みなさま、こんにちは。

遅まきながら新年のご挨拶を差し上げます。
2023年、明けましておめでとうございます。
今年がみなさまにとって良い年になりますように。

さて、今日は去年1年間の韓国映画観客動員TOP10をまとめてみようと思います。
どういうわけか、これを書かないと宿題を残している気分になってしまうので。(笑)

コロナの前までは韓国では毎年のように観客動員1000万人超えの映画があったりして、どの映画にどれだけ観客が入ったのかを見ることでその時々の社会の雰囲気や人々の気分などを知ることができ、私も一種のバロメーターとして興味深く観察していたのですが、ご存じの通りコロナの影響を最も大きく受けた業界のひとつが映画界。
人々が映画館に集まれない厳しい状況が3年も続いてしまいました。
「いい映画」と「観客動員数が多い映画」は必ずしもイコールではないとはいえ、それでもお客さんの入り方である程度「良質の映画にはこれくらいの観客は入る」といった納得が得られたものですが、コロナで観客動員数が本当に無意味になってしまいました。

「この映画にこれしか観客入ってないの?!」と愕然とする映画が本当にたくさんあります。
加えて物価の値上がりが映画のチケット代にも反映し、リーズナブルだった韓国の映画チケット代が軒並み値上がり。
やっと劇場に足を運びたくなったのに、これまで7千ウォン~1万ウォンほどだったチケット代が15000ウォン、週末は16000ウォンなどというとんでもない値上げ幅になっていることに愕然とし、客足が思いっきり遠のいているのもあり、作品のレベルが落ちているわけではないのに観客が戻ってこない状況にあります。
ちょっと、いや、だいぶ心配ですよね。映画製作にダイレクトにこの影響跳ね返りますよね。そしたら質にも多様性にも影響出てきますよね。

うーん。

と唸りながら、まいります。
すみません、のっけから唸っていて。(笑)

今までは1位から取り上げていたのですが、今回は10位から順位上げていこうと思います。(数字は「KOBIS(映画館入場券統合電算網)」1月10日基準)

 

2022年に公開された韓国映画観客動員数第10位は、こちら!

 

 

『パイレーツ:失われた王家の秘宝』(原題:해적:도깨비 깃발)。

2022年1月26日公開。観客動員数133万9,242人。
これ、Netflixでも配信されてたんですね。
観客の入りを心配してた私の立場は?(笑)

というわけで、まず10位はカン・ハヌルさん、ハン・ヒョジュさん、クォン・サンウさん、イ・グァンスさんらが主演の『パイレーツ:失われた王家の秘宝』。
2014年公開の1作目『パイレーツ』のシリーズ2作目なのですが、監督が違います。
1作目はイ・ソックン監督、本作はキム・ジョンフン監督。
監督が違っても同じシリーズと言えるのか謎ですが、その話はあとに譲るとして。(笑)
私は映画を見ていないので、論評は控えます。ただ、1作目は大ヒットでしたよね。私もソウルの映画館で観ましたが、観客動員864万人と満員大入りでした。まだメジャーじゃなかったユ・ヘジンさんの海賊役、懐かしいです。

 

つづいて第9位!

 

 

『宇宙+人』第1部。153万8,504人。

この豪華さで153万かぁ!

キビシーですね。

『10人の泥棒たち』、『暗殺』ともに1200万人超えの観客動員を叩き出した大ヒットメーカー、チェ・ドンフン監督の最新作で、かつ、キム・テリ、リュ・ジュンヨル、キム・ウビン、ソ・ジソブ、ヨム・ジョンア、チョ・ウジン、我らがキム・ウィソンという超豪華キャストを揃えた本作が、まさかの153万。キビシーにもほどがあります。

この映画は公開日が7月20日。夏休みを狙ったブロックバスターだったのですが、2部構成というのが祟ったでしょうか。2部に向かっていく前振り的な展開が長く、単体で見てある程度完結していて欲しい観客にとっては、わかりやすい高評価な口コミを残しづらい作品ではあります。
とはいっても動員低すぎです。153万って。私は面白かったですが。

ストーリーは奇想天外で、「高麗末、噂の神剣を手に入れようとする霊能者たちと、2022年、人間の体に収監された宇宙人の囚人を追う人々との間に時間の扉が開くことで繰り広げられる大捕物劇」といった感じなのですが、せわしなさが苦手な方には、あえてお勧めはしません。私はタイムスリップと宇宙人ものなら迷わず見る人間なので、第2部も公開になったら必ず見ます。(笑)

 

つづいて第8位。

第8位にランクインしたのは、こちら。

 

 

マジで?

カンヌで監督賞取った作品が、8位なの?

というわけで、パク・チャヌク監督の『別れる決心』が189万0,176人といういささか惜しい結果になりました。

こちらは6月29日公開で、5月にはカンヌで既に受賞していたのですが、映画がいわゆる娯楽作品という感じではないので、作品の質に見合わない観客動員数になっています。

『別れる決心』は2月17日から日本でも公開されるようですね。
BTSのRM君がパク・チャヌク監督の大ファンで、とりわけこの映画は6回だか見たと言っていましたので、わたくしめも当然見ましたが(そんな理由で?笑)、これは、いいです。
パク・チャヌク監督の初期の作品『JSA』は私の中で殿堂入りしているほど感銘深く見た映画なのですが、その後の作品はなぜかどこか苦手で、『JSA』のほうがむしろパク・チャヌク監督のカラーの中では異色の作品だったことに『お嬢さん』でようやく気づくまではパク・チャヌク監督作品がどこか苦手な自分を「そんなはずはない」と受け入れられていなかったのですが、本作『別れる決心』はとても良かったです。パク・チャヌク監督らしさ全開にもかかわらず。

パク・ヘイルさんとタン・ウェイさんでなければ、あの雰囲気は出ませんよね。
タン・ウェイさんは韓国国籍以外の俳優としては初めて11月の青龍映画祭で主演女優賞も受賞されましたが、納得です。
公開になったら、ぜひみなさまもご覧になられてみてください。
韓国では気に入った人が一人で何回も見る映画、と言われています。

 

続いて、第7位。

 

 

『6/45』。198万0,444人。

すみません。初めて存在を知りました。(笑)
ポスターに「共同ロト区域」とのうたい文句があるので何事かと思いきや、韓国の兵士の大当たりクジが風に流されて北側に飛んで行ってしまい、それを北側の兵士が拾ったことで繰り広げられる爆笑コメディ、だそうです。
あらやだ、これちょっと見たい。(笑)
韓国に本当に最悪に変な政権ができてしまったので、こういう軍事境界線を舞台にしたコメディを今見たら、大笑いしたあと泣きそうです。
それを思うと、8月24日公開の見るからに地味でB級っぽいこの映画が密かに200万近い観客を集めてたことにも、なんかくるものがあるなぁ。みんな気持ちは同じなんだな。(涙目)

ちなみにこの映画の主演のコ・ギョンピョさん、『別れる決心』にも出演しています。
コ・ギョンピョさん、当たり年でしたね。

 

・・・・・・とっとと参ります。(笑)

6位。

 

 

『非常宣言』。

まさかの204万2,999人。

この観客の入りの少なさが、衝撃的です。

『観相師 -かんそうし-』、『ザ・キング』のハン・ジェリム監督がソン・ガンホ、イ・ビョンホン、イム・シワン、キム・ナムギル、チョン・ドヨンという豪華キャストを揃えて送り出したこの映画、テーマが時代に嫌われましたね。
コロナが世界に蔓延する前に製作されたこの映画は、バイオテロ犯によるハイジャックを素材にしているのですが、現実の世界が新型コロナによるパンデミックを迎えてしまい。

ハン・ジェリム監督はある種先見の明があるというのか、検察の特捜部がキャビネットの中に色々わざとしまっておいて自分たちの欲しいものを手に入れるために時期がくると一つずつ引っ張り出して捜査で圧迫するという嫌らしさを存分に描いた『ザ・キング』などはまさに韓国検察の生態そのものとして今や認識されていますし、『非常宣言』もまるでコロナを予見したかのような描写の数々を描いていたりと、鋭い特有のアンテナをお持ちな気がします。
今回はそれが現実から離れたい観客には敬遠される結果になってはしまいましたが。

ただ、これだけの豪華キャストなのに観客が入らなかったのは、この映画には他に韓国の観客に嫌われたある「地点」があり、それに観客がナイーブな反応を示したからだ、との声が韓国内でちらほらあるのですが、日本でも公開が始まっているのでここでは触れずにおきます。
ちなみに私はこの映画を見たのですが、とにかくイム・シワン君が普通じゃないです。(笑)
パニックムービーとして全然ありですし、役者さんたちの演技は言うまでもないので、みなさまもぜひご覧になられてみてください。

 

さて、ここからが折り返し。
上位に向かってまいります。

第5位は!

 

 

 

『魔女Part2 The Other One』。280万6,254。
2018年のシリーズ1作目に続く2作目。
1作目の時も318万人の観客動員数を記録しているんですよね。
今回も280万人なので人気シリーズなのは間違いなさそうです。
映画の概略は「秘密の研究所で一人生き残った少女と彼女を追う謎の勢力との間で繰り広げられるアクション劇」という説明で合っているかと思いますが、ごめんなさい。私は1作目も本作も見ていないので、これ以上語ることがありません。(笑)

 

そして第4位。

やっとこれがきた!

 

 

 

 

ハント~~~~!!!

というわけで、『HUNT』。第4位です。
観客動員数435万0,029人ということで、やっと400万超えてきました。
そうこなくっちゃ!

こちらは、なんとイ・ジョンジェさんの初監督作品。
シナリオもイ・ジョンジェさんが書いてます。
そして親友チョン・ウソンさんとダブル主演。

いや~、これはもう私も観ましたが、イ・ジョンジェ、すごい!
初監督作品でこの仕上がり、お見事です!
青龍映画賞で新人監督賞を受賞されましたが、この出来なら当然です。(笑)

この映画は83年10月9日に実際に起きたいわゆる「ラングーン事件」をモチーフに、いまだに謎の残る歴史の事実の間隙をイ・ジョンジェ監督が想像力で埋めたスパイ映画。
80年代軍事独裁政権下で起きた様々な事件は、いまだに真相が明らかになっていないことがたくさんあるのですが、少なくとも79年の朴正煕暗殺から80年代の全斗煥登場の経緯など韓国現代史に予備知識を持っていた方が、映画の理解に役立つかと思います。
と言いますか、そこの知識がゼロだと、何を描いているのか分からないかも知れません。

KCIA(韓国中央情報部)でそれぞれ別の任務を遂行中の要員パク・ピョンホ(イ・ジョンジェ扮)とキム・ジョンド(チョン・ウソン扮)がそれぞれ互いを「敵と内通するスパイ」と疑い対峙する一方で様々な事件が勃発し、といった内容です。

この映画、日本公開が決まっているのか分かりませんが、公開の暁にはぜひご覧いただきたいです。

 

そしてそして、いよいよ観客動員数第3位は!

 

 

 

キターッ!

『共助2:インターナショナル』(原題:공조2:인터내셔날)。

1作目の邦題は『コンフィデンシャル』なので、日本公開の際には『コンフィデンシャル2:インターナショナル』になりそうですね。ここではひとまず「共助」としておきます。

『共助2』は観客動員数697万9,319人。あと一歩で700万台だったのに、惜しい!
2017年のシリーズ1作目の時は781万人でした。公開日は9月7日で韓国の旧盆連休に照準を合わせたのものですが、約700万人入れば大成功ですよね。

シリーズ1作目は日本でも公開され人気を博したのでご覧になられた方も多いかと思いますが、ヒョンビン扮する「北の刑事」リム・チョルリョンとユ・ヘジン扮する「南の刑事」カン・ジンテのデコボココンビが一緒に北の麻薬王を追うという内容のある種フランチャイズ映画で、シリーズ2作目もこのデコボココンビのベースに今度はダニエル・ヘリー扮するFBIのジャックが加わり、南北米刑事の三つ巴になる展開。

まんず面白いです。
目の保養度が、さらに上がってます。なにしろ男前が二人も。ええ。
加えてユナちゃんが面白すぎて、泣きます。(笑)

前作の悪役はキム・ジュヒョクさんが演じていたのですが、『共助』での強烈な演技で脚光を浴び、がぜん注目度が高まっていた時期に不慮の事故で帰らぬ人となってしまいましたよね。
本作『共助2』ではチン・ソンギュンさんが悪役を務めています。

そして実はこの映画、1作目と2作目の監督が異なるんです。
先ほどフランチャイズ映画と書いたのは、私が編み出した表現ではなく、監督がインタビューで自ら名付けていたもの。
本作の監督は『パイレーツ(海に行った海賊)』1作目でメガホンをとったイ・ソックン(이석훈)監督。1作目とは別の人なんです。

イ・ソックン監督のインタビューによると、そもそもこの映画を製作したJKフィルムが10年ほど前から「北の刑事もの」として開発を進めてきたプロジェクトだったそうで、北の刑事と南の刑事が特定の事件を協力して解決していく中である種の正義を具現化するファミリームービーというコンセプトで 温められてきたものだったそうです。
キャラ設定がしっかり定まって1作目がヒットすれば、フランチャイズ化ができると。つまり、シリーズ化して別の監督が担当し、新たなキャラクターを投入することができるということですよね。

「フランチャイズ映画なら、とても有名な監督でなくても、映画さえしっかり作れれば興行に成功する余地が大きい。これまで韓国映画界はそうした部分が不足していた。『共助』シリーズがいい前例になれればと思う。『トップガン』も30年ぶりに続編が出るとはだれも思わなかったが、そういう映画が他にもあり得ると思う」と監督。(インタビュー記事原文はコチラ

なるほどー。そんな実験的な意味が『共助』シリーズにあったんですね。
2作目も大いにヒットしたので、これは3作目も期待したいです!

 

さーて。

というわけで残すところ2作品。

まいりましょう、2022年の観客動員数2位は!

 

 

 

 

『閑山(ハンサン)』! 726万4,228人!

この映画、3月に日本公開が決まっているのですね。

邦題は『ハンサン―龍の出現-』。

豊臣秀吉の朝鮮出兵を背景にしたこの映画は、日本の大軍を迎え撃つ朝鮮水軍の李舜臣(イ・スンシン)将軍と豊臣軍の武将、脇坂安治(わきざかやすはる)の2人を軸に、陣営内の葛藤や政治的駆け引きなどを抱えつつ海上決戦になだれ込むさまを描いているのですが、まーとにかく、すごい。なにがすごいって、ピョン・ヨハンさん。ピョン・ヨハンがヤバイ。

って急に口調が砕けてすみません。
いえ決して文章長すぎて集中力が途切れてきているわけでは。(とも言い切れない。笑)

ピョン・ヨハンさんは豊臣軍の武将、脇坂安治を演じているのですが、とにかく鬼気迫る演技といい、迫力といい、そりゃ青龍映画祭で主演男優賞取るわという感じで(どんな感じ?笑)、ピョン・ヨハンさんを『ミセン』の時からえこひいきしている私としては「こんなに立派になられて」と危うく感極まりかけたくらいです。
はい、大袈裟かましてみました。(笑)

日本公開を控えているので、内容はあまり触れずにおきますね。
せっかくなので日本のオフィシャルサイトのリンクを貼っておきます。
まだ公開が先なので今日の時点では予告編などは上がってきていませんが、コチラです。

 

というわけで。

やっと最後の1作品。

2022年、一番観客を集めた映画。

なんと1千万超えです、これ。

過去3年ひっくるめて唯一の1千万超え。

栄えある第1位は、こちら!

 

 

 

 

『犯罪都市2 THE ROUNDUP』。

観客動員数1269万2,959人。

って化け物か!(笑)

いやはやすごいですよね。1000万からさらに約270万プラス。
2017年の1作目の時は685万1,297人で、この時もまさかこの映画が685万人もの観客を動員するとはどの評論家も予測しておらずみんなでたまげたものですが、いやはや1200万超えとは。
みごと韓国映画の歴代観客動員数TOP10入り果たしちゃいました。ジャスト10位。

こちらは既に日本でも公開されてますよね、去年の11月に。

この映画は、なんで1200万人も観客入ったのか、わかります。
公開されたのが5月18日。夏休みでも、旧盆でも、旧正月でもない、5月18日。
人々の憂さがマックスだった時ですね。ええ、あのトンデモが5月9日に大統領に就任して。
なんであれを、と憂鬱なことこの上なく。
とにかく悪党をぶん殴ってぶっ飛ばしたい。なにも難しいこと考えたくない。
大衆のストレスのはけ口として打ってつけの映画が、まさにドンピシャの時期に公開されたというわけです、ええ。
と書くとまるで私の主観かのようですが、多くの映画評論家が言っていたことです、念のため。(笑)
この映画、公開前に話題になっていたわけでも、露出が特に多かったわけでもないのに、ほんとに気付いたらあっという間に1000万超えていたんですよね。ものすごく密かに。(笑)

ちなみにこの『犯罪都市2』もフランチャイズ化されていて、既に4作目まで作られてます。
はやっ!(笑)

とはいえシリーズ3作目までは同じ監督で、4作目が新人監督さんなんですよね。
マブリーの魅力で3作目も4作目もヒットするであろうと信じてます。
問題は、悪役の悪役っぷりだけにかかっていると言ってもいいので。
本作ではNetflixのドラマ『私の解放日誌』で人気がうなぎのぼりのソン・ソックさんがとんでもなく怖い人を演じていて、そこも映画のメガヒットに大いに一役買いました。

というわけで、2022年、韓国で最も観客を集めた映画はマ・ドンソクさん主演の『犯罪都市2』でした。

振り返ってみると、なかなか2022年も韓国映画はバラエティに富んでましたね。
TOP10入りはしなかったものの、他にも話題作がいくつかあるので、またおいおい取り上げてみようと思います。

みなさまの食指が動きそうな作品はありましたか?

なにか面白そうなものが見つかりましたら嬉しいです。