みなさま、こんにちは。

ソウルは早くも道に落ちた銀杏を見かけるようになりました。
強い日差しと乾いた風が、初秋らしい心地よさを感じさせてくれます。

さて、今日は韓国で8月17日から公開され、現在23万人の観客を集めているドキュメンタリー映画『共犯者たち』(邦題仮)をご紹介しようと思います。
この映画は2008年の李明博大統領就任以降、のべ10年にわたり続いてきた保守政権による言論封殺の過程を記録したもので、9月4日から同時ストライキに入ったKBSとMBCの背景を説明するものとなっています。



映画の内容に入る前に、まずは韓国のテレビ局がどのような運営体制下にあるのかを簡単にご説明しておきましょう。

日本の「公共放送」にあたる韓国の「公営放送」には、KBS(KBS1・KBS2)、EBS、MBCがあります。
韓国のテレビ局は1.所有および主体は誰か、2.運営の財源は何か、3.どのような目的で運営されているか、以上3点から公営か民営かを区分します。MBCは1の所有および主体が「放送文化振興会」という公的機関(非営利公益法人)、2の主な財源は広告、3の放送の目的には「利用者の満足」を掲げています。

KBSの場合は複合的で、KBS1には広告がなく、視聴料を電気代に含む形で徴収し財源とする一方、KBS2は広告料をもらっています。EBSはKBSが徴収した視聴料2500ウォンのうちおよそ3%を配当され、他に放送通信発展基金、特別交付金が公的資金として入りますが、現況ではそれらは全体運営費の約3割で、残りは自主財源で賄われています。

MBCの場合、視聴料は徴収しませんが大株主が公的機関であるため(現況株式の7割を所有)、法的に「公営放送」に分類されます。MBCはもともと民営放送でしたが、88年の「放送文化振興会」の設立とともに公営放送に準ずるようになりました。
地上波のSBSおよびケーブルTV、衛星放送は民営放送です。

MBCの社長は「放送文化振興会」の理事会で任命されるのですが、理事会は「放送通信委員会」によって9名の理事と1名の監事が選ばれる仕組みで、その「放送通信委員会」の委員長は大統領が任命します。「放送通信委員会」はEBSに対してはよりダイレクトに社長任命権を持っています。MBC、EBSともに理事も「放送通信委員会」が任命します。

KBSの理事は、理事長も理事も「放送通信委員会」が推薦し大統領が決めるシステムで、KBSの社長はその理事会が推薦した者を国会の人事聴聞会にかけたのち、大統領が任命します。

映画は李明博政権からの圧力でKBS社長が不当に解任され、それが政権による言論弾圧・公営放送掌握の始発点となったことをつぶさに追っています。


ということで、まずは映画『共犯者たち 공범자들』のポスターから。
出典はNaver映画より。





放送の没落、10年の戦争

どこから過ちが始まったのか
ニュースでお伝えしましょう!

私たちの目と耳を欺いてきた
共犯者たち

8月17日公開








間違ったニュースをお伝えします

相変わらず私たちを騙している
共犯者たち

8月17日公開






ポスターの文言から推測できるとおり、この映画は積極的に政権による言論封殺に加担してきたKBSやMBC内部の「共犯者」をあぶりだす内容となっています。


監督は、元MBCの敏腕プロデューサー、チェ・スンホ(최승호)さん。








チェ・スンホさんはかつては誰もが認めるMBCの看板番組だった調査報道番組『PD手帳/PD수첩』の責任プロデューサーを務めていた方で、2012年、1986年入社以来26年間務めたMBCを不当解雇されました。

MBCを不当解雇された後は視聴者からの後援によって運営費を賄う「ニュース打破/ニュースタパ/뉴스타파」を立ち上げ、言論統治の渦の中で職場を追われたKBS、YTN、他の地上波テレビ及びラジオ局の実力に折り紙付きのPDや記者とともに質の高い独自ニュースの製作・提供を続けています。
この『共犯者たち』も「ニュース打破」によって製作されました。



映画の紹介文を見てみましょう。


あらすじ

「最近のニュース、信じられなくて。なぜだか分かります?」
2008年、米国産牛肉輸入問題に関する報道で李明博政府が大打撃を被った後、本格的な言論掌握が始まった。最初のターゲットとされたKBSが権力によって次第に壊れ始め、2010年に「4大河川事業」の実体を告発したMBCも占領される。しまいには「放送検閲」という最悪の状況に陥り、もはやこれ以上公営放送と呼べない権力の広報基地に転落したKBSとMBC。彼らは2014年のセウォル号事故の誤報と2016年の崔順実国政介入事件の真実をも隠ぺいしようとする。
チェ・スンホ監督は過去10年の間、放送を破壊した主犯と、彼らの手を取った共犯者たちの実体を明らかにするため、再び動き始め・・・・・・。



制作ノート

 # KBS「8.8事態」、権力に立ち向かったジャーナリストたちの激烈な抵抗

2008年、米国産牛肉輸入問題で世論が冷えると当時の大統領李明博は国民に対し謝罪文を発表した。だが、その一方でマスメディアがこの問題を大袈裟に膨らませたためにこうした危機状況が訪れたと判断し、背後では本格的なマスメディア取り込み工作を始めた。その最初の占領地がKBSだった。

KBSの構成員は李明博政権からの天下りを阻止するために総力を傾けた。だがKBS理事会は、(チョン・ヨンジュKBS社長の)解任を決定する日、警察を投入するという前代未聞の強硬策に打って出、記者やPDらの激しい抵抗に遭い、大きな衝突を引き起こした。この事件がまさに「2008年KBS 8.8事態」である。

映画『共犯者たち』はマスメディアを掌握しようとする権力と、公営放送を守ろうとするジャーナリストとの最初の衝突であった「8.8事態」から始まる。そして、政権がマスコミの社長を一人交代するために、どれほど狡猾な手を用いたかを資料と証言を通して具体的によみがえらせた。


 # 反撃、史上最長期間に及ぶ総ストライキ

KBSが壊れていくプロセスをあぶりだした『共犯者たち』のカメラは、2年後のMBCへと移る。その時はまだ、MBCは相対的に自律的な報道が可能な状況であった。だが李明博が推進した「4大河川事業」の実体を告発するなど、MBCの時事番組が政権にとって目障りな番組を度々送り出すと、李明博は金在哲(キム・ジェチョル)を社長として送り込んできた。金在哲は権力批判の報道を阻止し、放送を検閲した。

MBCの構成員は反撃を試みた。170日にも及ぶ韓国マスコミ史上最長期間のストライキを繰り広げ、李明博のマスコミ掌握に抗し先頭に立って闘った。ストライキに参加したことを理由に金在哲がマイクとカメラを奪った人材は、のべ200名にも及んだ。




こうして書いているだけで、当時のことが思い出されます。
人気バラエティのプロデューサーも、大人気ドラマのスタッフも、お茶の間で愛されていたアナウンサーやアンカー、本当にたくさんの人々が抵抗し続けましたが、その事実さえまともに報じられることなくボロボロに敗れていく姿が、今も鮮明に焼き付いています。

ある者は不当解雇され、ある者は担当番組を奪われ、ある者は閑職に追いやられ。働き盛りの敏腕記者やプロデューサーたちがMBC社屋前広場のスケートリンクの管理人に配置させられていたことを、どれだけの一般人や観光客が知っていたでしょう。
地上波三社(KBS、MBC、SBS)の中でも最も入社競争率が高く、最も視聴者から信頼されていたかつてのMBCの誇り高き姿は、もうどこにも見出せませんでした。

政権の意にそぐわない言動を見せたと判断された芸能人が、実は先んじて番組を降板させられていたのですが、その理由を大衆が知ることは勿論ありませんでした。
このドキュメンタリー映画の中には、2009年にMBCラジオの時事番組を降板させられたコメディアン、キム・ミファさんのインタビューもあります。


映画はチェ・スンホさんらがMBC、KBSの社長や役員、理事長らに直撃し、彼らが指示している偏向報道や不当な人事について、執拗に見解を問いただす模様が収められています。





























逃げ惑い、シラを切り、時に間の抜けた弁明に終始するその姿が、見ていて滑稽でもあるこの映画。こうした卑怯な「小者」によって巨悪は繰り広げられるという普遍的な現実に、失笑と嘆息を禁じえませんでした。
野蛮な「巨悪」は、哲学者ハンナ・アーレントの言葉を引用するまでもなく、常にこうした腰砕けするほどにとるに足らないちっぽけで「凡庸な悪」によって繰り広げられているんですよね。



予告編の紹介に入る前に、大まかに流れを押さえる意味でこちらの年表を先にご紹介します。

まずはKBS。





2008年

8月8日(8.8事態) ●李明博政府によるマスメディア掌握開始
KBSチョン・ヨンジュ社長解任に反対するPD、記者らが私服警察と対立
闘いに参加した職員1名を解雇、7名を停職および減給、16名を不当に異動

8月27日 ●イ・ビョンスン社長就任
KBS報道局内の調査報道チームを解散

11月3日 ●『時事トゥナイト』を廃止
李明博大統領の広報番組を放送開始

2009年

11月24日 ●キム・インギュ社長就任
大統領選挙キャンプでメディア特別補佐官を務めた李明博政府の最側近
政権寄りドキュメンタリーの制作を強行
4大河川事業竣工式の生中継など李明博政府を積極的に広報






2010年

7月 ●全国言論労組KBS本部組合員 29日間ストライキ
不当な人事異動とメディア特別補佐官出身社長の退陣
職員4名に懲戒、5名に不当な人事異動

2012年

3~6月 ●全国言論労組KBS本部組合員 95日間ストライキ
公営放送回復のためキム・インギュ社長の退陣を要求
職員11名を懲戒

11月13日 ●キル・ファニョン社長が奇襲就任

2013年

2月25日 ●朴槿恵大統領就任






2014年

4月 ●セウォル号事故
「全員救助」と誤報

5月初 ●キム・シゴン報道局長の妄言
セウォル号の遺族がKBSに抗議のため訪問

5月9日 ●キル・ファニョン社長による報道介入を暴露
キム・シゴン報道局長「毎日(ニュース9の)キューシートをキル・ファニョン社長に送った」

2016年

7月 ●セウォル号事故の報道統制が波紋
イ・ジョンヒョン青瓦台広報主席「大統領が見ている。‘無能な政府’という批判報道を外せ」







9月 ●「崔順実ゲート」の事件報道が漏れ落ちる
崔順実国政介入事件の代わりに北朝鮮ロケット実験を集中的に報道

2017年

7月 ●KBS記者273名、コ・デヨン社長の退陣を求めストライキを宣言






こちらはMBCの流れをまとめた年表です。




2008年

4月29日 ●「PD手帳」、米国産牛肉編放送

国民による大規模ロウソク集会の火蓋が切られる

5月22日 ●李明博大統領、国民に謝罪

7月2日 ●「PD手帳」虚偽報道嫌疑で検察が捜査に着手
農林水産食品部、「PD手帳」に対し名誉毀損で告訴

2009年

3月25日 ●「PD手帳」イ・チュングンPD緊急逮捕

制作スタッフに対し、警察出頭に応じなかったとして逮捕

4月 ●「ニュースデスク」のシン・ギョンミンアンカー降板
政府政策を批判したクロージングコメントに対し、李明博政府が外部圧力を行使






11月 ●「100分討論」のソン・ソッキアナウンサー降板
李明博大統領とのインタビューを1週間前と目前に控えた時点で、10年以上務めてきたMCから退かされる

2010年

2月 ●オム・ギヨン社長辞任

李明博政府の最側近である文化振興委員会が圧迫を加える

3月 ●キム・ジェチョル社長就任
李明博政府からの最初の天下り社長
在任期間中200名あまりのPD、記者、アナウンサーを解雇または懲戒

3月 ●MBC労組39日間ストライキ
キム・ジェチョル社長関連「ジョイント」発言に端を発し、退陣要求
職員2名を解雇、47名を懲戒






2011年

4月 ●コメディアンのキム・ミファ、ラジオ番組降板

政府の政策を批判した時事番組が終了
MBC労組「キム・ミファの降板は社長が直接要求してきた」

2012年

1~7月 ●MBC労組、テレビ局史上最長の170日間ストライキ

キム・ジェチョル社長の退陣と公営放送の正常化を要求
職員6名を解雇、157名を懲戒

2013年

2月25日 ●朴槿恵大統領就任


2014年

4月16日 ●セウォル号事故「全員救助」と誤報

キム・ジャンギョム報道局長、偏向・歪曲報道を総指揮





2016年

10月 ●「崔順実ゲート」を縮小する偏向報道

キム・ジャンギョム報道局長、国政介入事件の焦点をぼかし特別検察の捜査を阻止
弾劾の局面でも世論を歪曲報道し、政権を守る

2017年

2月 ●キム・ジャンギョム社長就任


6月2日 ●キム・ミンシクPD、「キム・ジャンギョムは退陣せよ」
フェイスブックでライブ中継






上記年表の最後にある、「キム・ジャンギョムは退陣せよ」と社屋で叫びながらフェイスブックでライブ中継を行ったMBCのキム・ミンシクPDは、視聴率31.7%(TNmS調べ)を叩き出し、日本でも放送されたこのドラマのプロデューサーです。







『内助の女王(邦題:僕の妻はスーパーウーマン)』。

ご覧になった方も多いと思います。

こうした人気ドラマやバラエティ、社会的に評価を受ける調査報道番組を作ってきた人たちが、のべ10年もの間辛酸をなめさせられながらも政権の広報ツールに転落した社に対し歯を食いしばって抵抗し続けていたことを知らせてくれるドキュメンタリー映画が、この『共犯者たち』です。


では、予告編をどうぞ。
動画はソウル新聞のyou tube公式チャンネルより。






ー私は今日17代大統領に就任します

どこから過ちが始まったのか、ニュースでお伝えしましょう

「KBSのチョン・ヨンジュ社長が…」

「チョン・ヨンジュKBS社長が・・・・・・」

青瓦台 “公営放送を立て直すための正常な手続き”

「公営放送を正すための・・・・・・」

ーあの日は警察を投入してでもどうにかして終わらせようとするだろうという感じがとてもしていました

こうして権力は公営放送を占領した

ー政府与党を積極的に擁護し広報しろと

「今まで『時事トゥナイト』を愛してくださった視聴者の皆様・・・・・・」

こんにちは~ 大統領です!

ーこれからも国民の皆様の声に耳を傾け、より一層励むことをお約束します

「アイドルグループ並みの人気、秘められていた中国語の実力・・・・・・」

ー朴大統領を持ち上げるため、プロ野球の始球式も利用されました

「全員救助され、現在死亡者はいないものと・・・・・・」

海洋警察“安山 檀園高の学生全員救助”

「学生全員を救助・・・・・・」

だが、私たちは決して沈黙しなかった

ーキム・ジャンギョムは退陣せよ!

ー退陣せよ!

これ以上傷つかないで 
もう泣かないで
笑ってごらん


ーKBSは苛立っています!
ーYTNは泣いています!
ーMBCは投げ出しています!

君が歩むのにとても疲れ つらい時は

(プラカードの文字) 国民のもとに帰ります

放送の没落、まだ終わったわけじゃない

共犯者1.キム・ウリョン
前放送文化振興会理事長


ー‘本家(青瓦台)で脛を蹴られた’という例の発言がかなり問題視されていますが

共犯者2.キム・ジェチョル
前MBC社長


ーMBCの社長ともあろう方が、こんなことでいいんですか

共犯者3.アン・グァンハン
前MBC社長


ーチョン・ユンフェさんが嘘をついたということですか?

共犯者4.キム・ジャンギョム
MBC社長


ー一言お願いします。元記者でしょう?

共犯者5.チャン・グンス
前MBCドラマ本部長


ー私は知りません

主導者 李明博(イ・ミョンバク)
前大統領


ー大統領がマスメディアを破壊したとの批判がありますが、どうお考えですか?

ー何の話をしているのか分からんが?

ーマスコミに質問できなくさせたら、国が滅びます!
ーマスコミに質問できなくさせたら、国が亡びますよ!

韓国マスメディア回復プロジェクト
共犯者たち
8月17日公開





ニュース専門チャンネルのYTNも2008年7月、株主総会で李明博大統領の候補者時代にメディア特別補佐官を務めたク・ボンホンを社員の猛反対を押し切って社長の座に据え、その過程で2008年10月に6名の記者を解雇しました。
以降YTNも報道の公正さを急速に失い、政権広報の道具に転落したのですが、解雇の不当性を裁判で訴え3名は勝訴、残る3名も厳しい戦いを続けていました。

メディアを掌握し続けた側が今回大統領選挙に敗れ、政権交代が実現された後、おりしも新たな社長を選出する時期でもあったYTNの社側は、残りの不当解雇した3名の記者を無条件に職場復帰させることを決定。

8月28日、同僚たちの拍手と歓声の中、YTN新社屋に出社したノ・ジョンミョンさんら3名の姿に、見守ってきた多くの人々も涙しました。





(写真出典:聯合ニュース)







(写真出典:ノーカットニュース)






3名の復帰を自社の放送で映し出すYTNの姿に、「やっとYTNが戻ってきた」と感慨深い思いも。




(写真出典:告発ニュースによるキャプチャ)






(写真出典:告発ニュースによるキャプチャ)





ノ・ジョンミョン YTN復職記者
「随分遅くなりました。待ってくださって、ありがとうございました」


(写真出典:告発ニュースによるキャプチャ)





チョ・スンホ YTN復職記者
「この場で頂いた感動は、復職して仕事で皆様にお見せいたします」


(写真出典:告発ニュースによるキャプチャ)





ヒョン・ドクス YTN復職記者
「同僚と私たちが何をすべきなのか、何ができるのか、一生懸命埋めていきます」


(写真出典:告発ニュースによるキャプチャ)







(写真出典:フォトニュースによるキャプチャ)






そして今、「YTNに続け」とばかりに、人々から報道機関として無視される存在に転落してしまったMBCとKBSの構成員たちが、国民のための放送局へと立ち戻るべく、9月4日から同時に大規模なストライキに突入しています。


9月3日、ストライキへの参加を表明し、アナウンサー室の部長を揶揄する垂れ幕を手に沈黙のパフォーマンスを行うMBCのアナウンサーたち。




(写真出典:Oh my news)






(写真出典:Oh my news)





こちらは8月31日、MBCの社屋ロビーでキム・ジャンギョム社長の退陣を要求するMBCアナウンサーたちを激励しに訪れた、KBSアナウンサー、チェ・ウォンジョンさんら。








こうして幕を上げた両社の大規模ストライキ。

こちらはMBCの9月4日の様子。















ドラマのPDに、バラエティのPDに、記者に、アナウンサーに、スタッフに、現場を放棄したい人などおそらく一人もいないでしょう。
みなさまが楽しみにご覧になっている番組が中断しているとしたら、彼らは今ここで踏ん張っているのです。

KBSの報道を、MBCの報道を信用する視聴者は、この9年の歳月ですっかりいなくなってしまいました。
そのことを誰よりも知っているのがKBSとMBCの社員たちです。
国際NGOの国境なき記者団が4月26日に発表した2017年度版「報道の自由度ランキング」で、韓国は63位でした。最悪だった2009年の69位と大差ない順位です。(1位はノルウェー、ドイツ16位、米国43位、日本72位)

社長を退陣させることができたとしても、彼らが失った財産はあまりに大きく、かつてのようなニュース番組を作れるようになるまでに数年は要するだろうと見通されています。
例えばMBCは、この間本当に多くの社員から現場を奪いました。その数200名以上に上ります。社に反対する社員を解雇や左遷、懲戒に処す一方で、まるで血を入れ替えようとでもするかのように人を雇用もしてきたため、そうして入社した社員との温度差も懸念されます。
KBSの場合、例えて言うならこの8月13日に素晴らしい特集を送り出したNHKスペシャルのような番組を作る部署が、まるごと解散させられてしまった状態にあり。

様々な面で厳しい状況があるのですが、そうした中でMBCとKBSの労組は、今回が最後のチャンスであると覚悟し、公正であるべき言論を破壊した社長や理事に対し退陣を求めています。


最後に9月4日、MBCの社屋でチェ・スンホ監督がストライキに入った同僚たちに向けて送った言葉などをご紹介します。
動画はOh my news TVのyou tube公式アカウントより。





「共犯者たち」に立ち向かった「ストライキする者たち」の叫び
4日午前 ソウル麻浦区MBC社屋ロビー


「全国言論労組MBC本部ソウル支部出征式を行います!」

チョン・ヨンハ 前MBC労組委員長_解雇1981日目
「5年前、露呈した様々な事柄からストライキを行いました。170日もの間です。この闘いは、10年の大事業です。国民のもとに帰るという当たり前のこと、公営放送が当然すべきことを、10年にもわたって行っているのです。
ですが今回は、長引かせたらいけません。それに、これまでも粘り強く、胸張ってきたのに、十分そうしてきたのに、これ以上長引かせることなどありますか?」

チェ・スンホ監督(前MBCプロデューサー)_解雇1903日目
「我々の『共犯者たち』に最後の字幕を入れました。“KBS・MBCの労組が2017年9月4日、公営放送回復のためのストライキに突入した”と。
今後、市民がこの最後の字幕を見ながら立ち上がるでしょうし、その方々が心の中で‘彼らのために私に何ができるか’と考えてくれると思います。
これまでは『共犯者たち』というこの映画は私たちの熾烈な敗北の記録でしたが、この最後の字幕一つによって勝利の記録に変わることでしょう」

キム・ヨングク全国言論労組MBC本部長
「週末に行われたハンナラ党、ではなく、自由韓国党の議員総会決議を見て、呆れ果てました。政治権力と醜く結託し、キム・ジャンギョム一派が私物化しているこの放送を、彼らは‘公営放送’と呼ぶのです。放送制作者たちが熾烈な内部討論を経て、専門性をもって公正について論じ、国民の意志を受けて作る放送を、私たちは‘公営放送’と呼びます。
私たちの上には、常に国民と視聴者がいます。ろうそくデモが私たちが再び戦うための空間を開いてくれました。
MBCを本当に国民の放送へ、そして私たちが夢見たあの公営放送に作り上げましょう」

全国言論労組KBS本部総ストライキ出征式
1日午後 ソウル永登浦区KBS本館前


(ピケット) もう一度KBS、国民の放送へ!

ソン・ジェホ 全国言論労組KBS本部長
「去る国政介入事態の後、ろうそく革命で、国民は私たち言論に関わる者に対し課題を与えました。言論の積弊を清算するという課題を与えました。今われわれKBSの構成員、組合員らは、その歴史的な闘いに立ち上がったのです。
コ・デヨン体制を必ずや清算し、いや、去る9年間の‘放送掌握’に今度こそ終止符を打ち、国民の(ための)放送に戻ります。
もう一度KBSを国民の放送に!」






「MBCがなくてもニュースはJTBCを見ればいい」と多くの人が公営放送にさじを投げてきたここ数年。
そのJTBCの報道部門はMBCを追われたソン・ソッキさんが社長を務めているのを思うと、まさに足掛け10年におよぶ矛盾が見て取れるのですが、「公営放送を見捨てないでほしい! MBCはみなさんの税金、公的資金で賄われている、みなさんの放送なんです!」と切々と訴えるMBCキム・ミンシクPDらの切実さが、MBC問題への冷淡な反応を熱い関心へと少しずつ変えていきました。
YTNが正常な道に戻り始めたことも追い風となり、人々の関心も高まりつつあります。


PR広告



1980年5月、光州(クァンジュ)で何の罪もない人々が軍に虐殺されていた時、どのテレビ局もその事実を報じず、歌やドラマの楽しげな番組に人々の目と耳を縛り付けていました。
足元で起きている虐殺行為を完全に無視するテレビに怒った光州市民が光州MBCの社屋に火を放ったのは、有名な話です。

その後MBCが韓国で最も信頼されるテレビ局になっていったのには、民主化実現後、メディアを監視しはじめた人々の意識の高まりと、光州の時の恥ずべき記憶を忘れまいとする内部の記者たちの使命感があったと聞きます。

先日1200万人の観客動員を達成した、光州事件を描いた映画『タクシー運転手』にも、本当のことを報じないメディア、ことに光州MBCの場面が映し出されます。映画を見ながら多くの人々が現在のMBCの状況を否応なく思い浮かべていたことでしょう。


「マスコミに質問できなくさせたら、国が滅びます!」

チェ・スンホ監督の叫びが、胸に迫ります。



【***10月20日より11月3日まで2週間限定で、you tubeにて映画『共犯者たち』が無料公開されています。動画へのリンクなど詳しくは本ブログのコチラの記事をご参照ください***】