みなさま、こんにちは。

いよいよ年の瀬も押し迫ってまいりましたね。
今日は2017年に公開された韓国映画総まとめを2度に渡ってお送りします。
まずは観客動員数TOP10入りした映画について、映画の感想を交えつつご紹介しようと思います。


まず、今年観客動員1000万人を唯一超え、1位に輝いたのは映画。








ソン・ガンホさん主演の『タクシー運転手』。
韓国で8月2日に公開され、累積観客動員数12,186,327名を記録。
去年の1位だった『釜山行き』(邦題:『新感染ファイナルエクスプレス』)の動員数を抜いて韓国映画歴代観客動員数9位にランクインしました。(統計は映画振興委員会12月26日付)

日本でも『タクシー運転手 約束は海を越えて』というタイトルで4月21日から公開になりますよね。

この映画は1980年5月、全羅南道の光州で起きた韓国軍による光州市民虐殺を世界に伝えたドイツ人記者と、彼を事件の現場まで送り届けたタクシー運転手の実話をベースに描いたヒューマンドラマです。

映画のモデルとなった実在の人物についても、少しご紹介しましょう。

5月18日、当時日本にいたドイツARDテレビ局のカメラ記者のユルゲン・ヒンツペーター(Jürgen Hinzpeter)さん。ニュースで市民軍と戒厳軍が衝突したとのニュースを見て翌日に韓国に飛び、身分を偽装して光州入り。光州市民に無差別に攻撃を加える身の毛もよだつ惨状を生々しくカメラに収め、衝撃的な出来事を全世界に知らせるのに大きな役割を果たされました。
その時実際に彼に同行し、ソウルから光州まで往復したタクシー運転手役をソン・ガンホさんが演じています。

自ら光州で経験した話が映画になるのを楽しみに待っていたユルゲン・ヒンツペーターさんでしたが、2016年1月、惜しくもこの世を去られ、「死んだら光州に埋めてほしい」との遺言より爪や髪の毛など身体の一部を国立5.18民主墓地に埋葬することになり、去年の5月16日、光州市と5・18記念財団が主催しての追悼式が行われました。

生前、「光州事件」の犠牲者を悼む国立5.18民主墓地に献花に訪れたユルゲン・ヒンツペーターさんは、こみ上げる感情を抑えることができなかったと、故人の夫人エーデルトラウト・ブラムシュテットさんが伝えています。
ユルゲン・ヒンツペーターさんがどれほど光州で犠牲になった人々に思いを馳せてきたのか窺い知れますよね。

実話をベースに描かれた映画、日本公開の折には是非多くの方に見ていただきたいです。
ソン・ガンホさんの他にもユ・ヘジンさんやリュ・ジュンヨルさんが光州市民として登場し、素晴らしい演技の競演を見せてくれています。


・・・・・・と、1位からこんなに詳しく書いていた日が暮れそうだと今気づきました。

2位からは飛ばしめでいきます。(笑)



第2位。

今年の1月18日に韓国で公開となった『共助』(邦題:『コンフィデンシャル 共助』)。
7,817,631名の動員を記録しました。









またしてもユ・ヘジンさんがここに。(笑)

ユ・ヘジンさん、今や人気映画に欠かせないですよね。
この映画も来年2月に日本公開を控えているので、多くの方が楽しみにされていると思います。

パッと見てわかる凸凹コンビ。
ストーリー自体は特に目新しいことはなく、北朝鮮からあるものを盗んで韓国に逃げた犯罪者を、南北の垣根を越えて捜査協力を行う中で繰り広げられる話を描いたもの。

ひとことで言えばヒョンビンさんのための映画ですが、アクションシーンにかなり迫力があるので、何も考えずに見るにはいい映画です。
なお、10月30日に不慮の事故で亡くなったキム・ジュヒョクさんが北朝鮮から逃亡した組織のリーダー役を演じています。


第3位は、まさかの『犯罪都市』がここでランクイン!









いやー、なんと3位ですよ!

この映画も既にGWに日本公開が決まっているのですね。
観客動員数は6,879,844名となっています。

R18指定映画としてはこの記録はウォンビンさんの『アジョシ』(628万人動員)を抜いて、歴代3位。ちなみにR18指定映画の1位は818万を記録した『友へ チング』、2位は740万人を動員した『インサイダーズ/内部者たち』です。

この映画、韓国での公開当時、そもそもこんなに観客を集めるとは誰も予想していなかったんですよね。なにしろ『南漢山城』と『キングスマン:ゴールデンサックス』の公開と同時期だったので、完全に影に隠れていたんです。
主演は本作品が初主演作になるマ・ドンソクさん。
強力なタッグを組むのはユン・ゲサンさん。
お二人とも、強力なチケットパワーを誇るタイプの俳優さんたちではないので、当初は「こんな映画がある」程度の軽い扱いだったのですが、蓋を開けてみたら驚きの数字となりました。

この映画は2004年と2007年に起きた「朝鮮族(韓国系中国人)」組織暴力団による凶悪事件を脚色したもので、ソウル市九老区加里峰にあるチャイナタウンを舞台にしています。

以前も書いたように、この映画は韓国のマイノリティである「朝鮮族」による凶悪犯罪を描いているため、彼らへの偏見を助長する恐れがあると憂慮する声が多く上がった映画でもあります。(過去記事はコチラ
映画を見れば、監督が決して「朝鮮族」全体を悪として見ているわけではないのはちゃんと伝わるのですが、ただでさえ偏見や差別、好奇の目にさらされやすいマイノリティ集団なので、残虐行為をものともしない反社会的な輩として描かれることについては、頭の片隅に警戒心を残しておいて損はないように思います。

偏見を助長するとの懸念を脇に置けば、鬼気迫る俳優たちの演技が本当に素晴らしいこの映画。本作品で青龍映画祭助演男優賞をチン・ソンギュンさんが受賞したのは、全く頷ける話です。
マ・ドンソクさんは、存在そのものがアイキャッチと言いたいくらい、その一挙手一投足についつい目を奪われてしまいますし、極悪人を演じたユン・ゲサンさんの常軌を逸した不気味さも相当なもの。
俳優の顔よりも内容一本で勝負した結果としての680万人動員、伊達ではありません。

ちなみにこの映画の監督である1971年生まれのカン・ユンソン(강윤성)さんは、なんとこの映画がデビュー作。
30歳から映画監督を目指して苦節17年、ようやくメガホンをとった数え47歳の苦労人です。

カン・ユンソンさん、この映画を3年かけて構想するも、投資が集まらず。
小さな服屋を営んで家計を支えてくれた妻にこれ以上負担をかけることはできないと悲壮な決断を下したカン・ユンソンさんは、店をたたみ、映画監督になる夢を諦めて夫婦で妻の叔母が住むスペインに。そこでこれからの人生設計を思案している最中、投資が決まったとの連絡を受けて半信半疑でソウルに戻ったというのですから、人生何がどう転ぶか分からないものですね。

初監督作品とは思えない映画のクオリティ。実は俳優たちも、「ここはこうしたらどうだろう」と意見を積極的に提案したそうで、経験豊富な俳優たちと初々しい監督という組み合わせが功を奏したと言えそうです。
損益分岐点は200万人だったそうですので、十分な利益を上げられて本当に良かったと、ただの観客ながらついお祝いを述べたくなってしまいます。(笑)



そして続く第4位は、『軍艦島』(邦題仮)。









ヒットメーカー、リュ・スンワン監督による本作の観客動員数は6,592,151名。

ファン・ジョンミン、ソ・ジソブ、ソン・ジュンギという名だたるスターをそろえ、当初1000万人作品になるのではとみられていた『軍艦島』ですが、700万人に届かない結果に終わりました。

この映画は日本による植民地時代、長崎県端島、通称「軍艦島」で炭鉱での強制労働を強いられた朝鮮人の実話から着想を得て作られ、太平洋戦争末期、軍艦島に炭坑夫として強制徴用された朝鮮人400人が決死の脱出を図るという内容になっています。

ただ、この映画は公開前からスクリーン寡占が批判を浴び、映画の評価以前のところで人々から大反発を受けてしまった不幸な作品でした。『軍艦島』のスクリーン数が2000に及んだことを、人々が快く思わなかったのです。
かねてより巨大映画資本によるスクリーン寡占問題が反発を買ってきたのですが、今回この映画はそのやり口を人々にモロに嫌われた格好となりました。
またもう一つ、この映画が思ったように動員が伸びなかったのは、この時代に朝鮮の人々が受けた苦痛をエンタメ化しすぎた点もさることながら、日本の支配層よりも、朝鮮人で侵略者の側についた人々の悪行に焦点を当てているためと言われています。

私自身はこの映画の持つメッセージを高く評価しているので、上記ような評価を残念に思っています。

映画がドキュメンタリーではないことは初めからわかっているので、歴史的事実をモチーフにしながらまったく違う出来事を想像の産物として描くこと自体は特に批判されるようなことではなく、批判されるとしたら想像の産物がどのようなメッセージを投げかけようとしているのか、どう歪曲したものになっているかに焦点を当てて見るべきだと思いますので。

この映画は、私の知る限り今のところ日本での公開は決まっていないようですよね。
多くの日本の観客がこの映画を見れる可能性がないのが残念ですが、リュ・スンワン監督のメッセージは明確で、この映画は最後に日本の人々に平和のメッセージを伝えています。最後のその一点を強調するためにすべてのシーンを作ったのではないかと私には思えるほどです。

ひとたび侵略や戦争が起これば否応なくあちらとこちらに隔てられ、人々はわけもわからず憎むよう仕向けられ、実際憎まざるを得ない事態に直面したりもします。そうした不幸を私たちはみな歴史的にも、現在的にも経験しているわけですが、私たち普通の人々が敵味方に引き裂かれないために何が必要なのかをリュ・スンワン監督は映画の最後に思いっきりソン・ジュンギさんのセリフやラストシーンでのセリフで投げかけています。
私自身はリュ・スンワン監督がこういう人だったのかと再発見し、非常に感動したのですが、監督が意味するところを多くの韓国の観客がくみ取れていないらしいことを知り、とても残念です。


・・・・・・この調子で書いていると、いつまでたっても終わりませんね。

まだ折り返しにも来ていないことに気づき、愕然としました。



サクサクまいります。(笑)

続けて、第5位。



第5位はパク・ソンジュンさんとカン・ハヌルさんの『青年警察』(邦題仮)。









あー、サクサクと言ったばっかりなのに、言いたいことが山ほどある映画。(笑)


この映画は韓国で8月9日に公開され、5,653,270名の動員を記録しました。

パク・ソジュンさんとカン・ハヌルさんが警察学校に入り、警察官になるまでの成長ストーリーをコミカルに描いたとても愉快な作品です。
・・・・・・と言いたいところですが、この映画も中国朝鮮族による人倫にもとる凶悪犯罪事件を、二人が成長する上での「材料」として登場させ消費しており、『犯罪都市』とはレベルの違う、より深刻な作り手の問題意識のなさを如実に見せています。

女性に対するセンセーショナルで非人間的扱いを描きながらも、そのこと事態に問題意識を持っているとは到底思えない軽薄さ。マイノリティ集団に対する差別的な視点をむき出しにしたままの、主人公の「成長物語」の材料に落とし込む考えなしのプロットが、いかに罪深いことか。
この映画は、あまりに中国朝鮮族の人々を悪魔的に描いているため、朝鮮族の人々から上映中止の申請が出されたほどでした。
キム・ジュハン監督は抗議の声に、「朝鮮族の方々を傷つけたのなら謝りたい」と述べているので、今後の作品を注視したいと思います。
批判の声に真摯に耳を傾け、今後の作品作りにいそしんで頂きたいと切に願うところです。



・・・・・・サクサクですよね。はい、サクサク。(笑)



第6位。









やっと来た~! なにも文句のない映画!(笑)


ハン・ジェリム監督の『ザ・キング』(1月18日公開)が6位にランクインです。
この映画は5,317,383名と、思った以上にスコアが低め。
楽しく映画を見た私としては、せめて600万人は超えて欲しかったです。

チョン・ウソンさんとチョ・インソンさん主演のこの映画については、以前もコチラの記事で取り上げています。

『ザ・キング』は日本でも来年3月から公開されますよね。

韓国現代史までずらずら~とおさらいできるシーンがあったりする、コミカルで漫画チックな演出が功を奏した映画でした。
個人的には、やっぱりリュ・ジュンヨルさんはチョ・インソンさんと同い年に見えないですが・・・・・・。(笑)



第7位は、なんときちゃいました、この映画が。










『神と共に―罪と罰』(邦題仮)。

いやー、どういうことでしょう。12月20日に公開されたばかりなんですが、既に500万人超えの5,201,906名。
1週間でこの数字は、これは届いちゃうかもしれませんね、1000万。

今まさに熱く上映中のこの映画ですが、見てきた人の評価は結構分かれてもいて。
私も早く見に行かねばと思っているところです。
この映画、R12指定がやはり効いている気がしますよね。
年末は、子どもと一緒に映画でも。な大人向け。(笑)



そして8位も食い込んできました、ヒョンビンさんの『クン』(邦題仮)。








こちらの映画は11月22日に公開、現在も劇場は少数ながら上映中なので、上記同様12月25日付で4,017,417名の観客動員となっていますが、最終的にはスコアが微増しそうです。
日本にも来年頭に入って来るらしいですよね。
この映画については、以前予告編を取り上げています。(記事はコチラ

私もさっそく見てみたのですが、映画を楽しみにしているヒョンビンさんファンのみなさまに恨まれそうなので、感想は述べないことにします。

って書いたら、恨まれそうなことを思ってるってバレバレですよね。
すみません!(笑)



そして9位は、この映画がランクイン。









イ・ビョンホン×キム・ユンソク×パク・ヘイル主演の『南漢山城』。

10月5日に旧盆連休に向けて公開されたこちらの映画のスコアは3,848,842名。

人々の予想に反し、同じ時期に公開された『犯罪都市』にまんまと観客を取られ、意外にも400万に届かない観客動員となりました。
こちらの映画も来年の日本公開が決まっているそうです。


この映画が描いている歴史背景は、時期としては『最終兵器 弓(邦題:『KAMIYUMI』)』が描いているのと同じ「丙子胡乱(병자호란/へいしこらん)」。
1636年12月、「丙子(へいし) の役」で清の攻撃を避け、王と朝廷が南漢山城へ逃げ、外へ出ることも攻撃することもできない孤立無援の状況の中で繰り広げられた1636年12月14日から1637年1月30日までの47日間を描いた時代劇で、国がとるべき道について二人の異なる立場の官僚が王を前に論戦を繰り広げる内容となっています。

一時の恥辱に耐え、王と百姓の命を守るべきという信念を手放さない主和派チェ・ミョンギルにイ・ビョンホンさん、清と最後まで戦い、大義を守るべきと主張する主戦派キム・サンホンにキム・ユンソクさん、二人の異なる「正論」の間で悩む王・仁祖にパク・ヘイルさん、山城の鍛冶屋役にコ・スさんというラインナップになっており、歴史小説家キム・フン(김훈)さんが2007年に発表した同名小説を原作にしています。

完膚なきまでに敗北を喫した戦いについて、アクションで彩ったり、「物語」で装飾することなく、ひたすら信念と価値をかけて論戦しあう二人の姿をさながら戦争そのもののように描いたこの映画。
映画を見終えた後、一冊のずっしりとした小説を読み終えたような重量感を残す、非常に厚みのある深い映画です。
ただ、歴史ものであっても「娯楽作品」に慣れてしまっている観客には、思っていたような楽しみを与えない、気難しい顔をした映画に映ったかもしれません。


そして最後10位の座を勝ち取ったのは、先日公開されたばかりのチョン・ウソンさんとクァク・とウォンさん主演映画『鋼鉄の雨』(邦題仮)でした。












12月14日に公開されたこの映画、3,589,936名の観客動員で、見事TOP 10入りを果たしました!

やはり12月公開映画は、強いです。(笑)


とはいえこの『鋼鉄の雨』も意外に潮が引くのが早く、早くも『神と共に』に観客を取られている様子。
その『神と共に』も、12月27日に公開となったもう一つのハ・ジョンウさん主演映画『1987』にまた取られそうな予感もあり。

なかなか激しい食い合いが見られています。(笑)



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ちなみに昨年も12月に公開された映画が2編、最後にTOP10入りを果たしています。
一つは『パンドラ』、もう一つは『マスター』。
いずれも12月29に付けで400万人台でしたが、最終的には『パンドラ』が4,584,803名と伸び悩んだのに対し、『マスター』は 7,147,924名。年が明けてさらに300万人の観客を獲得しているんですよね。700万人超えはかなりの数字です。

年末に公開される映画はヒットが見込まれるものが多いので、その年のTOP10映画には食い込めるものの、年をまたいで最終的なスコアを伸ばしてもあまり記憶に残らないところが、残念なところではあります。

2017年は1000万超えの観客動員を果たしたのは『タクシー運転手』のみでしたが、実話や歴史的事実、実在の人物をもとにした映画が多くTOP10入りしたのが特徴と言えそうです。
12月27日より公開となる『1987』も、1987年に実際に起きた民主化運動弾圧とその過程でのソウル大生拷問死を扱っており、こうした映画の傾向が2018年にも続くのか、注目したいところです。

(②に続きます)