で、このたび『ワンドゥギ』を翻訳する機会に恵まれました。
日本語版の発刊を機に、小さな架け橋をひとつ築けたような気がして、とても嬉しいです。

『ワンドゥギ』日本語版を発刊した出版社「コリーヌファクトリーLLC」のオンライン書店へのリンクはコチラです。
実はオンライン書店だけの特典で、めっちゃ可愛いワンドゥギのオリジナルしおりがもらえます。数量限定のようです。

心温まる、本当にお勧めしたい小説です。

是非よろしければ、みなさまもお手にとって下さると嬉しいです。

この愉快な小説で、温かい気もちの輪が広がりますように。