みなさま、こんにちは。

昨日まで3連休だったという方も多いと思いますが、みなさまはどこかにお出かけになられたでしょうか。
私は今が満開の梅の花を見に行きました。
出かけた梅園には早咲きのものから遅咲きのものまで色々な種類の梅が植わっていたのですが、そこでは入園時に各種梅の木の説明と各々の写真が載ったプリントを渡されるという予想外の「オマケ」が。どの写真がどの説明文と符合するかを実物を見て当てるという、来園者を楽しませるためのちょっとした工夫が凝らされた梅園だったのです。
おかげで優雅な散歩を決め込むはずが、穴があくほど梅の木を吟味する羽目に。(スルーすればいいだけの話なのですが。笑)
白にピンクに赤。八重のものに一重のもの。花びらも枝も種類ごとに随分違うということに気づかされる、楽しいひと時でした。

さて、今日はいま放送中のSBSの二つのドラマについて。

『星から来たあなた』の終了で魂抜かれて以来、素敵な宇宙人が周りに潜んでいないか妄想する日々を送っておりましたが。

目が寂しくて(?)何の気なしに見ていたドラマが実はすごいことに気づきました。

見たいと思わせるドラマがSBSのものばかりなのですが、現在放送中の月火ドラマ『神の贈り物-14日』(邦題仮)と水木ドラマ『3days』(邦題仮)のドラマを見ながら「ドラマはSBSの時代が来たな」とちょっと震えが来た私。そう感じているのは、どうやら私だけではなさそうです。

『神の贈り物-14日』の直近6話の視聴率は9.4%。

一方、『星から来たあなた』のあとから始まった『3days』の直近6話の視聴率は12.9%。

どちらも視聴率こそ決して高いとは言えないのですが、その割にはドラマに関する論評や記事が多く目に付くことに気づきました。
取り上げている記事の数が明らかに多いんです。

特に、『神の贈り物-14日/신의 선물 -14일』。

主演はイ・ボヨンさん。
SBSドラマは『君のささやきが聞こえる』が終了した去年の8月以来なので、「またイ・ボヨン?」の感がなきにしもあらずですが。

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事件や社会問題を扱う報道番組の構成作家キム・スヒョン。一人娘を自分の番組のせいで誘拐され殺されてしまいます。
娘の殺害に失意のうちに自殺を試みるも、娘が殺される2週間前にタイムスリップしてしまい、娘を殺した犯人を見つけ出し、娘を殺されないよう孤軍奮闘する役どころ。

そんなスヒョンと期せずして一緒にタイムスリップすることになった元刑事で探偵のキ・ドンチャン。

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演じるのは、チョ・スンウさん。
現在NHK BSプレミアムで放送中の『馬医』に主演されている方です。

テレビの前で大胆不敵に宣言された児童誘拐と、その無慈悲な結果を知るキ・ドンチャンは、娘が2週間後に殺されると訴えるスヒョンの言葉を唯一信じる人物。同時刻に同じ川に沈められたことでキ・ドンチャンもタイムスリップしてしまったのです。
知的障害を負う兄が女性を殺害し川に遺棄するのを目撃したと証言したことで、兄を死刑囚に確定させたキ・ドンチャンは、スヒョンの娘が殺されなければ、同時期に行われた兄の死刑執行を止められるかもしれないと考え、スヒョンと共に犯人探しを始める人物です。

そしてスヒョンの夫で元検事、現在は人権弁護士として活躍するハン・ジフンを演じるのはキム・テフさん。

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突然娘を殺された不幸な弁護士という表の顔とはだいぶ異なる「裏の顔」を持つ人物です。

そして、スヒョンの初恋の人で現在は刑事のヒョン・ウジン(チョン・ギョウン扮)

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ヒョン・ウジンはキ・ドンチャンの元同僚です。
タイムスリップしたというスヒョンの言葉に半信半疑ながら、スヒョンが「予告」する事件が本当に起こることから、スヒョンの言葉を元に捜査を進めていくようになります。

スヒョンの娘セッピョルはこちら。

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数々のドラマに出演しているキム・ユビンちゃん。

そして、今後事件の鍵を握ってきそうな、バロ扮するキ・ヨンギュ。

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ヨンジュはキ・ドンチャンの血の繋がらない甥。父は連続婦女殺人犯として収監されている死刑囚のキ・ドンホ。血縁関係はないことが6話までで分かっています。幼少期に脳に損傷を受けたことで、知能の発達に障害を負ってしまったヨンギュですが、歳の離れたセッピョルと友だちになり、セッピョル誘拐後も「絶対に死なない」と意味深な言葉を残すなど、セッピョルを救うために独自の働きをみせることを予感させています。

このドラマ、脚本を手がけるのはチェ・ランさん。
チェ・ランさんは2008年に放送されたMBCのドラマ『一枝梅イルジメ』で初めてドラマの脚本を手がけた方で、この作品がドラマ2作品目となりますが、もともとはKBS 1の『歴史スペシャル』、『日曜スペシャル』、『人間劇場』やMBCの『プロデューサー手帳/PD수첩』など良質なドキュメンタリー、時事番組を15年間手がけてきた放送作家。
2004年からはシナリオの公募などで続々と入選を果たし、放送作家からドラマの脚本家に転職した経歴の持ち主です。

過去の経歴を知り、脚本家の手腕に妙に合点がいく人々が続出している様子。
なにしろ手がけてきたのはかつて骨太で知られていた時事番組・ドキュメンタリーばかりですし、一作品だけのドラマ代表作『一枝梅』も視聴率30%を超えるヒットを記録しています。
緻密さとエンタメ性を兼ね備えたものが書ける人物だと想像するのは、難しいことではありません。

どんなものを繰り出してくるのか未知数なこの脚本家は、現在のところ視聴者の期待感を回を追うごとに高めるのに十分成功しています。
韓国ドラマの中では新しいジャンルであるスリラー/サスペンスものを、目下のところ視聴者を突き放しも、ダレさせもせず、巧みな展開で見せてくれていること。毎回映画を見るような「濃さ」を感じさせてくれていること。これらの点がこのドラマの魅力です。

娘を殺されたあと2週間前にタイムスリップするという設定は、字面で読めばSFもののようですが、実際のドラマは「誰が犯人か」に焦点を絞った謎解きに重点が置かれています。
視聴者が登場人物の視点を内在化しつつ犯人に目ぼしをつけても、この手のドラマではお約束である「どんでん返し」の連続で、誰が犯人かおいそれと分からないところも基本に忠実。

SF、ホラー、スリラー、サスペンスもののドラマを韓国では“ジャンル物/장르물”と呼んでいますが、こうした特定ジャンルを扱ったドラマはこれまで韓国では数自体が圧倒的に少なく、著名なドラマプロデューサーであるイ・ビョンフンさんも『チャングムの誓い』のプロモーションの際、「韓国の視聴者は謎解きものが嫌い」と分析していたことがありました。ドラマに謎解き要素を加えると視聴率が如実に落ちるという文脈だったのですが、このところSBSが果敢に放ってくる“ジャンル物”へのチャレンジは、既存の「ドラマ界の常識」を覆し、今後韓国ドラマの幅を大いに広げるのに一役買うかもしれません。

韓国ドラマの“ジャンル物”と聞いて私が真っ先に思い出すのは、2012年5月末からSBSで放送された『ファントム』(原題:幽霊/유령)。

ソ・ジソブさん主演ドラマ『ファントム』は、ハラハラさせるスピーディーな展開と現在進行形の韓国社会の問題を上手くブレンド。よく練られた脚本という長所を最後まで貫き、見事な着地を見せたドラマとして記憶に残っていますが、現在水曜日と木曜日に放送中のドラマ『3days』も、実は同じ脚本家のキム・ウニ/김은희さんによるものなんですよね。

『ファントム』の大ファンである私としては、『ファントム』の脚本家と聞いただけで胸が躍ります。

こちらのドラマ、主演はユチョン。

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ユチョン扮するハン・テギョンは大統領のSP。

大統領府で経済政策を担当する実父が謎の死を遂げることから、物語は始まります。そこに「機密文書98」なるものが関わっていること。父の死に現職大統領が関わっていること。大統領自身も何者かにより暗殺の危機に見舞われること。そして暗殺を企図したしたのが自らの上官である事実などが初回で描き切られるあたり、さすが『ファントム』の脚本家らしいと唸らせてくれます。

かつて米国の軍需企業「ファルコン」のコンサルタントを務め、現在は大統領に上り詰めたイ・ドンヒ(シン・ヒョンジュ扮)。イ・ドンヒには98年に起きた北朝鮮との武力衝突事件「ヤンジンリ事件」をチェシングループ会長のキム・ドジン(チェ・ウォニョン扮)らとともに工作した犯罪的な過去があります。ファルコンから武器を韓国に買い入れさせるために北朝鮮の潜水艦を脅し程度に領海侵入させ、そのまま帰らせるという計画だったのですが、潜水艦に故障が生じたために韓国軍が投入され、武力衝突という最悪の状況に発展してしまった過去の事件を軸に、現在大統領の命を狙うキム・ドジン一派とそこに対抗する大統領、父の死に秘められた真相を追うハン・テギョンの姿が描かれていきます。

こちらはディテールの説得力が失われた前回第6話の大統領と群衆のシーン、容疑者と群衆のシーンのおかげで一気に失速した感が強まったものの、“ジャンル物の第一人者”と呼ばれる脚本家がどのようにストーリーを展開していくのかについては、依然視聴者は集中力を切らしていません。記事などを読むに、これまでの韓国ドラマでは見受けられなかった素材を扱っている点を評価し、ディテールの粗さをいまのところ批評家も視聴者も大目に見ている印象を受けます。

米国のTVドラマを見慣れ、スリラーものにもサスペンスものにも目が肥えている韓国の視聴者にとって、SBSが果敢に送り出してくるこの手のドラマは、クオリティの高さよりもはるかに粗のほうが目について当然というもの。
米国のTVドラマのクオリティの高さを再認識させられるほど、細かい部分での力量の差を感じるのですが、それでも韓国の多くの視聴者がこうしたチャレンジ精神溢れるドラマの粗に、時に眉をひそめ、目を瞑りながらも見届けようとするのは、それだけ韓国映画、ドラマ業界の発展・充実を一般レベルでも意識しているからなのでしょうね。
「外に通用するもの」をつくろうと常日頃意識する(意識せざるを得ない)韓国人的特性が、新しいジャンルのドラマを見守り応援する視聴者の態度に反映されているようで、興味深いです。

そしてもう一つ、このところSBSだけがチャレンジ精神溢れるドラマをつくっている点も、興味を引くところです。

「韓流コンテンツ」として外に売るためのそろばんははじかれていても、内容的な濃度や面白みに欠ける近頃のKBS、MBCのドラマに比して、SBSが生き生きと実験的な作品を制作しているのは確かなので、SBSに志の高いドラマクリエイターが集まっている何か必然的な事情がありそうです。
このあたり、そのうち掘り下げてみたいところです。

ともあれ、現在放送中の二つのドラマ。

私は当初『ファントム』の脚本家の作品である『3days』のほうに注目していたのですが、気づけば『神の贈り物』のほうにより魅了されています。

なんといっても注目は、この方。

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映画俳優、ミュージカル俳優として知られていたチョ・スンウさん。
ドラマの出演は2012年から13年にかけてMBCで放送された『馬医』が初めてなので、お茶の間での露出度が高いとは言えない方ですが、今回のドラマでの演技は本当に魅力的です。

元凄腕刑事で現在は興信所の探偵をやっているキ・ドンチャン。スヒョンと一緒にタイムスリップしたワケありな元刑事は、スヒョンを助けることで自分にも得られるメリットがあることに気づき、犯人探しに共に奔走するのですが、全羅道の方言を駆使しつつコミカルにもシリアスにも自在に変化するこの人の演技に、すっかり釘付けになってしまいました。
私はあまり時代劇を見ないので、『馬医』も評判につられて何度か見たもののちっとも集中できずに終わったのですが、このドラマでのチョ・スンウさんは『馬医』とは全く違います。
喋り方も身のこなしも所作も、本当にナチュラルでキ・ドンチャンそのものなんですよね。こんなに自然に役柄を演じてるって、一体どういうことでしょう。『馬医』の人と同一人物とは思えません。

もしかしたらチョ・スンウさんのおかげで、このドラマが毎回映画のように思えるのかもしれません。一見地味な装いをしながら、ぐいぐい見る者を惹きつけてやまないんですよね。この貫禄でチョ・ジョンソクさんと同じ1980年生まれってのも、一体どういうことでしょう。(笑)

私の中ではイ・ボヨンさんを差し置いてワントップの主役となりつつあるチョ・スンウさん。今後もスリリングなドラマ『神の贈り物』でどんな魅力を見せてくれるか、ドラマの展開と共に目が離せません。