みなさま、こんにちは。

サッカーワールドカップ、終わってしまいましたね。
決勝戦、本当にいい試合でした。
寝不足から解放された安堵感と、終わってしまった寂しさとがないまぜになっています。
とはいえ、ワールドカップを楽しみながらも、今回は複雑でした。
開催地の人々の窮状を無視した大型箱物イベントが社会の矛盾をますます拡大させるさまやらをこれほどはっきり見せつけたワールドカップも、なかった気がします。
数々の試合を反芻しつつも、色々考えてしまうひとつきでもありました。

さて、今日は今月から韓国で公開となる“군도~민란의 시대/群盗~民乱の時代”(邦題仮)の予告編など。


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“군도~민란의 시대/群盗~民乱の時代”。
英語のタイトルは“KUNDO~Age of the Rampant”と付けられています。
「群盗」は義賊の群れという意味だそうです。

7月23日に韓国で公開を控えているこの映画。
ハ・ジョンウにカン・ドンウォンという豪華すぎる組み合わせなので、私も見たいと思っておりました。
ちょうど昨日試写会が行われ、映画評論家の評価なども色々出回っているのですが。

面白いみたいです!

YES!

物語りの舞台は、朝鮮王朝末期。
朝鮮王朝第25代王、哲宗(チョルジョン)13年。時まさに貴族・両班(ヤンバン)と官僚など、支配階層による民衆への搾取が頂点を極める頃。世直しに立ち上がった義賊は、各地で支配者と相まみえる時を迎えていました。チリ山を中心拠点に活動する義賊集団の“チュソル”も、牛馬のとさつを生業とする被差別階級出身のトチ(ハ・ジョンウ)など、傑出した人物を合流させることで勢力を拡大していき。
一方、“チュソル”の勢力圏内のひとつである全羅南道のナジュでは、大地主の庶子であり武官出身のチョユン(カン・ドンウォン)が卑劣かつ邪悪な方法で民に搾取の限りを尽くしており、決して共存し得ない相反する二つの勢力の間に争いの火種が日々まかれていました。
かくして人間らしい暮らしのために立ち上がった人々と、既得権益を守ろうとする者たちの戦いが始まり・・・・・・といった内容。

庶子は非嫡出子、婚外子と置き換えれば意味が通りますよね。
カン・ドンウォンさんが今回血も涙もない極悪人を演じていて、役柄としては剣の達人、庶子ということで非常につらい境遇に育ったという設定のようです。

ハ・ジョンウさん演じるトチは、朝鮮時代、身分制度で最下層に置かれていた白丁(ペクチョン)という階級の出身。
義賊になる前のトチは、トルムチという名前でした。

この映画で全面的に出てくる百姓という言葉については、少し説明が必要かもしれませんね。

百姓は韓国語ではペクソン(백성)と呼び、一昔前に「民」や「民衆」、勿論「農民」などを表した(いまも表す)言葉なのですが、日本では農民や農家への侮蔑的ニュアンスが含まれているということで百姓は放送禁止用語に指定されていますよね。
ですのでこのあたり、映画が日本に入ってくるときはどんな訳語になるかなと、ふと思いました。
韓国語の「百姓/ペクソン」には侮蔑のニュアンスはないのですが、そのまま日本語に置き換えると語弊が生じうるという判断から、「民」や、文脈次第で「農民」「農家」などに言い換えるのかなぁ、と想像しておりますが。

それはそうとして、私としてはとにかくカン・ドンウォンさんに大注目です。
4年ぶりの映画。
あの美しい顔で、悪役。
憎める自信が、全然ないです。(笑)

そんなわけで、ひとまずポスターを並べてみましょうか。


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両刀遣い|トチ  ハ・ジョンウ


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百姓の敵|チョ・ユン  カン・ドンウォン


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統括者|テホ  イ・ソンミン


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有司(ユサ)|テンチュ  イ・ギョンヨン


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戦略家|テギ  チョ・ジヌン


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怪力|チョンボ  マ・ドンソク


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弓の名手|マヒャン  ユン・ジヘ


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速攻係|クムサン  キム・ジェヨン


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百姓|チャン氏  キム・ソンギュン


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腹心|ヤン執事  チョン・マンシク

われながら、多い。
これまで紹介してきた映画の登場人物の中では、一番量を貼った気が。(笑)

出演者が豪華ですよね。
殆どのかたが主役クラス。
「速攻(係)」の俳優さんは私ははじめて知りましたが、紅一点の女優さんは、どうも見覚えがあると思いきや。
ソ・ジソブさん主演ドラマの『ファントム』(原題:幽霊유령)で、オム・ギジュンさんの息がかかった大手新聞社記者を演じていたかたですね。

ハ・ジョンウさんのところ、「両刀遣い」と訳を当てましたが漢字だと「双刀」です。なおかつ、イ・ソンミンさん演じるテホは「統括者」と意訳しましたが、もとは“노사장/老師丈/ノサジャン”です。

この映画が描いている義賊は、実際に1800年代末から日本の植民地になるまでの1900年代頭にかけて活動した実在の集団をモチーフとしているのですが、1600年代に書かれたハングルの小説「ホン・ギルドン伝」の世界観を体現するかのごとく活動し、小説内の義賊名を実際に名乗った“ファルビンダン/活貧党”の活動を全体統括していたのが、“老師丈/ノサジャン”なんです。

歴史の話になりますが、実存した“ファルビンダン/活貧党”は、1893~1895年に起きた「東学農民戦争」(日本の教科書では「東学党の乱」という呼び方でしょうか)後、官軍に追われた義兵らが合流して1899年に結成された、当時の義賊集団の中では最も勢力の大きな一群でした。彼らが目指したのは世の平等、貧富の格差の是正、均田法の実施、悪法の撤廃、農業を円滑に行わせるための制度整備、外国人に鉄道敷設権を与えないことなどなど。正義に即し、実に道理にかなった要求を掲げて闘った集団でした。
農民軍、義兵軍と置き換えてもいいかと思いますが、この“ファルビンダン/活貧党”は1904年まで朝鮮半島南部を中心に義賊としての活動を繰り広げていました。

イ・ギョンヨンさん演じるテンチュの役職も、上記では韓国語のまま有司(ユサ)としましたが、この有司(ユサ)も実際に“ファルビンダン/活貧党”の中に存在した役割で、現代風に言うと総務的な役割、でしょうか。義賊をリクルートしてくるといいますか、目星を付けて新人を充当するといった役割だったようで、“老師丈/ノサジャン”の下におかれ、各地に人員配置されてたとのこと。

話のついでに、『ホン・ギルドン伝/洪吉童伝』。
これはハングルではじめて書かれた小説なのですが、作者は高級官吏のホギュン/허균とされています。1500年代に実在し、義賊として活動したとも伝わる「洪吉同/ホン・ギルドン」をモチーフに、時代を15世紀の世宗(セジョン)王時代に置き換えて書いたと伝えられていますが、光海(クァンヘ)君にも重用されたホギュンの生涯は、最後は謀反の疑いで八つ裂きの刑に処せられて終わりました。

というわけで。
色々長々書きましたが。

ようやくまいります、予告編。



群盗
盗賊の群れ。弾圧を受け搾取される百姓の側に立ち、両班(ヤンバン)と貪官汚吏(たんかんおり)を懲らしめ、彼らの不浄な財物を奪いとって百姓に分ける、ホン・ギルドン以降現れた義賊をさす。

哲宗(チョルジョン)13年の1862年、朝鮮の百姓の暮らしは貪官汚吏の極悪非道ぶりと両班の搾取により、疲弊する一方だった

これに憤る全国各地の百姓蜂起が絶える日がなかった

15世紀 忠清道一帯
ホン・ギルドン
“活貧党(ファルビンダン)”のリーダーかつ義賊群盗の元祖

16世紀 黄海 京畿 江原一帯
イム・コッチョン
“白丁(ペクチョン)”出身の義賊であり、組織力を見せた最初の群盗

17世紀 黄海道 九月山(クウォルサン)一帯
チャン・ギルサン
芸人出身の伝説の盗賊であり、群盗理念の源

19世紀 忠清 全羅 慶尚一帯
チリ山 チュソル
“九月山のモクタンソル”とともに群盗を率いた二大山脈

わしが行きます
わしが必ずや奴の首をとってきます

両刀遣い トチ

天下に兄弟の義を新たに立てようぞ
統率者 テホ

彼らに奪われた土地と米を、もう一度百姓に返してやることです
有司(ユサ) テンチュ

旦那。この唐伯虎の書と画はですね・・・
ナジュの牧使、チェ・ヒョンギの罪は・・・

戦略家 テギ

殴られりゃいい
怪力 チョンボ

弓の名手 マヒャン

そいつを捕まえろ
速攻 クムサン

父親に獣以下の扱いを受けた育った人間です
出来ないことなどありましょうか

百姓の敵 チョユン

大一番の時が来たようだ

我らは皆、この空と大地の兄弟、姉妹だ

忌まわしい世界、百姓を救え!

だがいつしか世は、力のあるものが弱きものを苦しめ、持てる者が持たざる者を搾取している

踏まれた草は必ず立ち上がる

我らはこうした世を正さんとするものである

群盗 民乱の時代

2014.7

あんたは我らのこの偉業に加わるか?

昨日午前に行われたメディア向け試写後。

続々と出てきた映画評論家の寸評のうち、そこかしこで目に付いた文字は、「スパゲッティ・ウエスタン」。

「キムチ風スパゲッティ・ウエスタン」とか、「朝鮮のスパゲッティ・ウエスタン」という、なんだか分かったような分からないような寸評が飛び交っておりました。(笑)

「スパゲッティ・ウエスタン」は日本でいうところの「マカロニ・ウエスタン」ですね。ちなみに「マカロニ・ウエスタン」という表現は日本だけみたいですよね。

あと気になるのは、「カン・ドンウォンが美しすぎる」のオンパレードということ。

やれカン・ドンウォン、そしてカン・ドンウォン、カン・ドンウォン。

「ハ・ジョンウを見に行ったのに、焼きついたのはカン・ドンウォンだった」とか、男女問わずそんなんばかりなんです。
こうなると期待を高めるなというほうが無理というもの。
現に私は期待が高まってこれを書いております。(笑)

人々は為政者に本気で頭にきてますので。
まっとうな義賊の物語は、この夏韓国の人々にさぞやカタルシスを与えてくれることでしょう。
加えて悪役までべらぼうに美しかったりした日には。

また1000万いっちゃうでしょうか。夏休みですし。
私も、この夏観てくるつもりです。

予告編、もう一つ載せておきます。
こちらもyou tubeから。



こんにち、百姓を率いるべき者は、ただ彼らから召し上げることばかりに汲々とし、百姓を養う術を知らぬのだから。悲しいではないか。

群盗 民乱の時代

上の者から下々にいたるまで、盗みを働かないやつがいない
やらなきゃアホだ

わしの名は、今日からトチだ
ハ・ジョンウ

由緒正しい両班(ヤンバン)のほうが酷いものなんだよ
お国の仕事をしてる奴らのほうがもっとすごいって、知らないのかい?

カン・ドンウォン

みんなで頭つき合わせて大物を取りにいく時がきたようだ

お前があいつに会う時が来たんだよ

旦那。お元気でしたかい?

どうりで下衆どもの気を強く感じると思った
お前たちがあの賊の群れか

『犯罪との戦争』
ユン・ジョンビン監督のアクション活劇

父親に獣以下の扱いを受けた育った人間です
出来ないことなどありましょうか

この議決の最終目的は、彼らに奪われた土地と米をもう一度百姓に返してやることです

団結すれば百姓、バラバラになればただの盗賊だ

忌まわしい世界、百姓を救え!

群盗 民乱の時代

その醜い頭を体から切り離してやる

誰があの世に行くかは、やってみなきゃ分からんのじゃないか?

7月23日ロードショー

ん~。楽しみですね~。
予告を見た印象どおりなのか、それとも意外な何かが隠されているのか。
この目で確かめなくては、です。

あんなにこぞって評論家が「スパゲッティ・ウエスタン」と称しているのを見るに、なにやらベタな、荒野のガンマンを髣髴させるようなシーンとかあったりするんでしょうか。(笑)

ハ・ジョンウさんに関しては、演技力で文句付ける人はいないので、信じて見に行けばいいですよね。
ほんとにハ・ジョンウさんは、『ベルリン・ファイル』でのアクションも凄かったですから。
そして『ザ・テロライブ』での張り詰めた演技。
今回も恐らく俳優としてまた一つ評価を上げるんでしょう。

カン・ドンウォンさんは美貌過ぎるせいで世の中的にアイドル俳優のような位置づけになっていますが、今回は並み居る演技派先輩俳優の中でどんな輝きを放っているのか。
正直私も、カン・ドンウォンさんの顔だけ見て2時間くらい一瞬で過ごせますが、今回は、演技に。ええ、演技に。注目します。
ちゃんと意識的に見ないと、顔だけ見てうっとりして終わっちゃいそうな自分がいるので、自分に釘刺しました。(笑)

最後におまけ。

なんかこういうのがすぐ出てくるところが韓国らしいんですが。

誰が作ったのか、映画のタイトル『群盗/KUNDO/군도』を駄洒落(?)にしたポスターが出回ってるのでご紹介します。
駄洒落というより、言葉遊び?


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“섹시하
  セクシハグン
악역인데  アギョギンデ
「セクシーだね  悪役なのに」

・・・・・・ヤバイ。

書く前からうすうす気づいてましたが。

面白さが伝わらない。(笑)

語尾を合わせたところまでは分かっていただけても、そもそも「クンド」が「グンド」に濁っちゃってる時点で日本語のかたには別の言葉ですよね。
韓国語はまったく同じ字なのに単語の初めにくれば濁らず、後にくると濁るんです。
ああ、やっちゃった。また一人ウケネタでした。

でも、開き直って続けます。(笑)


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“흥분했
 フンブネックン
백성들  ペクソンドゥル
「興奮したんだね  百姓たちも」

・・・・・・ヤバイ。
またやっちゃった。
今度は濁音じゃないっていう。(笑)

これもまた韓国語の法則で、直前の音が「っ」で詰まっていると、その後の語は濁らないんです。

やればやるほどドツボにはまる気がしてきましたが。

続けます。(笑)


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“매력있
  メリョギックン
이번 캐릭터  イボン ケリット
「魅力的だね  今回のキャラクターも」

そして、最後。


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“갖고싶
カッコシプクン
이번에 イボネ
「恋人にしたい 今回も」

自分で笑えてきました。
私がなぜ無理無理これを貼ったのか、ここまでご覧になってお気づきになった方は、かなりの観察眼をお持ちです。

はい、そうです。
一枚でも多くカン・ドンウォンが貼りたかっただけっていう。(笑)

なんだかんだと結局しまりませんが、多分映画はピリッとしていると思いますので、最後のおまけは見なかったことにしていただいて。(笑)

春公開の映画は『逆鱗』以外はいまひとつ食指が動きませんでしたが、『群盗』を皮切りに、今年はもう一本カン・ドンウォンさんの映画『두근두근 내 인생/ドキドキわが人生』(邦題仮)や、チョ・ジョンソクさんの『나의 사랑 나의 신부/私の愛 私の花嫁』(邦題仮)、ソン・ガンホ&ユ・アイン&ムン・グニョンさんの『사도/思悼(サド)』(邦題仮)も控えているので、夏から年末にかけてまた映画で楽しませてもらえそうです。