みなさま、こんにちは。

この秋一番の冷え込みになった今日。
冬の到来を思わせる冷たい空気に、どこか遠くに旅立ちたい気分になりました。
もしかしたらこれのせい?

チャッカンナムジャこと『優しい男』19話。本日もまいります。

色づく街路樹の並木道を歩くウンギ。
静かにマルの後を追っています。
見つからないように密かにマルの後を追うウンギの心の声が、モノローグで流れます。

昨日の夜、ふとこんなことを考えた

そうよ

カン・マルと私は、どのみち結ばれない

もし私がまたおかしくなって

“なぜ? しちゃいけない恋愛なんてないわ”なんて

反抗して無理を通そうとしたら

世間の誰かが私を止めてくれるに違いない

だったらそれを信じて

私たちを引き離してくれる人がいるのを信じて


最後に一度だけ彼のもとにいって

最後に彼の手を取って

最後に彼の話を聞いて


最後に私の本当の気持を伝えて

最後に彼と私の傷跡にくちづけをして

最後に私たちが歩んできた道について

私たちに間違いはなかったのか

本当にこれしかなかったのか

他にあるのを知りつつ、気づかぬふりをしたのか

夜を徹して話し合い

夜を徹して結論を下そうとし

それでも結論が出なければ

それでも諦めきれなければ

“私を離さないで

あなたの傍にいたいの

こんなふうに別れることは出来ない”と

カン・マルの襟首をつかんで

駄々をこねて泣いたら、駄目だろうか


私たちを引き離して止めてくれるであろう

世間の人々を信じて

本当はマルのもとに行きたいウンギ。
マルの背を追いながら、マルへと募る想いを止められないウンギです。

パク弁護士から、父がジェヒとアン弁護士との関係を知っていたと聞かされたウンギ。

なぜそれを黙っていたのかと問い詰められたパク弁護士は、マルのもとを訪れていました。

マルと向かい合い、ソ会長が亡くなった日、自分が録音していた音声を聞かせます。

アン弁護士が『助けてくれとおっしゃったではないですか。二度とあのドブには戻りたくないと』とジェヒに話す声。
マルは音声を止め、なぜこれを自分に聞かせるのかと尋ねます。

その問いに対し、パク弁護士は「どうして今頃これを公開するのかを尋ねるのが、先なのでは?」と返します。

「“これさえあればアン・ミニョンとハン・ジェヒを一発で葬れたのに、なぜ今になってこれを? お前は一体何者だ?”と、まず殴りかかるべきでは?」

戸惑うマルにパク弁護士が言葉を続けます。

「だからあなたに持ってきたんです。僕の襟をつかむより先に、なぜこれを今もって来たのかを尋ねる人だと、知ってるから」

おもむろにICレコーダーを手に取り、音声を再生するパク弁護士。
マルが止めた続きの会話が流れてきます。

『警察に行くなら、お前の父親がウンギの母親の事故を指示した証拠書類も一緒に持って行け』

音声を聞きながら、つらそうに視線を落とすパク弁護士。

マルは静かに再生を止めます。

「ウンギの記憶が戻れば、なにもかも話すつもりでした」

静かに語るパク弁護士。

「ところが、ウンギはもう、会長を殺した犯人が誰なのか、探り始めました」

「恐ろしかった。ウンギが僕を恨むのが恐ろしいのではなく、病気の父親に対して彼女がしたことの重荷を背負わせるのが恐ろしいのでもなく、父親を殺した奴の仇を必ず討とうとする、ウンギの目に宿った殺気が恐ろしかったんです。
復讐は、相手だけでなく、自分をも傷つけるものです。
ウンギが傷つく姿を、これ以上見たくありません」

目に涙をためながら語るパク弁護士。
ウンギを思うパク弁護士の気持ちに、静かに耳を傾けるマルです。

マルとの話を終えたパク弁護士は、アン弁護士の元を訪ねていました。
アン弁護士に辞表とUSBを渡すパク弁護士。

あの時消させたはずの録音がまだ残っていたことに、目の色を変えるアン弁護士。
そうくるなら、構わない。
お前の父親がウンギの母親をしに追いやった事実も、一緒に暴け。
そう牙を向くアン弁護士に、パク弁護士が答えます。

「偽善でした。僕はソ・ウンギを手に入れたかった。カン・マルなんて男に、ソ・ウンギを取られたくなかった。
ソ・ウンギが記憶を取り戻せば、僕の元に戻るのは時間の問題だ。いつかは僕の真心を分かってくれるはずだ。
そう思って待っていました。電話の音声ファイルを、永遠に葬り去るつもりで」

苛立つアン弁護士。「それで、どうした?」と口を挟みます。
パク弁護士が言葉を続けます。

「手放すのも、諦めるのも、愛だと。自分が所有するよりもはるかに大きな愛なのだと。そうしてこそやっと自分が幸せになれるのだと。最近になって悟りました」

「カン・マルがそれを教えてくれました」

その言葉に、せせら笑うアン弁護士。

パク弁護士は構わず言葉を続けます。

「自首して下さい。先輩も僕も、もうウンギに対して罪を重ねるのはこれっきりにしましょう。自首しましょう」

一方マルは。

一人になって、もう一度録音を聞いていました。

『助けてくれとおっしゃったではないですか。二度とあのドブには戻りたくないと』

うなだれるマル。
あの日の記憶がよみがえります。
ジェヒが人を誤って殺してしまった日。

自首を勧めるマルに、ジェヒは激しく抵抗したのでした。
そんなことをしたら、記者としてのハン・ジェヒは終わりだ。
必死の思いで這い上がってきたのに、あのドブに戻るくらいなら、死ねと言われたほうがマシだ。
そう言って泣いたジェヒ。
そして、濡れ衣を自ら着てあげてしまったマル。

一方ジェヒは、会長室で頭を抱えていました。
理事会の議題を秘書に読ませるジェヒ。
一連の騒ぎの責任を取ってジェヒが一旦代表の座を退き、代わりに経営の専門家を据えるという勧告が、なされる手はずになっていました。
同時に、カン・マルも解任すると。

そこへ入ってきたマル。
ジェヒにデートしようと誘います。

会社が終わったら、会社の前の公園で6時半に会おうとマル。

ウンギはコーヒーショップに一人佇んでいました。
暗い顔で外を見つめるウンギ。
店を出ようとしたところ、どこかに向かうマルを見かけ、後を追います。

マルが向かった先にいたのは、ジェヒでした。

ジェヒの手を取るマル。

相変わらず手が氷のようだと呟きます。

「みんなが羨む財閥の会長になっても、これはどうにもならないみたいですね。かつて僕を一番苛立たせたのが、この冷たい手だった」

マルはジェヒの手を息で暖めはじめます。

マルの行動に、戸惑いを隠せないジェヒ。

息を吹きかけながら、マルが泣いているのに気づきます。
驚いて、マルの顔を覗き込むジェヒ。

ぽつりぽつりと語り始めるマル。

「こんなこと、考えてた。
あの日。姉さんが人を殺して、僕がモーテルに駆けつけた時。
もしあの時、僕が姉さんを自首させていたら。自分の罪をちゃんと償わせていたら。どうなってたかなって」

「僕は決して姉さんから去らなかっただろうし。
何年でも姉さんを待っただろうし。
姉さんにプロポーズもしただろう。
もしそうしていたら、姉さんは幸せだったのかな?」

「仕事が忙しくてしょっちゅうとはいかなくても、年に一度くらいはチョコとチェギルも一緒に海外旅行にもいって。
腹を決めて積み立てを解約して、姉さんが欲しがっていたブランドのバッグも買ってあげたり。
姉さんの誕生日には、ステーキを食べに行って。ワインも飲んで。
そうしていたら、姉さんは、幸せだったのかな」

「少なくとも今よりは、幸せだったんじゃないかなって。
そんなことを考えてた。
あの時から、間違えてしまったんだ。あの時から姉さんは、何が正しくて、何が間違っていて、何をしたらいけないのか、どこまでは絶対に落ちてはいけないのか、判断基準もすべて忘れ、ブレーキのない車みたいに走ってた」

「ごめんね、姉さん。
僕が姉さんをこんなふうにした。
あの時はそれが愛だと思ってたけど、僕が驕ってました」

ジェヒの頬を泣きながら両手で包むマル。

「僕がこんなふうに、姉さんをとんでもない怪物にしてしまった」

うつむきながら、マルが言葉を続けます。

「ごめんなさい、姉さん。僕がいけなかった。
僕が姉さんをこんなふうにしたんです」

ジェヒの手を再び取るマル。

「姉さんのもとに行きます。愛は約束できないけど、一生傍にいてあげることはできる。僕に愛さえ望まなければ、行ってあげられる。姉さんがどこに行こうと待ってあげるし、理解してあげるし、我慢して耐えてあげる。手もつないであげるし、抱きしめてあげる。
その下らない荷物、その重いばっかりの荷物は下ろして、受けるべき罰があるなら甘んじて受けて、いつまででも待つから、僕のところにきませんか?」

遠くから、その様子を見つめていたウンギ。

一夜明け。

マルの家に再びジェシクが上がりこんでいました。

頻繁にマルを訪ねてくるジェシクに、なにか企んでいるのではとチェギルは不信を募らせています。

ジェシクが誕生日と知り、牛肉入りわかめスープを作るチョコ。

ところが、こともあろうにジェシクは、だったらケーキも買ってこいと図に乗ります。
チョコとチェギルを追い出すようにケーキを買ってこさせ、風呂場で身だしなみを整えているマルのところに行くジェシク。

ジェヒを追い落とすために俺を引き込んだ時に、逆に俺に刺されるかもと考えなかったかとジェシク。
マルは考えたと答えます。
実は今も、ナイフを隠し持っているとジェシクが言います。
お前を刺せば、ビルを一棟くれると言われた、と。

本当に自分を刺すつもりがあるなら、黙って刺せと応じるマルです。

風呂場の外にはチェギルがいました。

やおら襟首をつかみ、ジェシクを家の外に出すと、いきなり殴りつけるチェギル。

いきなり殴られ、いきり立つジェシク。
チェギルは「殺さなくても、マルは死にます」と言います。

「兄さんがやらなくても、マルは・・・・・・」

ジェシクにひざまずくチェギル。

「兄さんが金と聞けば何でもやる、人間のクズだって分かってます。でも、マルにそんなことしたら、駄目ですよ」

「兄さんに良心ってもんがあるなら、マルにそんなことしたら、マジで駄目ですよ」

涙を流すチェギル。
ジェシクはマルが死の影が迫るほど病気が重いことを初めて知ります。
マルのことでなぜお前が泣くんだと言いながら、去っていくジェシクです。

その頃ウンギは。

部屋で夕べ見たマルとジェヒの姿を思い出していました。

そしてジェヒも。

愛は約束できないけど、愛さえ望まないなら、ずっと傍にいてあげられると泣きながら告げた、夕べのマルを思い出していました。

その時、ウンギに電話がかかってきます。
同じ用件の電話が、ヒョン秘書からマルにも。

電話は、パク弁護士が交通事故に遭い、意識不明の重態に陥っていることを告げるものでした。

マルの脳裏に浮かぶ、昨日のパク弁護士との会話。

パク弁護士は、アン弁護士に自首を促すと言ったのでした。
アン弁護士は、かつては一緒にサッカーをやったり、女の子の話をしたりしながら、平凡な夢を語り合ってきた仲だとパク弁護士。
もし自分が失敗し、何か事件が起きたら、自分に代わって録音を公開して欲しいとパク弁護士はマルに頼んでいました。

パク弁護士が予見したとおり、事件が起きたのです。

病院に急行するマル。

こん睡状態のパク・チュナに、「まだ話があるんでしょ? ねえ、お願いだから目を開けて!」と声をかけるウンギがいました。

ウンギを病室から連れ出すマル。

興奮したウンギは、「誰かが殺そうとしたのよ」といきなり声を荒げます。
マルの制止も聞かず、言葉を続けるウンギ。

「誰の仕業か見当つくわ!」

「昨日の夜、チュナさんと電話したの。この前から父の死について調査していたんだけど、おかしなものを発見したから。父の通話記録を調べたんだけど、父が死亡した時刻にチュナさんが父と1時間通話していた記録が出てきたの」

「どうなってるのって。私に何を隠してるのって、電話で聞いたわ。兄さんもハン・ジェヒやアン・ミニョンの一味なのって。あなたもあの人たちに加担して父を殺したのかと怒鳴ったら、チュナさんが、泣いたの。
何もいわず、弁解もせずに、泣いたのよ。
きっとハン・ジェヒとアン・ミニョンが・・・・・・!」

ボルテージが上がり、声が大きくなるウンギ。
誰かに聞かれるのではと気が気ではないマルが声が大きいと指摘しますが、ウンギはさらに興奮し、大声を上げます。

「ハン・ジェヒとアン・ミニョンに殺されたのよ! 父は、殺された!」

ウンギを制すべく、マルが大声を上げます。

「証拠はあるのか!」

「何の根拠があって、人をむやみやたらに殺人犯に仕立て上げる? もし違ったら? 責任取れるのか? いま君がやっていることにあの人たちが気づいたら、君を放っておくと思う?
君の言うとおり、誰かがパク弁護士をあんな姿にしたのが確かなら、すなわち君も、いつだって犠牲になりえるということだけど、そんなことも思い当たらないの?」

マルが言葉を続けます。

「何も確証がないなら、言い逃れできない確たる証拠を持ってないなら、頼むから静かにしててくれ」

ウンギがマルに聞き返します。

「あなたなら、そうできる? 自分がほかの事にうつつを抜かしているあいだに父親が亡くなって、すべての状況がハン・ジェヒとアン・ミニョンが父を殺したことを物語っているのに、静かに息を殺していられる?」

「チュナさんが証拠よ! チュナさんさえ意識が戻れば、すべてが解決する」

そう言って、病室に戻ろうとするウンギ。
振り返り、「あなたはあなたの道を行って」と告げます。

「ハン・ジェヒを守ればいいわ。死んでも忘れられないハン・ジェヒを。
私は今から、自分のすべてをかけて、ハン・ジェヒをやっつける。
必ず私の手で捕まえる。私に捕まらないように、必死にハン・ジェヒを守ることね」

ジェヒは自宅で、息子ウンソクに意味深なことを問うていました。
ジェヒのスキャンダルのせいで幼稚園でいじめられ、まだ腹を立てているウンソクに語りかけるジェヒ。
世界で一番素敵な、それを持っていれば誰もがひれ伏すようなオモチャをあげたいんだけど、欲しくはないか、と。

欲しくないとウンソク。
オモチャを欲しがるのは子どもだと答えます。
もう自分は子どもじゃないから、オモチャは欲しくないと答えるウンソクに、なにやら決意を固める様子のジェヒです。

大きなダイヤの指輪を外し、細くて華奢な安物の指輪をはめるジェヒ。
こんなに素敵だなんて意外だと呟きます。

話があると、アン弁護士に電話をかけるジェヒです。

ジェヒに渡すためのプレゼントを用意し、ジェヒが来るのを待つアン弁護士。

ところが、先にやってきたのはマルでした。

パク弁護士にあんなに早く手を出すとは思わなかったとマル。
何の話だとアン弁護士はとぼけます。
邪魔するやつは誰でも消すのかとマルは言葉を続けます。

自首する機会を与えたかったと言っていた。
あの人も、もとは平凡な夢を抱く素朴な人だった。
自分で自分の罪を償えるようにしたいと言っていた、と。

その声を、扉の向こうで聞いてしまうジェヒ。

「証拠はあるのか? 俺がパク弁護士を殺そうとした証拠でもあるのか?」

声を荒げるアン弁護士。

マルはないと答えます。

心証しかなかったものの、どうやら反応を見るに、本当にそれっぽいですねとマル。

マルはパク弁護士の音声ファイルを取り出して見せます。

「僕を殺したければ、そうすればいい。でも、この世に完璧な秘密などありえないし、そうすればあなたの人生は、地獄のような不安とともに、ただ人を殺しただけのものになってしまうだろうに、そんなふうに生きて、あとで悔しくなりませんか? そんなふうに生きたくて生まれたわけでもないのに」

いまからすぐジェヒに会いに行くとマル。
ジェヒは自分が説得し、彼女を生涯自分の傍に置くと伝えます。

また、音声ファイルは24時間後に警察に渡す、と。

ジェヒは非常階段で膝を抱えていました。

思い出される公園でのマルの言葉。

あの時から間違いが始まったと泣きながら言ったマルの言葉を。
マルの涙が何を意味しているのか、ようやく気づいたジェヒ。

マルからの電話に出ることができません。

ウンギは病院で、ヒョン秘書からパク弁護士の事故の詳細について聞いていました。
事故のあった通りには監視カメラがなく、目撃者もいないため、捜査が難航していると聞かされるウンギ。警察の見立てでは故意で事故が引き起こされた可能性があるとのことでした。

念のため、パク弁護士が家に帰るまでのルート上に設置された監視カメラを分析したところ、後を付けるチョ秘書が映っているとヒョン秘書。
画像を確認し、自分に送るよう指示するウンギです。

その時、パク弁護士の病室にアン弁護士がやってきたことを知らせる電話が鳴ります。
急いで病室に戻るウンギ。

信頼できる看護人を呼ぶというアン弁護士に、自分が見るとウンギは言います。信頼できる人などいない、と。

ウンギの様子に、何かを感じ取るアン弁護士。

そこへジェヒがやってきました。
パク弁護士が事故にあったと聞いてやってきたというジェヒに、露骨に疑いのまなざしを向けるウンギ。

凶器を隠し持っているかもしれないので、バッグの中を見せて欲しいと言います。
上着も脱いでくれとウンギ。
自分が疑われ、驚愕するジェヒです。

ジェヒはバッグの中身を床にぶちまけ、ジャケットを脱ぎます。
バッグの中身を点検するウンギ。

はらわたの煮えくり返るジェヒは、どうせなら全部脱ごうかと尋ねます。

「下着の中に隠してると、思われたらかなわない」

そう言ってブラウスを脱ごうとするジェヒを、やってきたマルが止めます。

ジェヒにジャケットを羽織らせるマル。

マルを見て、すぐさま立ち去るジェヒ。
ジェヒがぶちまけたバッグの中身を拾うマルの傍を、ウンギが通り過ぎていきます。
バッグをアン弁護士に預けると、ウンギを追うマル。

ウンギは待合室にいました。

「自分のやりたいようにやって、いい気なものだ」とマル。
ウンギはマルに消えてと言いますが、マルはウンギの傍に腰掛けます。

パク弁護士よりも、むしろ危険なのは君だとマル。
もし自分が犯人なら、怒り狂った子馬みたいな君のほうから、先に葬りたいと思うだろうな、と。

じゃあ葬れば?とウンギ。

「私さえ消せば、あんたのハン・ジェヒは完璧に証拠隠滅できるんでしょ?」

「そうすれば、子々孫々巨万の富に囲まれて暮らせるじゃない。そこのハン・ジェヒの味方さん?」

ウンギの嫌味にマルが笑って応じます。

「いいアイデアだね。僕が君を殺すの。それでなくてもハン・ジェヒがいつまでも僕らのことを疑ってる。終わったと言っても信じないんだよな。それやれば、一発で解決だ」

たまらず席を立つウンギの手をつかむマル。
僕の獲物なんだから、これからはずっと射程距離内にいてもらうと言います。
トイレ以外は、いやトイレにも、これからはついていくとマル。
呆れ顔を見せるウンギです。

自宅に戻ったジェヒ。
再びあの日のマルの言葉を思い出しています。

愛は約束できないけど、一生傍にいてあげられる。僕に愛さえ望まなければ、行ってあげられる。姉さんがどこに行こうと待ってあげるし、理解してあげるし、我慢して耐えてあげる。手もつないであげるし、抱きしめてあげる。

そう言ったマルの言葉を。

そこへやってきたアン弁護士。
ジェヒにバッグを渡します。

パク弁護士の件は、本当にあなたがやったのかと睨むジェヒ。

「もうできないことなんてないんですね。そりゃそうだわ。最初が難しいだけ。そのあとからは自分が一体何をしているのか、感覚も麻痺してくる」

アン弁護士は、自分ひとりで警察に行くと答えます。

「ソ会長が亡くなったのは、倒れた直後に病院に連れて行かなかったためです。病院に連れて行こうとするハン・ジェヒ会長を止めたのは私です。ハン・ジェヒ会長は最後まで抵抗したのに、私がそうしたんです。あの録音ファイルに入っている内容も、それです。
一人で行くので、会長は残っていてください」

「そういえば、私が感動して涙を流すとでも?」

アン弁護士に冷たい視線を投げかけるジェヒ。
言葉を続けます。

「一体なにさまだと思って、私に責任を負うの? あなたの脅迫のせいじゃない。私の自由意志で、会長の死を幇助したのよ。私もあの時本心では、会長がいなくなるのを望んでいたから。会長が死ななければ、私とウンソクが死ななきゃならなかったから。
あの時アン弁護士が運よく登場してくれて、私につくはずだった血を、あなたの手につけたのよ、ありがたいことにね」

アン弁護士はジェヒの言葉を遮ろうとしますが、ジェヒは立ち上がり、言葉を続けます。

「笑わせないでよ。自分をなにさまだと思って、何でもかんでも自分が悪いとか言ってるの? なぜあんたたちが謝るのよ? 私が、自分の信念で、意志で、価値観でやったことを、何であんたたちが自分のせいだと謝るの? あんたたちがそんなに立派なの? 何で私の人生を、あんたたちが責任取るのよ? どうしてこんなに人を惨めにするのよ?!」

マルに会ったのかと尋ねるアン弁護士。
ジェヒはそれには答えずに、独り言を呟きます。

「悪党。ずるい奴ら。残酷な人たち。おんなじよ、あんたもカン・マルも」

その頃マルは。
病院に寝泊りするウンギの傍に、片時も離れずについていました。

パク弁護士の意識が戻るのを懸命に待つウンギ。
そんなウンギを切なく見守るマル。

寝入ってしまったウンギにコートをかけ、病室を出て物思いに沈むマルです。

翌朝。

ジェヒに呼ばれ、かつてのマルの家を訪れるマル。
呼び鈴を押すと、ジェヒが出てきます。
ジェヒが家の主と知り、驚きを隠せないマル。

なぜこの家を買ったのかと尋ねるマルに、いつかは自分が戻ってきて住もうと思ったからとジェヒは答えます。
「でももうあなたはいないけど」と寂しそうに微笑むジェヒ。

ジェヒはマルに、資料を渡します。

「亡くなった会長がウンギのために残していた、裏金のリストよ。このあいだの横領疑惑など、足元にも及ばない規模のね。ウンギにテサンを残す過程で行われた数々の脱税資料、他にも女性遍歴や株価の操作、粉飾会計。ソ会長が生きているあいだに行った各種不法行為や脱法行為の証拠資料。ソ・ウンギを2度殺し、ソ・ウンギを確実に葬り去ることの出来る、証拠資料よ」

「これを僕に見せるわけは?」

そう尋ねるマルに、ジェヒが答えます。

「あなたと取り引きしようと思って」

マルがジェヒを見つめます。

「ソ会長が亡くなった日のことを録音したパク弁護士のテープ、私に渡してちょうだい。コピーも原本もすべて。
私は、絶対に自首しない。それが嫌なら、何が何でも私に罪を償わせたいのなら、ハリボテじゃなくて、全部ちょうだい。あなたの愛、心、全部私にちょうだい。もしそうしてくれるなら、きれいに罪を償ってくるわ。どちらにするか、あなたが決めて」

マルがパク弁護士の病室に向かうと、ウンギの代わりにヒョン秘書がついていました。

聞けばウンギは、外の空気を吸いにいったとのこと。

マルはウンギを探して、病院の中を歩き回ります。

ウンギは人気のない場所でうたた寝をしていました。

ウンギの隣りに静かに腰掛け、頭を自分の肩に乗せるマル。

目を覚ましたウンギ、マルと目が合い、ぎょっとしたように体を引きます。

「ウンギ。僕たち、逃げよう」

突然つぶやくマルに、驚くウンギ。

マルはウンギの手を握ります。

「君が行きたい場所なら、どこでも行くよ。世間の人が誰も探せない場所に、僕と逃げよう」

戸惑うウンギにマルが小さな笑みを見せ、ラストショット。



ん~!

これは!?

何にも、懸案が何にも解決していませんが?!
一体どうするつもりなんでしょうか?!
まさか本当にマルを死なせるつもり?!

ああ、不安がよぎる最終回。
泣いても笑っても今夜で終わりです。