みなさま、こんにちは。

2月最終日となりました。
今年がもう2ヶ月も終わってしまったんですね。
いつものことながら、2月は本当にあっという間です。

さて今日は久しぶりに映画の話題を。
韓国で1月18日に公開された『ザ・キング』(邦題仮)について取り上げてみようと思います。


去年の暮れから韓国では、非常にスリリングな内容の映画が立て続けに公開されています。

最も驚かされたのは、なんと言っても釜山での原発事故を想定して描いた『パンドラ』(邦題仮)。この映画は電力会社等から圧力が加えられ、公開が2年も押した作品なのですが、よくぞこれだけのものをつくったなと舌を巻くほど踏み込んだ描写になっていました。
韓国現代史上紛れもない転換期にある今だからこそ公開でき、だからこそ観客からも大いに共感を得られた映画なので、日本公開を期待しつついずれとりあげたいと思っていますが、『パンドラ』や『マスター』など今の政局とオーバーラップする映画の最終走者として登場した『ザ・キング』を、今日は取り上げようと思います。


もともと『ザ・キング』は12月中の公開予定でしたが、公開をわざわざ遅らせたようですね。
強烈な反応を呼び起こしていた『パンドラ』と食い合わなかったのは、いい判断だったと思います。


この映画の特筆すべき点といえば、「検察」に焦点を絞ったところ。
韓国社会を現在も蝕んでいる、権力と癒着した「政治検察」のグロテスクな欲望と生態を取り上げた映画なんです。




































主演はチョ・インソンさんとチョン・ウソンさん、そしてペ・ソンウさん。

リュ・ジュンヨルさんも重要な役で出演しています。

監督は『観相師』のハン・ジェリムさん。


あらすじを簡単に説明しますと、全羅道の片田舎で喧嘩ばかりして過ごしていた不良のパク・テス(チョ・インソン扮)が、無法者の父親が検事にやりこめられているのを見て「これが本当の力か」と目覚め、猛勉強ののちに検事になるところから始まります。
検事になって、世界を手に入れたかのように思えたのも束の間。
本当の勝者は99%のサラリーマン検事ではなく、権力のそばで富と地位を欲しいままにしているスター検察官、ハン・ガンシク(チョン・ウソン扮)を筆頭にした上位1%の検事たちであるとおぼろに認識し始めた頃、「検事の職務倫理とプライド」と引き換えにそちらの世界に入る機会を大学の先輩でハン・ガンシクの部下ヤン・ドンチョル(ペ・ソンウ扮)にもたらされ、テスは自らその憧れの世界の住人になることを選びます。
うって変わったきらびやかな検察生活を可能にしているのは、権力の側にいるためなら何の労もいとわない醜悪な欲望。
それらを非常にコミカルに描いてみせたところに、この映画の妙味があります。
真面目なトーンで扱われたら、観客が頭にきすぎて到底耐えられなかったと思われます。(笑)

コミカルなトーンながら、いうべきこと、伝えるべきことは全部伝えているあたりも、素晴らしい手腕。
映画が気に入って本作に関する監督のインタビューをいくつか見ましたが、「反骨精神」などという単語がおよそ似つかわしくないとぼけたカラーでありつつ、表現者としておもねらず自分の思うことを描ききるハン・ジェリム監督の素朴な人柄に、とても好感を覚えました。


実はリアルな社会においても、現在「検察」は韓国憲政史上初めてとも言うべき絶大な愛と支持を国民から受けています。
とはいえその対象は普通の「検察」ではなく、大統領の不正腐敗を捜査するために期限付きで設けられた「特別検察」に限ってのこと。
韓国の検察上層部は前大統領の時もそうでしたが本当に腐っていて、権力中枢に対する捜査をほとんどまともに展開したことがありません。
職務を全うしようとした検察官が閑職に飛ばされたり罷免されたり、はたまた犯罪者に仕立て上げられたりするさまを、これまで人々は散々目撃してきました。
市民にとって検察は、「最も信じられない公的組織」の一つだったのですが、今回大統領の不正腐敗を捜査するために野党の任命によって組まれた「特別検察」が人々が、ドラマや映画などフィクションの中でしか目にしたことがない「法に基づいて聖域なく黙々と捜査する検察官」たちだったため、驚嘆と応援が殺到。
今の韓国で正義を具現できるのは特別検察以外にないと人々が固く信じるほど、献身的で目覚ましい活躍を見せてくれました。

ただその特別検察も、国務総理が捜査期間延長を認めなかったために本日付で捜査が終了。
何の因果かこの国務総理がまた、検察出身だったりします。
人々は、あの真っ黒な検察に捜査が戻されることに非常な不安と憤りを感じているのですが、こうしたことも含め、今かつてないほど「検察」が注目を浴びているんです。

圧倒的に黒い現検察首脳部および検察出身の大統領秘書室長たちと、市民の絶大な声援を背に孤軍奮闘する特別検察という構図が繰り広げられる中、まさにピッタリのタイミングでこの映画が公開されたのですが、映画が描いている「上位1%」の検察官たちの姿がどうにも今回の大統領の汚職に絡んだ検察出身の「あの人」「この人」に嫌でもオーバーラップする状況なので、「この映画、いつつくったんだろう?」とあまりの現実感に映画を見ながら舌を巻きました。どうやらこの映画は昨年2月にクランクインし、7月にクランクアップしたとのことですので、監督の先見の明は神がかりと言えそうです。(笑)


ということで、予告をご覧頂きましょう。

こちらの動画は公式のものではないかもしれません。リンク切れの際はご了承ください。






韓国の 王は 誰なのか

きたぞ、きたきた

『観相師』ハン・ジェリム監督

次期検察長官候補、ハン・ガンシク
彼の派閥に入ることが権力中枢への道だ

政治家ってものはな
必ずやられたことには復讐しなきゃならない
これぞ非常に複雑な政治工学の哲学というわけだ

これが世に出たら韓国は大騒ぎになるぞ

韓国で俺らより強い奴がいたら出てこいよ

今日は思いっきりハメ外そうぜ

2017年1月

とんでもないことも多いし
ありえないことも起こる

容赦なく爆発し

暴力団絡みの手抜き捜査やマスメディアとの癒着
韓国史上、ここまでのゴミがいました?

爽快にひっくり返る

お前、一度王になってみろ

チョ・インソン
チョン・ウソン
ペ・ソンウ
リュ・ジュンヨル
キム・ウィソン
そしてキム・アジュン


俺はすべてを賭けた

2017 超大型プロジェクト
ザ・キング

1月、王たちの実体が明らかとなる





お分かりいただけるでしょうか、このクレイジーな雰囲気。(笑)

『観相師』もそうだったのですが、この監督は観客にいかにも爽快なカタルシスを与えず、最後はどこかリアリズムに押し留めるところがあるようです。
監督にあともう少しスケベ心があれば観客動員700万は突破したのではないかと思われるのですが、目下のところ530万で足踏み状態に入っています。
主演俳優たちがソン・ガンホさんやイ・ビョンホンさんのようなとりわけ高いチケットパワーを持っている方々でもないので、そこからすれば順当な動員数かもしれませんが、私としてはせめて600万は超えて欲しいなという感じです。

出ている俳優の面々が本当に贅沢で、このあたりにも監督への信頼、この作品への俳優たちの賛同が読み取れるんですよね。

個人的にはチョン・ウソンさんがこんなに多様な表情を見せる映画に出てくれたのが嬉しかったです。前作の『阿修羅』(邦題仮)が私としては内容的にも描写的にもかなり駄目だったので。(笑)

この映画で一つだけ難を挙げるとすれば、リュ・ジュンヨルさんがどうしてもチョ・インソンさんの同級生に見えないことと、ヤクザに見えないことでしょうか。いえ、演技は良かったんですが。(笑)

映画が始まってすぐは、この映画、あまりに内容がドメスティックすぎて韓国以外で共感を得るのは難しいのではないかと思ったのですが、見進めるうちにこれは非常に日本にもある構図だと感じました。
ネタバレになるので言及は控えますが、「これって日本でも度々あるよな」という検察の手口に関するエピソードが出てきます。

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いずれ日本にも入ってくると思われますので、みなさまも機会があればご覧になられてみてください。


私はとても楽しんで見れました。


韓国現代史の大きな流れを抑えることもできる映画になっています。