みなさま、こんにちは。

6月もいつの間にか終わりが近づき、どんどん夏が近づいていますね。
梅雨時のジメジメも嫌なものですが、それより嫌なのはあの強烈な暑さ。
本格的な梅雨明けがくる前に、夏を涼しく過ごせるグッズをそろえている今日この頃です。

さて、今日も『ワンライン』に続きイム・シワンさん主演映画をご紹介しようと思います。
韓国で5月17日に公開され、現在も上映中の『不汗党:悪いやつらの世界』(邦題仮)です。


***ご紹介する予告編自体にネタバレが含まれています。ご留意ください***


この映画、カンヌ国際映画祭にも公式招待されました。
コンペ部門ではない「ミッドナイト・スクリーニング」で現地時刻5月24日夜に上映され、7分間のスタンディングオベーションを受けたとの記事を目にされた方もいらっしゃるかと思います。

聞くところによれば、カンヌでのスタンディング・オベーションは「礼儀」でもあるそうなので、「拍手が長かったこと」イコール「作品の評価」と単純に受け止めるのは的外れかもしれません。

が。

私はこの映画、とっても良かったです。
とっっっても。(笑)


まずはポスターから。

こちらの画像もクリック数度で拡大仕様にしています。






























ポスターから伝わる内容は、まごうことなきノワールですよね。

この映画、内容的にも韓国ノワール映画の代名詞的作品となった『新しき世界』とかぶっていると言われており、監督もそうした評価があることを認めています。

あくまで私の感想ですが、ノワール映画って女性が好んでみるような類のものではない気がします。
大体マッチョな男性たちが血生臭くて汗臭さ全開な感じで暴力の限りを尽くし、大抵そこで描かれる女性達はひどい目にあうか、裸を見せるだけのお飾りか、存在感の薄いアリバイ的出演にすぎず。
少なくとも私にとっては、「気持ち悪さをもよおす男の欲望集大成」に過ぎない、そうした不快感に目を瞑って余りある深みでもない限りは、好き好んで見る気が起きないジャンルです。
そんな中で『新しき世界』は私の中で傑作ですが。


そんなジャンルにイム・シワンさんを持ってくること自体が、無茶。

全然合ってない。

きっと多分痛々しい。

そこまでして焦ってイメチェン図らなくてもいいのに。

でもイム・シワンだから、見るには見てあげちゃう。

そんなところを狙ってつくったんじゃないかと勝手に思ってました。
本当にごめんなさい。(笑)


この映画のあらすじをざっくり紹介すると、こんな感じ。

犯罪組織に属するハン・ジェホ(ソル・ギョング扮)が服役中に刑務所で出会った、世の中に怖いものなどない血気盛んなチョ・ヒョンス(イム・シワン扮)。ジェホはヒョンスに興味を抱き、ヒョンスもジェホに親しみを覚える中、いくつかの出来事を経て互いに心を開くようになる。二人は出所後ヒョンスがジェホの組織に合流することで、より強い義理で結ばれるかに思えたものの、二人の間に横たわる秘密が信頼関係を揺さぶり始め・・・・・・。

ジェホとヒョンスの他に、ジェホと長い付き合いで同じ犯罪組織にいるコ・ビョンガプ(キム・ヒウォン扮)と、ヒョンスの上司で仕事の鬼であるチョン・インスク(チョン・ヘジン扮)が物語の中で重要な役割を果たしており、ノワール映画には欠かせないイ・ギョンヨンさんがビョンガプの叔父で犯罪組織のボス、コ・ビョンチョルを演じています。


以下いくつかスチール写真を貼っておきましょう。
































































タイトルに使われている「不汗党」ですが、いつから使われている言葉なのか定かではないものの、伝承が意味する内容は「凶暴な性格で略奪等悪事の限りを尽くす集団」を指しており、「汗を流さない連中」=「不汗党」と呼ばれるようになったようです。
この「汗を流さない」にもいくつか解釈があるようで、「自分たちは汗水たらさず人のものを奪う輩」という意味が広く知られているほか、「略奪行為をとがめられ拷問にかけられても汗ひとつかかずに平然としている」という説話が残る地域もあるそうです。


ということで、日本にも間違いなく入ってくるであろうこの映画。

予告編をふたつご紹介しておきます。
動画はyou tubuのCJ ENTERTAINMENTオフィシャルアカウントより。






生きている間に起こる色んなことは
大抵 後ろから殴られて始まるもんさ
絶対に正面切ってはこない

この話の教訓は
人を信じるな。状況を信じろ
状況を

ベイビー、きたぜ

2017年5月

信じるやつに 気をつけろ

信じた瞬間 裏切りが始まる!


まだ俺を疑ってるんですか?

不汗党
悪いやつらの世界
2017.05






そしてこちらがメインの予告編。

ただし、こちらの予告にはわりと重要なネタが含まれていますので、あまり内容を知りたくない方はここで閉じてくださいませ。


***予告編自体に重要なネタバレが含まれています。ご留意ください***






兄貴。こういう暮らしが嫌になりません?

第70回カンヌ映画祭公式招聘作

こいつが今回のプロジェクトの主役じゃないですか

俺の世界を支配する

ハン・ジェホは2、3年したら出てきます
その頃にはもっと大きくして引っ張れます
潜入チームを使います

もっと悪いやつが来る!

革新的なイカレ野郎だ

檻の中のキリストなんだって

俺たちに今日も明日もあるか

本能的な不汗党 ジェホ

脅迫してるんですか?

こんなに重大な任務に 僕みたいな新人のひよっこを使うわけはなぜですか?

血気盛んな不汗党 ヒョンス

ハン・ジェホはそんなに生っちょろくないはずだけど

調べたか?

チョ・ヒョンスあの野郎

面白いことしてくれるわね

ここから出たら
本当に俺と一緒に一度働いてみるか?

2017年5月

お願いです
言われたこと全部やったじゃないですか

ここであんたの記録を削除すれば あんたはただの前科者だよ

義理が深まるにつれ

なんで俺をこんな目に遭わせるんだよ!

疑いも色濃くなる!

俺が誰かを信じられると思うか?

信じるやつに気をつけろ!

人を信じるな。状況を信じろ
状況を

ソル・ギョング

イム・シワン


まだ俺を疑ってるんですか?

不汗党
悪いやつらの世界
絶賛上映中





カンヌ映画祭にも招かれ、好評を博したこの映画。

海外での売れ行きも好評で、5月末時点で128カ国に販売されています。

ソル・ギョングさんを除いては、イム・シワンさん、キム・ヒウォンさん、チョン・ヘジンさんすべてカンヌは初体験。
この光栄な場に、監督の姿はありませんでした。

この映画の監督であるピョン・ヒョンソン/변형선さん。
実は映画公開前にSNSで舌禍事件を起こし、反省の意味でご本人はせっかくのカンヌの舞台を辞退していたんです。
韓国内での舞台挨拶にも一切登場しない徹底ぶり。
それでも監督への非難はやまず、観客動員数は6月28日現在で93万人弱と、まだ100万人に届いていません。
このぶんだと100万人に届かずに終わってしまうかもしれません。

私自身は監督が物議をかもした数々の発言自体を知らずに映画を見たのですが、結果としてはこれが正しかったと思います。もしリアルタイムに目にしてしまっていたら、やはり影響を受けたかもしれません。
というのも、この映画の広報時期がちょうど大統領選挙と重なっていたため、監督は広報が十分出来ないという焦りから不用意な発言を連発してしまったんですよね。
まさに「SNSは人生の無駄」を絵に描いたような愚を行ってしまったわけです。

恐らく本来そういう性格なのであろう監督の奔放な物言いが誤解を招いたり、不快感を呼び起こしたりと、軽率のそしりは免れませんが、かといってこの映画まで罵倒の対象になったり、ボイコットされるのは違うだろうというのが、映画を観た私の感想です。

実際、口先ではいい感じに深いメッセージが含まれているやに映画を広報し、観客に足を運ばせておきながら、いざ見てみたら映画の根底に流れている監督の思想がひどすぎて毒づきたくなる映画もあるので、それに比べればこの若干露悪的なふるまいが自然体らしい監督はその逆で、映画からかいまみれる思想は繊細で品すら感じられ、なにより人への愛があります。
・・・・・・と書いたら褒めすぎでしょうか。(笑)
人柄まではよく存じ上げませんが、才能が感じられる監督なので、次も是非作品を見てみたいです。
その前に、この映画の興行成績がもう少し上がらないと次回作が厳しそうではありますが。



ちなみにこの映画。

告白しますと、私ははじめてソル・ギョングさんをカッコイイと思いました。(笑)

『ペパーミントキャンディ』をはじめ、90年代末から40作品ほどに出演されているソル・ギョングさん。
そのうちの代表的ないくつかを私も見てきましたが、正直、ソル・ギョングさんの演技を特にいいと思ったことがなかったんです。
『私の独裁者』にいたっては、「もしかして、演技・・・・・・下手?!」と思うほど。(ああ、本当にごめんなさい!)

そのソル・ギョングさんをこんなに魅力的に見せる監督、本当にすごいです!
ソル・ギョングさんがセクシー。スタイリッシュ。フツーに素敵!(笑)

かたやイム・シワンさんは、もう完全に役者です。
彼は演技の出来るアイドルではなく、この映画で完全に俳優になりました。
素晴らしい。本当に素晴らしい。
ファンのみなさま、是非安心して観にいかれてください。



さて。というわけで。


ここから先は、映画の核心に触れます。

なので、予備情報を入れたくない方は、恐縮ながらここで閉じてくださると幸いです。

私としては、これを書かずには終われないのですが、かくいう私自身は作品を見る前に必要以上に情報が欲しくないタイプなので、自分もそうだと思われる方は以下はお読みにならずに映画をご覧いただければと思います。
そして、ご覧になられた後にでも、またこの先をお読みくださいませ。(笑)


ということで。


閉じてくださいね。


閉じてくださったということにします。


閉じてくださったということにして書き進みますよ。



実は私、この映画を2度観ました。

初めに見た時の感想は、「やっぱり『新しき世界』の壁は高いな」でした。

つまり、評価が低かったんです。
自分がこの映画のコードをまったくもって読みとれていなかったことにも気づかぬまま、非常に不遜な感想を抱いていました。(笑)


ところがですね。
映画を観終えたあとに監督のインタビューを読んで「!!!」となり。
急いで翌日また観ました。

そうしたら、もう。
ぜんっぜん違う映画。(笑)


この映画は、ノワール物に見えるのですが、実はそれはただの背景設定に過ぎず。

この映画は、まごうことなきロマンス映画でした。

ええ、ブロマンスではなく。

ロマンス。

この映画は、恋愛のコードで観ないと正しくメッセージを受け取れないものだったんです。


ノワール映画とブロマンスは、一緒に描いてもさほど無理のない、どちらかというと馴染む構図ですよね。
ですがこの映画は、男同士の義理人情、兄弟愛、ブラザーフッド、そういうことではない、「恋愛感情」を当てはめて読み取ってはじめて成り立つシーンの数々で構成されていたんです。
監督が「ブロマンスではなくメロ(ドラマ)だ。ロミオとジュリエットも参考にした」とインタビューで答えているのを見た時のショックったら。(笑)

「そうだったのかー!」とまた観にいき、観終えた時には心奪われていました。
もう、足元ふわふわ。(笑)


そしてもっと言うとですね。言ってしまうとですね。

この映画は、ボーイズラブです。

BLものです。(笑)


実は映画の予告にもさりげなく、でもしっかり触れられているんですが、この映画の中でソル・ギョングさん演じるジェホは、初めてヒョンスに声をかけた時から‘자기야/チャギヤ’と呼びかけているんですよね。
一貫して、‘자기/チャギ’と。
‘자기/チャギ’は基本的に「ベイビー」や「ハニー」、「ダーリン」などと字幕で訳される、主に「恋人」に使う単語で、たまに女性で男女問わず‘자기/チャギ’と呼びかける人もいますが、基本的に男性が男性に対し、特別な感情なしに使える単語ではないんです。

他にも「恋」を対象にした時にしか使われない台詞回しが出てきたりして、監督は思いっきりジェホの感情は恋愛だとアピールしていたのに、私の頭の固さったら。
「恋愛感情」が描かれているとは微塵も想像していないので、「ん?」と思ったことも無理やりブロマンス解釈で納得するという連続でした。ああほんとに、お恥ずかしい限りです。(笑)
でも、これを恋愛感情だと分からずに観てしまうと、最後のシーンの本当の含意が読み取れないんですよね。


また、この監督の秀逸な点は、冒頭から最後まで、一つ一つのシーンの意味、台詞の意味を、全部ちゃんと繋げてくるところなんです。
ジェホと同じ組織のキム・ヒウォンさん演じるビョンガプも、新入りヒョンスに見せる敵意を権力争い、No.2争いだと思ってみていると、相当に見当違いな解釈になります。その見当違いが、誰あろう1度目の私です。(笑)
他にも、ノワール映画とはまったく一線を画す繊細なシーン、設定が配置されており、こうした一つ一つの細かい仕掛けの意味を正確に読み取れた人だけが、この映画の人間関係、その深さが図れるっていう。そしてそれが分かると、とてつもなく悲しいんです。

そしてなによりこの映画、ノワール映画なのに絵が美しい。
斬新。漫画チックとも言えます。
そして「同性愛」を端的に描いた場面がひとつもないのに、セクシャルなメッセージにもほどがあるシーン。
そのそこはかとなさ、奥ゆかしさに、私は完全にやられました。(笑)

みなさまがご覧になるときは日本語に翻訳されていると思うのですが、この映画を観ていてもうひとつ気づくのは、ノワール物にもかかわらず汚い台詞、罵詈雑言の類が非常に少ないというところです。
勿論血しぶきの舞う本格的なバイオレンス・アクションの数々もたっぷり出てくるのですが、「口汚さ」はほぼビョンガプが一人で担当しており、主役二人の言葉遣いはこの手の映画では稀に見るきれいさ。口汚さの度合いが違います。

冒頭でも書いたとおり、こうしたジャンルに好青年の代名詞イム・シワンさんを起用するのは、興行的な計算か、あるいは本人がイメージチェンジしたくて背伸びして選んだのかと勝手に思い込んでいたのですが、この映画はイム・シワンさんでなければならなかったのだと2度観てようやく合点がいきました。

ジェホが心奪われるのは、こうした美しい青年である必要がどうしたってあったんです、シナリオ上。(笑)
しかもただ美しいだけじゃない、腹の据わり方。偽りきれない元来の性格の良さ。天真爛漫さ。それらをすべて本当に備えている、少なくともそう説得力を持って演じられるのが、イム・シワンさんだったんですよね。


BLといわれると拒否感があるけど、むかし萩尾望都さんの漫画が大好きだったとか。
そういう方はハマると思います。
いえ、特に根拠はなくて私がそう感じるだけですが。(笑)
でもこの映画の2度目を見終えたら、萩尾望都さんの漫画が大好きだった、美術に秀でたむかしの友人のことがしきりに思い出されたんですよね。あの女子受けする感じって、まさにボーイズラブの走りだったな、と。
『モーリス』をはじめとした映画に付き合わされたこともついでに思い出しましたが、でもあの、異性愛者の視線に合わせたファンタジーだったとしても、美しく抑制的に描かれた男性の同性愛。その同じ匂いをこの映画から感じ取りました。
・・・・・・ええ、ノワール物にそこまで重ねるのが、正しい見方なのかは自信がありませんが。(笑)

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言葉(台詞)でも場面でも、二人の感情の核心部分を具体的に描き過ぎないことによって、結果的に余韻を深める作用をもたらしてくれたこの映画。

是非お勧めします。

いやはや久しぶりにやられました。

実は露骨に典型的な「ファム・ファタール」だったのに、ヒョンス。

みなさまにも、この「やられた!」感を味わって頂ければ幸いです。(笑)