みなさま、こんにちは。

日に日に寒くなってきましたが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
私は所用で韓国中部地方におりましたが、東京での12月を思わせる寒さでした。
ソウルはまたさらにぐっと気温が落ちましたので、この連休に韓国にお出かけの方は、寒さと乾燥にお気を付けくださいませ。

さて、今日は日本で11月11日から公開されている韓国映画『密偵』をご紹介しようと思います。

韓国で2016年9月6日に公開された、映画『密偵』。
韓国での観客動員数は750万名に達しています。
ソン・ガンホさん、コン・ユさん主演のこの映画は、ハン・ジミンさん、特別出演のイ・ビョンホンさん、日本からは鶴見辰吾さんというラインナップになっており、他に『星から来たあなた』のシン・ソンロクさんや、この映画で一気に注目を浴びるようになったオム・テグさんらが出演されています。
この映画については、以前こちらの記事でも取り上げています。
(過去記事へのリンクはコチラ

以下は韓国でのポスター。

画像はクリックで拡大します。


ー敵は常に我々の中にいたー

ポスターのキャッチコピーです。

大日本帝国の統治下ある朝鮮を部隊にしたこの映画の中で、ソン・ガンホさんが演じているのはイ・ジョンチュルという朝鮮人の日本警察。
かたやコン・ユさんは、朝鮮独立を目指して武力闘争を繰り広げる独立運動組織「義烈団(ウィヨルダン)」のリーダー、キム・ウジンを演じています。キム・ウジンの同志ヨン・ゲスン役にハン・ジミンさん、シン・ソンロクさん(チョ・フェリョン役)、「義烈団」の団長にイ・ビョンホンさんが特別出演。
また、鶴見辰吾さんはソン・ガンホさんとオム・テグさん(ハシモト役)ら日本警察の上官・ヒガシという役どころです。

植民地統治下の朝鮮で、朝鮮人でありながら侵略者の側に身を置き、日本警察として同胞らの朝鮮独立運動組織を厳しく取り締まっていたイ・ジョンチュルが、組織瓦解のため彼らを包摂せよとの命を受けて「義烈団」に近づくことになり、その過程で沸き起こる極限的な緊張と心の葛藤を非常にスリリングに描いた映画となっています。

以下は日本でのポスター。

私はこの映画は昨年韓国で観たのですが、とても良質な作品で、こうしたものが日本の観客と共有されないのは実に残念なことだと思っていたのですが、私の早合点でした。

個人的には、鶴見辰吾さんの熱演がとても嬉しかったです。
なかなか出演しずらい作品であったでしょうに、映画が心に響いた観客の一人として感謝しています。

この映画が韓国の中で評価された最大のポイントは、「あの時、我々自身のありようはどうであったのか」という内在的な問いかけを投げかけた点にあったと私は思っています。

自分であれば、あの時、あの時代に、何を選択し、どう生きたであろうかと、見終えた後に考えこまずにおれない映画。
その答えは、決してきれいに出てきたりはせず。
自分だったら登場人物のうちの誰だっただろうかという思いが否応なく首をもたげてくる、深い突きつけのある映画でした。

ネタバレはいたしません。
日本公開を待たれていた方もいらっしゃると思いますので、お近くで上映の際は是非ご覧になってみてください。

日本公式サイトのリンクを貼っておきます。

『密偵』公式サイトはコチラ

また、公式サイトにも掲載されていますが、you tubeに日本公式予告編もアップされていますので、そちらもご紹介しておきましょう。

映画の公開にあたり、先日11月9日付東京新聞にソン・ガンホさんのインタビューも掲載されていました。

<揺れる「密偵」 謎の本心 主演 ソン・ガンホ>というタイトルの記事です。
よくまとまっているインタビューでしたので、該当記事へのリンクを貼っておきます。
東京新聞記事へのリンクはコチラです。

記事の最後の部分を一部抜粋し、ご紹介します。


今年一月、韓国の「今年の映画賞」では「密偵」で主演男優賞を受賞。その際「『映画一本でどうやって世の中を変えられるのか』と言われるが、私は一本の映画で世の中を変えられると思う」とコメントした。「ここ数年、私の出演作が韓国で大きな話題になったので自分の考えを話さないといけないと思った。すぐに変わるわけではないが、映画を見た後でイメージが頭の中に残り、変化が始まる。見たものを記憶した瞬間、一歩を踏み出すのだと思う」と力強く語った。

上記で語られている「今年の映画賞」でのスピーチについては、以前取り上げたJTBCニュースルームでのソン・ソッキアンカーとのインタビューでも触れられていましたよね。(過去記事はコチラ

「今年の映画賞」は50社が所属する「韓国映画記者協会」が選ぶ映画賞です。

この時選ばれた男女主演賞の受賞者は、ソン・ガンホさんとソン・イェジンさん(「徳惠翁主」)でした。



ソン・ガンホ&コン・ユW主演の『密偵』。
内容もさることながら、実は美術が素晴らしい映画でもあります。
絵の美しさ、精緻さは、観客の集中力とも直結しますよね。

そしてまた、コン・ユさんのイメージチェンジが話題になった映画でもありました。
こんなにスタイリッシュなのは反則なんじゃないかと思うほど、クラシカルないでたちがスクリーンの中に映えていて、中には「拳銃を取り出してもコーヒーに見える」との感想をクチコミする人もいたほど。
コン・ユさんのCMのことを言っているのですが、一見すると褒めているのか何なのか分かりませんよね。
ええ、確実に褒めているのですが。(笑)

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また、映画の中で異彩を放っているオム・テグさん。
オム・テグさんの演じた役柄「ハシモト」は、映画の中では触れられていませんが幼い頃に日本に帰化し、自ら日本人と思っている朝鮮人という隠れた設定があるのだそうです。

映画をご覧頂ければわかるのですが、この「ハシモト」が本当に怖くて、そのギスギスした外見も恐怖を倍加させていたのですが、実はわざと痩せたわけではなく、この役に挑む過程で勝手に体重が落ちてしまったのだそう。
あんなに怖い「ハシモト」刑事が、実はソン・ガンホさんと初めて目を合わせた時にはめまいがして気絶しそうになっていただなんて、オム・テグさん、なかなかギャップで持っていく方です。(「10アシア」インタビュー記事にて言及。リンクはコチラ

日本公開から既に1週間経ってのご紹介となりましたが、みなさまもまだ間に合うようでしたら、是非一度ご覧になられてみてくださいませ。