みなさま、こんにちは。

今日も2013年の総決算とばかりに、今年見た印象深い映画について書いてみます。
今日取り上げるのは、韓国で『雪国列車/スノーピアサー』と同時に公開された『ザ・テロライブ』。こちらはおそらく日本公開はなさそうなので、思いっきりネタバレします。

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主演は、今乗りに乗っているハ・ジョンウ/하정우さん。

ハ・ジョンウさん、日本での人気のほどは存じませんが、韓国では好きな人多いですよね。
低音の声が男っぽくて、マスクには親しみが感じられ、お喋りにもユーモアが感じられる、そんな俳優さんです。
身近にいそうと思わせといて、実際には絶対身近にいないという立ち位置でしょうか。(笑)

2月に韓国で公開された『ベルリン(邦題:ベルリン・ファイル)』での北朝鮮の特殊要員役での筋骨隆々ぶりと華麗なるアクションシーンも本当にしびれましたが、本作『ザ・テロライブ』はラジオ・スタジオにいるハ・ジョンウさんにほぼカメラを固定したつくり。なのに、迫りくるハンパじゃない緊迫感。
すごいです。

ネタバレします。ごめんなさい。
これから見ようというかた、どうぞこのまま閉じてください。
ほんとにネタバレします、最後まで。
これから韓国国内でDVDが発売になるようなので、おそらく輸入版なら入手可能かと思います。

というわけで。

いやーーーー、この映画は。

とんがってます。

かなり、とんがってます。

そのとんがる気持ちは、分かりますよ!!!

以下、スチール写真とともにざっくり内容を振り返ってみます。

テレビ局の有名アンカーの地位を不祥事によって追われ、今はラジオ番組に左遷されたユン・ヨンファ(ハ・ジョンウ扮)は、富裕層への税制優遇措置に対するリスナーの意見を番組内で聴取する中、とある男性リスナーから電話を受けます。

番組のテーマなどそっちのけで電気代についての不満などを述べるリスナーを軽くあしらい、別の電話に切り替えるユン・ヨンファ。

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ところが、切ったはずの電話は切れておらず、男は別のリスナーとの会話に乱入してきます。慌ててCMに切り替え、スタッフにどうなっているのか正すヨンファですが、スタッフも相手が切らないと電話が切れなくなっていると困惑気味。
電話の相手はまだ何も言いたいことを言っていないとヨンファに怒りをあらわにします。
イライラするヨンファに男は「今から漢江の橋を爆破する」と突拍子もないことを言い出し。

いたずら電話だと考えるヨンファは、語気を荒げ、やるならやってみろと怒り、CMあけの放送を続けますが、その直後、背後から強烈な轟音が響きます。

驚いて窓辺に近づくと、後方の漢江にかかるマポ大橋が火柱を上げていました。

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呆然としながら電話の男に呼びかけると、男はまたかけると電話を切ってしまいます。

さっき名乗った男の名前を思い出し、メモを取りながら警察に電話をかけるヨンファですが、なにを思ったか間違い電話だと嘘をついて切ります。
同じく番組のプロデューサーも当然警察に電話をかけようとしていましたが、それを止めるヨンファ。ヨンファはこの事件を単独スクープにし、生放送で流すことを思いついたのです。

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この事件を利用すれば、再びアンカーの座に返り咲けると考えたヨンファは、自分を裏切ってラジオに追いやった報道局長に電話し、犯人から爆破予告があったことを伝えます。

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トイレに人がいないのを確認し、ラジオのスタジオにテレビカメラを入れること、このスクープを機に自分をかつての座に戻すことなどを局長に約束させるヨンファ。

取り引きしながら無精ひげをそり、スポットライトに当たる瞬間に備えます。

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スタジオに戻って放送を開始し、マポ大橋爆破に関して、犯人を名乗るものから接触があったとリスナーに告げるヨンファ。
案の定、放送が始まるや否や、犯人から電話がかかってきます。
あなたが犯人かと尋ねる問いに、そうだと答える男。
ヨンファは喜びを隠せません。

こうしてラジオのプロデューサーを追い出し、スタジオにテレビカメラを持ち込ませたヨンファ。

上からOKが出たのでしっかり視聴率をとれと檄を飛ばす局長との間で、最終的には生放送中に説得し自首させようというざっくりとした方向を確認し、ネクタイを締め、スタンバイします。

そうこうするうちに、再びかかってきた犯人からの電話。

ヨンファは犯人に、さっき電話で話した時のように、時々罵声なども織り交ぜながら、気取らずに自分の言いたいことを言えばいいと「コンセプト」を伝えますが、いきなり出演料を要求する犯人。
その額は21億ウォンと巨額です。
そんなお金はないし、生放送で自分の意見を言えることが一番ではないかとユン・ヨンファ。犯人は、であれば別の局に出演すると思いがけず脅してきます。

今すぐ払い込みが確認できなければ他の局に電話をかけるという犯人の言葉を裏打ちするように、前面のモニター画面には、別の局のキャスターが犯人から接触があったと伝える姿が映し出されていました。

犯人が告げる口座番号を書き取るも、当然支払われる筈がないと思っているヨンファをよそに、その場で決済してしまう報道局長。

確実に視聴率を叩き出すようヨンファに再度プレッシャーをかけます。

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こうして始まった生放送。

犯人はユン・ヨンファの問いかけに、自らを30年来建設現場に従事し、マポ大橋も造った現場労働者パク・ノギュと名乗ります。

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テロを起こした目的について続ける犯人。

数年前、マポ大橋補修工事の際に、夜間手当て2万5千ウォンをもらうために時間を延長して働いていた同僚の労働者たちが3名川に落ちる事故が発生したものの、ちょうど開かれていた国際会議警備のため大量に警察が動員されており、分厚い警備網による遅れで待てど暮らせど救助が来なかったと犯人。そのために同僚たちは死んでしまったと犯人は怒りを露にします。
死んだ同僚たちにただ一言の詫びも償いもなかったと犯人。

望むことはただひとつ。大統領がそこにきて直接謝罪すること。

予想を上回る要求を受け、それは極めて難しいと思うとのヨンファの言葉に、犯人はさもなくばまた爆破すると脅します。

怒りは分かるが解決方法がよくないとなだめ、ヨンファは法に訴えて賠償金などを勝ち取る方法もあるとしますが、金なら既にユン・ヨンファから21億ウォンもらったと言い出す犯人。だから欲しいのは責任者の謝罪なのだと。

犯人との金銭取り引きを生放送でばらされ、狼狽するヨンファ。

一方、爆破によって交通が寸断され、危険な状態な状態におかれている橋の上には、ヨンファのかつての恋人で報道局記者のイ・ジスがいました。

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放送に入る前、またやり直したいとジスにメールを送っていたヨンファ。
現場にジスがいることは知らなかったヨンファは、個人的な感情を隠して気をつけて取材するようエールを送ります。

ところが局長は、「大統領への謝罪」という要求を聞いた途端、ヨンファを裏切り始めます。大統領に今すぐ電話しろと声を荒げる犯人に、そんな馬鹿げた要求には絶対に応じるなとガラス越しに首を振ります。

大統領に謝罪を要求することは難しいと再三拒絶するヨンファ。

ヨンファに反撃すべく、犯人はヨンファが自分に浴びせた罵声の録音音声を流します。報道番組中に罵声を放送で流すなど、放送事故も同然。局側はヨンファから画面を切りかえ、若く美貌の女性キャスターに番組を引き継がせます。

ユン・ヨンファに代われといらだつ犯人に、それは出来ないと応じるキャスター。大統領に謝罪要求することは出来ないと毅然と対応する女性キャスターですが、他にも爆弾をいくつか持っているとの犯人の不穏な言葉が終わった途端、女性キャスターの頭上で爆発物が破裂します。

女性キャスターの悲鳴が響き渡るテレビ局。

まさかの事態に憤り、席に戻って犯人の電話を取るヨンファ。テレビ局を敵に回しても、なにひとつ得にはならないと詰め寄るヨンファですが、そこでヨンファは恐ろしい言葉を聞きます。

『あの子はちょっとかすっただけだけど、ユン・ヨンファさんはそうはいきませんよ。あなたはもう爆弾を装着してますからね』

イヤホンから鳴り響く甲高い機械音。

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『あなたが画面に映らなくなったら、爆発しますから』

オーーーマイ。

怖すぎです。

狼狽するヨンファに早く放送を始めろと脅す犯人。
少し時間をくれと懇願するヨンファは、実況中継中のジスの後ろで再び爆発が起きるさまをモニターを通じて目の当たりにします。

窮地に追い詰められ、うつろな目で放送を再び開始するヨンファ。

犯人は10分以内に大統領を呼べと強硬です。
仕方なく、テレビを通じて大統領府に呼びかけるヨンファ。
国中がテロの脅威にさらされているので、解決のために迅速に動いて欲しいとヨンファは必死です。

その時、スタジオにやってきた警察のテロ対策班。

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パク・チョンミン(チョン・ヘジン扮)は、いちいち犯人の言葉に応じなくていいこと、テロという言葉は犯人を刺激するので使用を控えること、今逆探知しているのでガラス越しにサインを送りあいながら歩調を合わせるようヨンファに伝え、クールダウンさせます。

大統領府に連絡など入れるつもりのない報道局長に任せておけず、ヨンファは直接大統領秘書室に連絡を入れ。出演を検討すると答える馴染みの秘書室長。
そうこうしている間にも、傾いた橋から車が一台滑り落ち、一人目の犠牲者が出てしまいます。

胸が痛まないかと尋ねられても、残り1分だと犯人は動じません。

その時、大統領代理の者がスタジオに向かっていると聞かされるヨンファ。

期待を込めてやってきた人物を見つめますが、やってきたのは血の気の多い警察庁長チュ・ジンチョルでした。

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大統領の代理できているはずが、お前の調べはついているぞと、いきなり投降を迫る警察庁長。カメラに向かって犯人パク・ノギュの顔写真をさらすなど、犯人を刺激する激しい行動をとり始めます。
テロには屈しないなどと、NGワードを連発する警察庁長に、ヨンファも生きた心地がしません。

ガラスの向こうで制動をかけられても、まったく聞くつもりのない傲慢な警察庁長は、パク・ノギュの息子の写真までテレビを通じてさらそうとします。

かなりいらだった様子で退席させろと迫る犯人ですが、まったくそんなつもりのない警察庁長。

その時、例の薄気味悪い信号音が・・・・・・。

ヨンファは急いで「耳に爆弾」とメモを渡しますが、間に合いませんでした。
ヨンファの隣で吹っ飛んだ、警察庁長の頭・・・・・・。

キョーレツです。

駆け寄ったテロ対策班のパク・チョンミンは、ヨンファの書いたメモを読み、状況を瞬時に把握します。誰がこのイヤホンをつけたのかと聞かれても、まるで答えられないヨンファ。
必ず助けるからと約束し、パク・チョンミンは出て行きます。

いよいよ厳しくなった状況に、打ちひしがれるヨンファ。

犯人に命乞いするも、聞き届けられるはずもなく。

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目の前で人命が失われても、報道局長は「大統領の謝罪はできない。今からテロとの戦いを宣言すると伝えろ」とヨンファに迫ります。

事件が終わるためには、人質が死ななければならないと局長。

人質が死ねば、大統領も謝罪圧力から逃れ、正当性を得られる。

犯人を追い込む世論をつくるには、人質を死なせる必要がある。

崩れかけた橋の上に部下がいるというのに、大統領府の顔色だけを伺い、視聴率が上がるためなら犠牲もやむなしと考える局長の狂気に乗せられることなく、ヨンファは今大統領がスタジオに向かっていると嘘を報じます。
大統領が向かっているので、今にも崩れそうな橋の上にいる人々を、せめて子どもや女性たちだけでも救出を許可して欲しいと訴えるヨンファ。
その声に呼応し、イ・ジス記者は自分が残るので子どもと女性はヘリでの救出を見逃して欲しいと勇敢に申し出ます。

崩れかける橋につかまりながらも正義感を発揮するイ・ジスの記者魂に動かされ、犯人は救出を認めますが、時既に遅し。
橋は人質を乗せたまま、無残に崩れ落ちてしまいます。

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激しい怒りと絶望に震えながらも、犯人に呼びかけるヨンファ。

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人質を死なせてしまったことに、犯人もショックを受けていました。

すまないと声を落とす犯人。
殺すつもりはなかった。
大統領が謝ってさえくれれば、誰も犠牲にするつもりはなかった。
だから自分は人質の救出に合意したのに、殺したのはそっちのせいじゃないかと。

風向きが怪しくなると、大統領への批判をかわすため、各テレビ局は突然ユン・ヨンファの汚職について報じ始めます。

大統領秘書室から多額の賄賂を受け取っていたヨンファ。
勿論、政府に有利な報道をする対価です。
そして、イ・ジス記者の特種を自分のものとして発表した事実も。

正義面してなんて薄汚いやつなんだと罵る犯人。
これらのことは、すべて局長が大統領秘書室と込み込みでリークさせたのでした。
再び裏切られるヨンファ。

局長は視聴率が75%に達したとほくそ笑みながら、「お前も適当に切り上げろ」とスタジオを出て行ってしまいます。

なんちゅう恐ろしい筋書き。(苦笑)

取り残されたヨンファは、犯人は橋の爆破では怪我人を出していないことに気づき、この近くで橋を見ながらスイッチを押しているに違いないと確信します。
テロ対策班のパク・チョンミンに、逆探知該当者の中でマポ大橋に一番近い場所にいるのが犯人だと伝えるヨンファ。

テレビ局の隣のビルに機動隊が乗り込み、突撃に備えるさまが生中継で伝えられる中、まだ爆発物を持っていると犯人。犯人がビルごと爆破しようとしていると察したヨンファは、懸命に機動隊に向かってそこから離れるよう画面を通じて呼びかけますが。

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倒壊し、倒れ掛かるビルの衝撃で、激しく揺れるスタジオ。
ヨンファを残したすべてのスタッフは、早晩折れるであろうビルから一目散に逃げ出します。

そんなさなか、中継モニターを見るヨンファの目に飛び込んできた、運ばれていくジスの遺体・・・・・・。

なおも生き延びた犯人は、ヨンファに電話をかけてきました。

一人になったヨンファに、その爆弾は偽物だと笑う犯人。

かかってきた内線番号から、犯人がこの建物内にいることを知ります。

犯人と対決する覚悟を決めたヨンファは、中継をオンにして視聴者に呼びかけます。

「視聴者の皆様。このニュースを最後まで見届けてください」

こうして犯人を待つヨンファ。

そこにやってきたのは、パク・ノギュではなく、若い青年でした。

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青年の持つ起爆装置を奪うべく、取っ組み合いになるヨンファ。

倒壊したビルの重みに耐えられず、大きく傾く放送局。
その弾みに、青年は窓の外に投げ出されてしまいます。
ケーブルにしがみつく青年。

「お前、パク・ノギュの息子か?」

疲労困憊しながら尋ねるヨンファに青年はそうだと頷きます。

生涯真面目に働いたのに、労災の償いさえ受けられず命を落とした父。
その父は生前、ユン・ヨンファのニュース番組しか見なかったのだと。
だからこそ、父の名で、父の報われない事情を伝えて欲しかったのだと青年。
あなたにこそ、伝えて欲しかったと。

正義のキャスター然と振舞いながら、裏では権力から賄賂をもらい、報道に手心を加えてきたヨンファは、青年の言葉に悔恨の念がこみ上げます。
ヨンファは来なかった大統領に代わって自分が心から謝ると言いながら、青年を救うべく手を差し伸べ。

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あともう少しというところまできたその時、青年は狙撃されてしまいます。

ヨンファは青年を救うべく、渾身の力を込めて手を握りますが、二発目の銃弾を受けた青年の手は、力なくヨンファの手のひらを滑りぬけ。
残されたのは、青年の手にかかっていた起爆装置のみ。

力も尽き果て、崩れ落ちそうなビルの窓辺に座り込むヨンファ。
ヨンファの目にその時、銃を構えた特殊部隊の姿が映ります。
今度は起爆装置を抱えた自分を殺そうとするだろうと察知したヨンファ。

茫然自失になりながら起爆装置を見つめていたヨンファは、いよいよ目前に迫りきた機動隊の前で、起爆装置のスイッチを押します。

轟音を立てながら崩れ落ちるテレビ局のビル。
ヨンファを乗せたまま突き刺さったそのビルの先には、国会議事堂が・・・・・・。

(END)

いやー、この新人監督さんは、えらいもの撮っちゃいましたね。
キム・ビョンウ監督。今年満33歳、1980年生まれでいらっしゃいます。

撮影が行われたのは今年の3月頃。
なんと6週間という異例のスピードで撮り終えたそうです。
ちなみに監督さんも、ちょっと俳優できそうな端正なお顔立ちでいらっしゃいます。(どうでもいいですよね。笑)

かのブロックバスター『雪国列車/スノーピアサー』となんやかんや比べられたこの映画ですが、なんと最終的には観客動員数557万!

上映館数からなにから圧倒的に不利だったはずなのに、気づけばこのスコアなんですね~。すごいです。
これはもう、あれですよね。新人監督賞、もらって当然。

この映画のすごさは、なんと言ってもハ・ジョンウさんの演技力。

正義も公正報道もかなぐりすて、時の権力におもねり、己の欲のためならなにものをも利用するセコセコな小市民の顔から、命を狙われ一人恐怖する人質としての顔、愛する人を心から案じる人間的な顔まで。
怒り。恐怖。絶望。諦念。悔恨。
1時間半の間にめまぐるしく変わるハ・ジョンウさんの表情によって、この映画は退屈さを感じさせることなく走りきるのに成功します。

しかしあの警察庁長!
あのイヤさ加減、思いっきりあの人じゃないですか? 
前警察庁長のチョ・ヒョノ!

前大統領の任命で警察庁長に据えられた人物。
前大統領就任時は、ほんとにやりたい放題やってくれましたよね。
大統領の政策に異議を唱える人々に強権を振るい、野蛮な妄言もいとわない。亡くなったノ・ムヒョン前大統領に対しては、裏金口座がばれたから自殺したなどと虚偽を流布するなど、おぞましいことこの上ないです。
虚偽を流布したことは既に法廷で判明しており、今は刑務所暮らしという有様。

そのチョ・ヒョノを模したんでしょうねぇ、監督。

共感する人、いまくりでしょう。ええ。(笑)

そしてこの、腐敗しきったテレビと大統領府の関係。
これも思いっきりそのまんまですよね。

前大統領、政策に反対する市民の声や、自らの不正を追及するニュースを封じようと、SBSを除く地上波の社長の首を挿げ替え、ニュース専門チャンネルのYTNの社長も「大統領の男」に勤めさせたんですよね。
公正で自主的な報道を求める多くのテレビ局員の首を切り、もしくは閑職に追いやり、まともな報道などもうMBCにもKBSにもYTNにも存在していません。他が酷すぎて、いたって普通のSBSが相対的に良く見える現状。この状態が前政府の時から固定し、今はますます酷くなりました。

イヤなら見なければいいということに留まらず、報じられなければ、どんな問題も世の中に存在していないに等しいというところが、テレビの怖いところです。
ここさえ牛耳れば、世論などいかようにも操れますよね。
能動的に自分の頭で「なにが本当か」を確かめようとする人はおそらくどこでも少数なので、大半の人は一方の立場に立った偏った報道を「真実」かと思わされてしまいます。

監督は、この映画のシナリオを4年間書き溜めたそうです。
なんかもう、こういう仕上がりになるのも、ごもっともです。(笑)

映画としてはディテールに粗が多く、たとえばあのあたりからビルが倒壊しても、国会議事堂に突き刺さろうと思ったら600階くらいの建物じゃないとありえないとか色々あるのですが、その辺はファンタジーってことですよね。
ラストカットに国会議事堂の屋根が映り込んだときはド肝を抜かれましたが、冷静になると「ないないないない」と笑ってしまいました。

大切に築いてきた民主主義が前大統領執権以来完全に後退し、テレビも大手新聞もさらに現大統領の太鼓もちに成り下がるばかりの韓国ですので、これからもこうしたとんがった作品は現れるでしょう。

最後に予告編を載せておきますね。

こちらは別バージョン。

うーん、よみがえるスリル。

権力批判したいだけの映画と評される結果に陥る可能性もあったのに、緊迫した舞台設定がディテールの弱点を十二分にカバーしたこの映画。
日本には入ってきそうもありませんが、韓国語がお分かりになる方はご覧になってみてもいいのではないでしょうか。
ワントップ主演のハ・ジョンウさんの演技は、『ベルリン・ファイル』ともまったく違って、こちらも見事でした。