みなさま、こんにちは。

寒い日が続きますね。関東地方、今日も雪の予報が出ておりますが。
油断するとクシャミが出そうなので、気持ちを引き締めております。

さて、締め切りが終わったら一気に見たいと先日書いた『マイダス/ミダス』。
締め切りが終わってもいないのに、実は既に見終えてしまいました。

これは、もう!
ドラマ終了と同時に手を叩きたくなる出来栄え!
素晴らしい!

そんなわけで、今日は『マイダス/ミダス』を見終えての感想などをつれづれに綴ってみようと思います。

韓国ドラマ、ちょっと面白い程度の作品ならあまたあると思いますが、これは私の中では最高によく出来た現代劇でした。
シリアスな話、深みのある社会派ドラマがお好きな方なら、はまるのではないでしょうか。
女性よりも男性が好むドラマかもしれません。
私はこの手の物が大好きなので、完全にはまりました。

誰かを“ペイン(廃人)”にしてしまうようなロマンティックなものではないですが、よくぞここまで一貫性を保って筋をきっちり通したなとうならせるほど、脚本が緻密です。
そして特筆すべき役者達の演技力。

視聴率が振るわなかったそうなので、陰に陽に大衆迎合のプレッシャーがかかったものと予想されますが、そんなことを微塵も感じさせない脚本の一貫性、とても好感が持てました。

実は私、『マイダス/ミダス』にまったく期待しておりませんでした。
このドラマ、タイトルが見る気をそいでいる気がします。
あと、お金の話だということ。
これもなんだかつまらなそうな印象に映っていました。

『マイダス/ミダス』は普通に見ても面白いのですが、同じお金でも韓国の歴代政治家、財閥企業、果ては大統領の名をも人々の口に上らせる、実際の「不正蓄財」「政治的裏金」「お金にまつわる醜聞」を堂々と素材として扱った点で、他とは一線を画すスリリングな物語りだったと言えます。そして結末までパーフェクト。

株価の不正操作が選挙資金づくりを目的に行われていたり、シンガポールなど第三国が巨額な裏金を不正蓄財する拠点に使われていたり、マネーロンダリングのためのペーパーカンパニーが数多く登場したり、表ざたに出来ない金を財閥が私的流用するために社会福祉財団を設立してみたり、「これってあの疑惑のことじゃないの?」と察しがつくような、社会的に取り沙汰されている事柄をモチーフにしています。
そうとも知らず、放送当時まったくノーマークだったのがいまさらながら勿体無く思えます。


では、人物を中心に感想を述べてみます。
以下、ネタバレします。すみません。


まず、チャン・ヒョク(장혁)扮する主人公のキム・ドヒョン。








大手ローファームがこぞって欲しがる、申し分のない人材であるドヒョンは、当初、小さな町工場を営む父に育てられた看護師のジョンヨンと、平凡ながら幸せな家庭を築くことを夢見ていました。
母子家庭で育ったドヒョンは赤貧の時代を経験し、母を亡くすという辛い過去があります。自分と母を捨てた父親を許すことが出来ずにもいます。

司法試験に合格し、司法修習生として研修を積んでいた切れ者のドヒョンに目をつけたのが、インジングループの顧問弁護士チェ・グッカン。
インジングループのために働く条件として、白紙の小切手を提示します。好きなだけ金額を書いていいという意味です。駆け出しの司法修習生に破格の報酬を用意するのはおかしいと、友人や恋人ジョンヨンはいぶかしみますが、ドヒョンはひとまず飛び込んでみることにします。

チェ弁護士がドヒョンに目をつけたのは、実はドヒョンが学生として書いたとある論文のせいでした。
法を解釈する視点があまりに独創的かつ鋭利であるため、ドヒョンの指導教官が「優秀なのがいる」と自慢かたがたチェ弁護士に読ませたのですが、論文を読み、チェ弁護士は舌を巻きます。そして、このような逸材が敵に回ることになれば自陣に打撃がもたらされるかもしれないと勘を働かせ、ドヒョンを抱き込むことに。
第一回目から悪の匂いがプンプンします。(笑)


インジングループの娘が、ウォール街で名を上げたファンド・マネージャーのユ・イネ(キム・ヒエ扮/김희애)であることを知り、ドヒョンはユ・イネのために働くことを決意します。
ユ・イネはドヒョンの憧れの女性でした。









こう書けばもう察しのよい方はお分かりかと思いますが、そうです。
恋人ジョンヨンとの間で三角関係に陥るのです。
辛い展開が目に見えているので、最初のあたりは先を見るのがブルーでした。(笑)










しかし、私の予想を裏切り、このドラマは殆ど恋愛の要素を盛り込んできません。
一方的にジョンヨンがドヒョンと引き裂かれます。
ユ・イネが関係を引き裂いたのは、ドヒョンが金を稼げる優秀なコマだからであって、恋愛感情は一ミリも作用していないところがポイントです。
引き裂き方が実に巧妙で、久しぶりのデートの場所にドヒョンと一緒に現われてジョンヨンを不安にさせたり、王侯貴族のような大金持ちしか手に入れられないジュエリーをわざとジョンヨンに送ってドヒョンと喧嘩させたり、いやらしさ指数100%。(笑)

前半で一番の見所は、結婚式に向かうドヒョンが大型トラックに意図的に追突され、結婚が延期になることでしょうか。一体誰の差し金なのかを最後まで疑わせるつくりが非常に巧みです。


ユ・イネに出会い、人が変わってしまったドヒョンは、ジョンヨンの忠告が耳に入らなくなり、ついには別れてしまいます。










ユ・イネはドヒョンを利用して二つのことを成し遂げようとしていました。
一つは、ほぼ次兄に決まりかかっていたインジングループ跡取りの座を、次兄を追い落として自分が奪うこと。
もう一つは、銀行のオーナーになること。ゆくゆくは金融界の女帝として君臨したいとイネは望んでいました。
次兄を追い落とすために、あらゆる汚い手をドヒョンに駆使させます。
とにかく、富を自分の元にかき集めることにしか関心がない女性なのです。









ユ・ピルサン会長率いるインジングループについても触れておきましょう。

インジングループの財力の起源は、日本による植民地時代より始まります。
会長の父、イネの祖父は当時銀行家でした。植民地解放後は朝鮮戦争の避難地であった釜山で金貸し業を始め、その金を元手に横流しによって得た軍事物資を売りさばき、ひと財産築きます。事業を引き継いだユ・ピルサンはそれまでに獲得した金を元手に本格的な闇金融を起こし、財力を確たるものにします。
表向きには中堅の建設会社とキャピタル、第二銀行を持つだけに見えるインジングループですが、実際は現代グループやサムソングループといった財閥にも劣らない富を隠し持っていることは知る人ぞ知る事実です。

物語が進むにつれ明らかになりますが、ここに加えてチェ弁護士と会長のみが知る「秘密資金」、つまり裏金が2兆ウォンもシンガポールとカザフスタンに眠っています。この裏金は、歴代大統領や有力政治家に惜しみなく金を注ぎ、一族にとって有利な条件を築き上げ、保護させるために保持してきたものです。

ユ会長には正妻との間に生まれた長男、次男、妾の娘イネ、イネの弟ミョンジュン、二番目の妾の娘ミランがいるのですが、次男のソンジュンは臆面もなく腹違いの妹、弟を差別してきました。激高しやすく欲深い性質の次男は、目的のためなら手段を選ばない冷酷な人間です。
イネの長兄は女にだらしなく経営者としての手腕もない、典型的なボンボン駄目長男。ミョンジュンは目も当てられない放蕩息子、ミランも夜な夜なクラブを渡り歩いています。

ドヒョンはイネの望みどおりユ一族の次男を追い込むことに成功し、報復から免れるためイネの筋書き通り海外に出ます。戻ってきたドヒョンは、すっかりもう一人のユ・イネのようになっていました。

企業を乗っ取り、下請け業者をすべて人件費の安い中国に変えるなどということも平気でやれるようになったドヒョン。下請け業者の組合が抗議活動をしますが、暴力を行使して解散させます。そこでジョンヨンの父を見つけますが、ドヒョンは胸を痛めつつも後戻りが出来ません。








とはいえ、事態はドヒョンとイネにのみ有利には進みません。
ドヒョンを破滅させるべく粗探しする次兄によって、ドヒョンの過去も暴かれ始めます。
司法試験を受ける前、証券会社に勤めていたドヒョンには、後ろ暗い過去がありました。
国会議員に頼まれて、株価を操作したのです。そこで得られた利益は大統領選挙の裏金として使われました。インジングループの次兄ユ・ソンジュンのタレコミと依頼によって事実を把握した検察はドヒョンを追い込みますが、逆にドヒョンに弱みを握られ追及できずに終わります。

ハニョン銀行を手に入れる目前まで来たのに、結局、最後は信じていたイネの裏切りによって万事休すの窮地に追い込まれ、ドヒョンは株価不正操作の罪で刑務所に送り込まれることに。










主役を刑務所に放り込むとは、なんというドラマ。ちょっと硬派過ぎますよね。女性視聴者が脱落すること請け合いです。(笑)

ドヒョンに嫌われっぱなしのヤクザ家業の父と、父の舎弟も同じ刑務所に送られてきます。
ドヒョンには腹違いの弟もいて、塀の外で父を待っています。
自分に迷惑ばかりかける父と弟に、ドヒョンはかつて面と向かって絶縁宣言しているのですが、それでも父はエリート街道を進んでいるものとばかり思っていた息子が刑務所に入れられている事実が心配でたまりません。

ドヒョンの父は金脈のある土地を、息子との因縁を知らずにインジングループの長兄から美人局によって騙し取りましたが、逆にチェ弁護士の返り討ちに会い、詐欺罪で捕らえられていたのでした。この土地を付けねらうチェ弁護士とは、これで二度目の争いになります。父は父で、インジングループとの因縁があるのです。

ドヒョンは父の他にも刑務所である男に出会います。
次男を追い込もうとドヒョンが株価を不正操作した際、割りを食って大損させられた、裏社会に通じる男・ク社長。
もう一度株価を不正操作し、かつての損失を補填しなければ殺すとドヒョンを脅しますが、ク社長はドヒョンがイネへの復讐を企んでいることを聞かされ、気が変わります。ク社長もかつてユ・ピルサンの裏金処理に関わっていたことがあるのです。金を処理する過程でトラブルに巻き込まれ、ユ会長によって警察に身代わりに差し出されたク社長は、その時自分を取り調べた検察官がチェ弁護士だったこと、ユ・ピルサンに巨額の埋蔵金があることを知ってチェ弁護士が検察を辞めて顧問弁護士になったことなどを話して聞かせ、ドヒョンを驚かせます。




これは、刑務所を出てすぐイネと闘うため、体づくりをはじめるドヒョンのシーン。









本筋とは関係ありませんが、とにかくチャン・ヒョクさんの筋肉がすごいんですよね。
この腕立て伏せもすごいですが、他にも刑務所で懸垂するシーンもあったりして、本当に喧嘩が強そうです。









それにしても、とことん女性ウケしない絵ですよね。(笑)


刑務所にはジョンヨンが面会に訪れるのですが、ドヒョンはもう自分を忘れるよう伝えます。自分は一族に復讐する怪物になるからと。
なにしろイネは、自分が助かるために検察の魔の手が及んだドヒョンを捨て、仇も同然の次男と手を結んだのです。ドヒョンは復讐を口にする一方で、彼女を止めなければ自分と同様の第二第三の犠牲者が生み出される、それを止めたいのだとも言います。

心配のあまり父が涙ながらにドヒョンを平手打ちしたことをきっかけに、親子は心を通わせはじめ、少しずつドヒョンの内面に人間らしさが取り戻されていきます。









刑務所を出た後は、ドヒョンを助けようとする父と弟の真心がドヒョンにも通じて、ようやく家族らしいまとまりを見せていきます。
とここまで書いて気づいたのですが、私、刑務所の写真ばかり貼っていますね。(笑)



ちなみにドヒョンの弟ドチョルは、この人。













ナンパの達人ということで、なんとインジングループの末娘、ミランに取り入ることに成功したのですが、ナンパの達人には見えません。ごめんなさい。(笑)

出所後のドヒョンは数々の妨害や逆襲に遭いながらもインジングループとイネを追い込んでいきます。
毎回息を呑む展開が用意されていて、最後までまったく目が離せません。
ラストまではネタバレせずにおきます。機会があればどうぞご覧になってみてください。



さて。
ドヒョンVSイネの構図の中では比重が重いとは言えませんが、出てくるだけで目の保養になる彼のこと、触れずにおれません。

放蕩息子の三男、ミョンジュン。













ミョンジュンは、クラブでドラッグをあおって意識不明となり、一族が経営する病院のVIPルームに入院することになった妹ミランの見舞いに訪れた際、VIPルーム専属の看護師であるジョンヨンに初めて出会うのですが、その後なにかとジョンヨンにちょっかいをかけるようになります。

姉が有望な稼ぎ頭として大事にしている一族の新たな顧問弁護士ドヒョンがジョンヨンの婚約者と知り、ますます面白半分に手を出そうとするのですが、毅然としたジョンヨンにことごとく打ち返されます。










姉がドヒョンを変えてしまったおかげで婚約破棄になったことに同情を覚えたミョンジュンは、次第に本当にジョンヨンのことを愛し始めます。
振られ慣れていない遊び人が、冷たくする女性に惹かれるというのはよくある展開ですが、ミョンジュンが末期ガンの患者であることをジョンヨンが知り、ペイン・コントロールのために自宅に通うようになってからは、徐々にジョンヨンも心を開き始めます。

ミョンジュンは、姉への復讐のために自分を利用しても構わないとさえジョンヨンに伝えます。ミョンジュンは金への執着がやまない姉イネを哀れんでいたのです。

ミョンジュンを演じるのはノ・ミヌ(노민우)さんという方ですが、この方が本当に美しくて。
ミョンジュンとジョンヨンのシーンは、二人の美しい子犬ぶりにしばし惚けてしまうほどです。本当に、二人とも、ウットリするほどきれいです。(笑)


















かたやジョンヨン役のイ・ミンジョン(이민정)さん。
透明感があって、演技も上手で、とにかく出てくると魅力的な容姿に釘付けになります。

















イネがお金以外に唯一心から大切にしているのが、弟ミョンジュンです。
イネはジョンヨンがミョンジュンに企みを持って近づいたと思い込み、ジョンヨンを病院から無理やり退職させたりもします。
本当に嫌な女性なんです、イネ。
なのに嫌な女性に見えないところは、キム・ヒエさんの美しさと演技力ゆえだと思います。
本当に上品で理知的なんですよね、どんなに理不尽なことを言っても。(笑)



そして、麗しくないですが、是非ともご注目いただきたいのが、次男の怪演。








粗暴で冷酷無慈悲。強欲さにかけてはイネに負けずとも劣りません。
この次男役の役者さん、演技が上手すぎて怖いです。
このドラマ、影の主役はこの人だと言っても過言ではありません。
人を追い落とした時の悪魔のような笑顔、居丈高な振る舞い、親に取り入るために見せる嘘の涙、ドヒョンを捕らえようと執念を燃やす時のとりつかれたような目。
あまりに役にはまりきっているので、普段の人格まで疑ってしまいそうです。
同じことを韓国の視聴者も思っているようで、「あれは演技ではなくて、素では?」とブログに書いている人が何人かいました。(笑)









恐らくドラマをご覧でない方には普通の笑顔に見えると思いますが、私には自分の悪巧みに誰かがはまったのを喜ぶ顔にしか見えません。



そして荒れ狂う様が容易に想像できる4点セット。










最後になりますが、もう一人注目していただきたいのが、この人。








この人はイネのボディーガードなのですが、「調べてちょうだい」のひと言で、ありとあらゆることを調べてきます。
誰かに盗聴器を仕掛けたり尾行するのは朝飯前で、不審な値動きを見せる他社株の裏事情まで調べてきたり、果てはドヒョンがク社長と刑務所で同じ部屋を使ってたことまで数日で調べ上げます。
一体何者?!
あまりの万能ぶりに「ゼウス君」と呼ばせていただきます。(笑)

日本でもこうしたゼウス的存在は、ありがちなパターンだったでしょうか?
今ちょっと日本の例が思い浮かばないのですが、韓国ではこの手の「万能の神・ゼウス」的パターンが結構多い気がします。
ミッション・インポッシブルとしか思えないことをすべて解決できる人が出てくるパターンのことです。

私が以前翻訳した『中国が北朝鮮を呑みこむ日』という小説にも、「ゼウス君」が登場しました。にっちもさっちもいかない状況になって、万事休すかと思いきや、なぜかカーター元米国大統領だとか先日亡くなったキム・ジョンイル総書記と電話がつながり、国際的な危機を全部救ってしまうというものです。




「ゼウス君」は「荒唐無稽」と限りなく近いので、多用するとかえって作品のリアリティをすべてぶち壊す致命傷になります。
よって、100点満点をつけたいこのドラマの中で唯一私の思考を「ん?」と立ち止まらせる「ゼウス君」の卓越した解決能力については、この際不問に付すこととします。勝手な都合で恐縮です。(笑)

以上、『マイダス/ミダス』の感想を思いつくままに綴ってみました。
『マイダス/ミダス』を見終えてしまい、少し寂しいです。

次はなにを観ようかなぁ。