みなさま、こんにちは。

本日は最終回を目前に、猛スピードで『チョンダムドンのアリス』15話をアップします。

では、早速まいります。

14話ラスト。

空港でスンジョをつかまえるセギョン。

自分のすべてを見るべきだとするセギョンにスンジョは冷たく言い放ちます。

「俺はもうすべて見た」

「何を見たんです? 愛に縛られたハン・セギョン? キャンディみたいなハン・セギョン? そうです。それも私だし、スンジョさんを利用しようとしたのも私です。でもいまは、真心も利用しているのかも、区別がつかないんです」

「そうさ、区別できない。それがたまらないんだ。6年ぶりに悪夢から覚めたのに、また同じ夢を見てるのか? もっとたまらないのは、なぜこれが夢じゃなく、現実なのかってことだ」

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セギョンのことを悪夢のような現実と称するスンジョの言葉を、つらい思いで聞くセギョン。立ち去ろうとするスンジョにセギョンはなおも話しかけます。

「私は、ソ・ユンジュじゃありません。私は絶対に逃げません。スンジョさんも絶対に逃げられません」

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スンジョを引き止めるのに成功した様子のセギョンを見て、笑みを浮かべるタミー・ホン。

セギョンはスンジョの腕をとり、強引に引っ張っていきますが、スンジョはその手を振り払います。

「よせ。こんなことしたって、何も変わらない」

「スンジョさんが死ぬって。悪いことが起きるんじゃないかって、皆が心配してます」

その言葉に驚くスンジョ。

「死ぬ? 誰がそんなことを? ソ・ユンジュか?」

「トンウクさんも、お父様も」

「父が?」

セギョンは頷きます。

「誰が死ぬもんか。何があったから、死ぬっていうんだ?」

「私もそう思います。スンジョさんはこんなことで簡単に死ぬような人じゃありません」

「そうさ。死なない」

「でも、じゃあなぜ皆そう思うんだと思います?」

「みんな大袈裟なんだよ」

「スンジョさんが望むからじゃないんですか? スンジョさんが望んだことだし、望みどおりになってるんじゃないんですか?」

「どういう意味だ?」

「関心を引きたいから。具合の悪いふりをする子どもみたいに。スンジョさんが精神的な問題があるって話も、仮病でしょ?」

「なんだと? 関心? 仮病だ? 俺をガキだと思ってんのか?」

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「そう、子どもじゃないですよね」

「違うに決まってんだろ」

「なのになぜ逃げるんです?」

「誰が逃げたんだよ?」

「そうじゃないですか。いつも大事な瞬間に逃げるでしょ?」

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「俺がいつ?」

「スンジョさんの癖なんです。現実逃避」

「違うって言ってんだろ! お前に会いたくないから行くんだよ! お前と同じ国にいるのが嫌だから!」

セギョンから予想外の指摘を受け、ムキになるスンジョは、声を荒げます。

「じゃあ、約束を守ってください」

「約束って?」

「スンジョさんが死ぬのは、私が去った時だけでしょ?」

まさかのプロポーズの言葉を繰り出すセギョンに呆気に取られるスンジョ。

「去ろうが去るまいが、死ぬもんか!」

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大声を上げ、苛立ちを募らせるスンジョ。

その時駆けつけたトンウクとムン秘書。

「会長、大丈夫ですか?」

「大丈夫か? なんともないんだろ?」

心配する二人の姿に面食らうスンジョ。

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「なんだよ、大袈裟に。俺はなんともないよ」

「なんともない? お前のせいでどれだけ皆が肝を冷やしたと思って」

トンウクの言葉にスンジョは苛立ちを見せます。

「なんで勝手に肝を冷やすんだよ! 大袈裟に騒ぐな」

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そんなスンジョを見守っていたセギョン、「それが嫌なら、逃げるのやめてください」と冷静に言葉をかけます。

「違うって言ってんだろ! やたら逃げるとか言うなよ!」

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「分かった、分かった。逃げるんじゃないって分かったから、とりあえず俺と話そう」

なだめるトンウクにも苛立ちを隠せないスンジョ。
渋々トンウクとムン秘書に連れられて、空港を出ます。

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空港で車に乗せられるスンジョを見届けるセギョン。

一人になったセギョンに静かにタミーホンが声をかけます。

セギョンを同情一杯にみつめるタミー・ホン。

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その視線にセギョンは一瞬戸惑いを覚えます。

車の中でも不機嫌極まりないスンジョ。
気にしてトンウクが声をかけますが、スンジョに噛み付かれる羽目に。

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「いつから知ってたんだ?」

「俺も今日お父さんに聞いたんだよ」

「なに? 父から? ムン秘書は? いつから知ってたんだ?」

「僕はちょっと前にホ博士に聞いて・・・」

「なんだよ? 俺以外は皆知ってたのか? 俺のことを危ないって言ったのか? だからハン・セギョンがああなのか?」

「なにも話してないよ。何日か前に色々聞かれたから・・・・・・。
なあ、スンジョ。とりあえず俺がセギョンさんに会って・・・・・・」

「いや。何もするな。俺の話もするな。絶対何もするな」

頑ななスンジョを心配げに見つめるトンウク。

セギョンはタミー・ホンの車で送ってもらいながら、明日スンジョを訪ねて行くと話します。

「行ってどうするんです?」

「スンジョさん、私に聞きたいことが色々あると思うんです。なんであれ、全部答えないと」

「何も聞かないかも知れませんよ。聞くのもつらいだろうから」

「それでも毎日行きます」

その言葉にため息をつくタミー・ホン。

「なんで俺は、セギョンさんにこの辺でやめて欲しいと思っちゃうんでしょうね。昔、すごく好きだった女がいたんです。お互い随分好きでしたが、別れました。俺から」

「どうしてです?」

「あまりにも、色んな物を見すぎて。いいところも、醜いところも」

「どういうことか、分かります。私もそれで別れたことがある。分かりますけど、人って変わらないでしょ? 私はこのままでは終われないんです」

セギョンを案じながらも、どうにもしようがないタミー・ホン。

そしてユンジュは。
空っぽになったクローゼットに佇んでいました。

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自ら追い出される日のための整理をするユンジュです。

そしてスンジョは。

家に付き添ってきたトンウクにまた声を荒げていました。

「来ることないって! 帰れってば!」

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家では父親が心配して待っていました。

「なんです? なぜここに?」

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止めるトンウクの言葉も聞かずに父親に悪態をつくスンジョ。

「僕を笑いものにするために? なるほど、知ってたんだから、いままで散々笑ってたんだろうな。全部知ってたくせに、なぜ隠したんです? 俺の間抜けなザマを見るため?」

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ため息をつきながら息子の言葉を聞くチャ会長。

「スンジョ。どうってことない。過ぎてしまえば、どうってことはないさ」

慰めようとする父の言葉にムキになるスンジョ。

「別に何も言ってないでしょ? 帰ってください。僕は大丈夫だから」

スンジョはトンウクにも帰れと言います。

「もう行けってば!」

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追い出されるトンウクとチャ会長。

「ご心配なさらないで下さい。僕が注意してみておきますから」

チャ会長はどうやって引っ張ってきたのかと尋ねます。引っ張ってきたのではなく、自分の意志で帰ってきたのだとトンウク。

「自分で?」

「セギョンさんと大喧嘩してたんですよ。そして自分から空港を出たんです」

その言葉に、何かを考え込む会長。

一人になったスンジョは、つらそうに横たわります。

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スンジョさんが死ぬのは私がいなくなった時だけだと言ったセギョンの言葉を思い出し、「まったく呆れる」と体を起こすスンジョ。
セギョンにもらったぬいぐるみを見つめます。

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一方セギョンの家では。
セギョンがスンジョを利用しようとしたことを両親がアジョンから聞かされていました。

家に帰ったセギョンは、母親に責められます。

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セギョンに謝られ、頭を抱えてふらつく母。

「お前、本当にセギョンなの? どうしてあんたがそんなことを? どうしてそんなことしたの?!」

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泣きながらセギョンを叩く母。

父は屋上で落ち込んでいました。

「お父さん。ごめんなさい」

「全部私のせいだ。私を見ていたら、希望をもてる筈がないからな」

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悲しそうな父に、余計に胸の詰まるセギョン。

「どうしてお父さんは、何でもお父さんのせいにするの? 死ぬほど頑張ってもこういう暮らししかできないのが、なんでお父さんのせいなの?」

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「じゃあ、誰のせいだ? チャソバンに何の罪がある?
これは本当にひどいぞ、セギョン。どうしてあんなにいい人の胸に、釘を打ち込むような真似をしたんだ?」

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返す言葉もないセギョンはただうつむきます。

そして。
落ち着きなく自宅を歩き回るスンジョは、何かを考えています。

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大学の作業室でウサギのぬいぐるみの説明をするセギョンを思い出すスンジョ。

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「あれはなんだったんだよ?」

名前を尋ねたセギョンのことも思い出します。

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「あれは?」

そして別れ際に、礼を言ったセギョンも思い出し。

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「あの時のはなんだったんだ?」

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色んなセギョンを思い出し、いつから何がどうだったのかをスンジョは確認しようとしていました。

思い出される、空港での言葉。
『でも、いまは真心も利用も、区別がつかないんです』

スンジョはノートを出すと、ムン秘書に電話をかけ、アジョンから聞いた話の中身について確認します。

ハン・セギョンがキム秘書のこと好きだと言ったのがいつの何時何分かと尋ねるスンジョ。

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ムン秘書は12月24日の午前1時から2時の間だったと答えます。

「会長。実はあの時言えなかったことがあるんですが」

「なんだ?」

「実は・・・・・・」

「ちゃんと話せ。今からは、ちゃんと話さないやつはただじゃおかないぞ」

「ハン・セギョンさんがキム秘書のこと好きだというので、キム秘書が会長だと話したんです」

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探偵のように目の色が変わるスンジョ。

「確かか?」

「はい」

「12月24日の午前1時から2時の間に話したんだな? パーティの前日? わかった」

ノートにメモを取りながら、一人合点するスンジョ。

「ハン・セギョン。尻尾をつかんだぞ」

スンジョはメモを取った紙を破くと、立ち上がります。

セギョンの部屋では。

アジョンが毎日スンジョに会いに行くというセギョンを止めていました。
喧嘩になろうとも、毎日スンジョに会いに行くとセギョン。
アジョンはいまはそっとしておいたほうがいいのではないかと言います。女が追うと、男は逃げると。
それでも自分にはこの方法しかわからないと言うセギョンに、そのしつこさが問題なのだとアジョンは呆れます。

「それでなくても、今あんたの顔見たいと思う?」

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「会ってくれなくても、明日の朝に会いに行く」

その時、セギョンのドアを激しく叩く音が。

アジョンが開けると、そこにいたのは、スンジョでした。

「区別できない? 何ができないんです?」

ちぎってきたメモを突き出すスンジョ。

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「2012年12月24日、ムン秘書がチェ・アジョンに知らせただろう? キム秘書が会長だと。そうだろ、証人?」

静かに部屋に逃げるアジョン。

「思い出したでしょ? ムン秘書が知らせたんでしょ? ちょっと出てきてくださいよ! 出てきて話しなさいよ!」

二人っきりになるスンジョとセギョン。

「なるほど、胸が痛むってわけだ。間違いないな。この日から作戦を始めたんでしょ? 僕が会長だと知って25日に手紙を書いた。キム秘書が好きとか何とかいう内容で。そのあと病欠届けを出して、わざと僕に探し回らせて、そのあとは、会長と私は遠すぎる? 憎ったらしいったら」

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「違うけど」

「違う? 状況がこんなに揃ってるのに、なにが違う?」

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「12月24日夜のはるかに前からです。スンジョさんが私の時計ウサギになったのは」

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「と・・・・・・? ウサギ?」

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「時計ウサギです」

「また、なんなんだ、それは?」

「不思議の国のアリス、見たことありません? そこではアリスが時計ウサギの後を追って入っていくでしょう? 私みたいな人がチョンダムドンに入るには、時計ウサギが必要だっていうから」

その言葉にスンジョは呆れます。

「都合のいい言葉だな。分かりやすくいえば、利用する人が必要だった?」

「はい」

「だからあんなに会長に会おうと躍起になってたわけだ?」

「はい」

「貧乏なキム秘書は切って?」

「はい」

「利用だけして?」

「はい」

「好きだって言ったじゃないですか! キム秘書が好きなんでしょ? それも作戦だったんですか?」

スンジョの目には、いつしか涙がたまっています。

「チェ・アジョンがムン秘書に伝えて、ムン秘書が僕に伝えたのも?」

「違います」

「嘘つくな。その前から時計ウサギがどうのとやってたんでしょ?」

「信じなくても、いいです。会長だって知る前にキム秘書のことが好きだったのは、本当です」

「なのになぜ切ったんです? キム秘書は貧しいから? セギョンさんは本当にそんな人だったんですか?」

どんどん大きくなるスンジョの声。

「そうです。キム秘書のことが好きだったのも私だし、キム秘書を切ったのも私です。会長だと知ってもっと好きになったのも私だし、それでもキム秘書のことが先に好きだったから、良心のアリバイはあると自分を慰めたのも私です」

「で、いまは好きなのか利用してるのか、区別がつかない?」

「ええ」

「その言葉が一番たまんないよ。なんで区別がつかないんだよ? 自分の感情が分からないのか?」

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「スンジョさんは、どうして自分の感情を信じられないんです? キム秘書の時も、会長の時も、私に愛されてたこと、スンジョさんは分かってたでしょう? スンジョさんが一番よく分かってるじゃないですか」

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「いいや。分からない。分からないよ。
そしていまは、ハン・セギョンが分からない」

セギョンはため息をつきます。

部屋に戻るセギョン。部屋ではアジョンが心配しながら待ち構えていました。

アジョンはセギョンに、これはいい兆候ではないのかと言います。
スンジョが自分で訪ねてきたということは、スンジョもこのままセギョンを手放したくないと思っているのではないかとアジョン。

セギョンは「そうかな?」と確信を持てずにその言葉を受け止めます。

車に乗り込んだスンジョは、メモを見つめます。

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「これよりずっと前? じゃあ、いつだ?」

また記憶を辿り始めるスンジョ。

会長に会わせろと詰め寄られた日。
キム秘書を通じて会長の仕事をするのをやめたいと言われた日。

12月24日のずっと前にスンジョが時計ウサギになったとの言葉をまた思い出します。

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「時計ウサギってなんだよ?」

一人呟くスンジョです。

翌朝。

セギョンは会社に出社する前にスンジョに会ってくるとアジョンに伝えます。

会社は大丈夫だろうかとのアジョンの言葉に、しばし社員証を見つめ、大丈夫なはずがないと答えるセギョン。

「頑張れ。会長になんて言われても、絶対ビビらずに」

「うん。ビビらない」

その時、再びドアを叩く音が。
朝からスンジョが訪ねてきたのでした。

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「時計ウサギ? 実にシンボリックだこと。ほんとに緻密だな。いつからなんです、僕が時計ウサギだかなんだかになったのは」

セギョンの顔を見るや、いきなり問い詰めるスンジョ。

「”チャンスじゃないですか。つかみなさいよ。ハン・セギョンさんにとって一世一代の幸運なのに、どうしてまず断ろうと思うんです?”って言われた時からです」

淡々と答えるセギョン。

「つかめと言われたときに、つかんだんです」

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呆れるスンジョ。

「じゃあ、スタイリストをはじめた時から?」

そうだと答えるセギョン。

「ああ、やっと分かった。ぬいぐるみ。百問百答。そんなこととも知らないで・・・・・・」

スンジョは箱に入れて持ってきたぬいぐるみを一つつかみ、セギョンに見せます。怒ったようにそのぬいぐるみを奪うセギョン。

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「あの時からかな? いや、あの時から? あの時のはなんだったんだろう? この時のは? 夜通しそればかり考えたんでしょ?」

言い当てられ、ぎくりとするスンジョ。

「分かりました。そんなに辛いんなら・・・・・・」

セギョンは箱を持って歩き出します。行ったのは、ゴミ収集箱の前でした。

捨てるつもりなのかと言うスンジョに、スンジョにとって意味がないものなら、自分にとっても意味がないとセギョンは答えます。

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「本当に意味ないの? これをくれながら、僕に名前を聞いたでしょ? あの日初めてありがとうって言ったじゃない」

「だから?」

「本気だったんですか、違うんですか? 本気だったでしょ? そうでしょ?」

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セギョンの愛を確かめようと切実なスンジョ。
でもセギョンはスンジョの望む返事をしてくれません。

「スンジョさんはそれが問題なんです」

「問題? 僕が?」

「スンジョさんが聞きたいことばかり聞き、見たいものばかり見ようとするじゃないですか。そのせいで人をちゃんと判断できない。人をちゃんと見れない人が、どうやって人を愛せるんです?」

「愛?」

「ええ、愛です。私はスンジョさんをちゃんと見ました。幼稚でガキっぽいところも、全部。だから、スンジョさんももう私を見て。ハン・セギョンをスンジョさんの幻想の中ではなく、現実の中で見てって言ってるんです」

セギョンはそういい残すと、そのまま去ってしまいます。

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その背中を見送り、ウサギを持って帰るスンジョ。

車に乗り込み、「幻想?」と呟きます。

セギョンの通帳をみて涙を流した日を思い出すスンジョ。

「まさか?」

スンジョは歩くセギョンを車で追いかけ、呼び止めます

「これは? これも幻想なんですか? これだけは絶対に知りたいんです」

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手紙をかざしながら答えを要求するスンジョ。
あまりのチジリぶりに、視聴者も若干笑いがこみあげます。(笑)

黙って車に乗り込むセギョン。

「全部知りたいんでしょ? 話します」

セギョンはそう言って、ソ・インチャンと別れた公園にスンジョをつれてきました。

「ここでソ・インチャンと別れたんです。その手紙、確かに幻想です」

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「ソ・インチャンを助けるために書いたものじゃないですか」

「捨てるために書いたんです」

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その言葉に驚き、セギョンを見つめるスンジョ。

「なぜ?」

「ソ・インチャンにとっては、傍にいないほうがいい人間だし、会社ではデザイナーとして使えない人間だし。あの時のハン・セギョンは、世界のどこからも、誰からも、求められない人間でした。いっそのこと、自分を全部捨ててしまおう。私の人生は自分以外の人が私を助けてくれればいい。そう思ってチョンダムドンに入りました」

「で。セギョンさんの人生を救ってくれる人が、僕だった?」

「はい。スンジョさんは、私の必要なものをすべても持っている人だったから」

軽蔑したような笑みを見せるスンジョ。

「それで結局、貧乏のために男を捨てて、金を持っている男を見つけた。そのうち、本当に好きにもなり、利用したくもあった」

はいと答えるセギョン。

「それで。いまも手放したくない?」

「私の人生、本当にスンジョさんが助けてくれると思ってました。でも、私がスンジョさんを救ってくれって。私にスンジョさんを守ってくれって。私がスンジョさんの家で、すべてだって。私がいなければ、スンジョさんは駄目になるって。世界のどこからも、誰からも必要とされなかったハン・セギョンがです」

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「自分をすべて捨てたのに、スンジョさんがまた取り戻してくれました。スンジョさんは、私にとってそういう人です」

涙目で気持ちを伝えるセギョン。

去っていくセギョンを涙で見送るスンジョ。

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スンジョと分かれたセギョンはチャ会長から電話を受け取り、会いに行きます。

「スンジョと完全に分かれなさい」

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「できません」

「なに?」

「会長はスンジョさんが事実を知ったら、大ごとになると仰いました。でも、なにも起きませんでした」

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「あいつの気持ちが、お前に分かるのか!」

会長は声を荒げますが、セギョンはひるみません。

「なんでも隠して、スンジョさんを弱いと言わないでください。スンジョさんが気弱なのは、会長のせいでもあるんです」

「なにがわしのせいだ? 図々しく人のせいにしおって」

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「スンジョさんが本当に気が弱いわけじゃなく、会長の基準でスンジョさんを弱いだの、出来が悪いだの仰ってるんじゃないですか。スンジョさんは自分なりに会長の基準に合わせていってるんです」

「わしの基準とは?」

「経営です。後継者になることです」

「後継者になるつもりがあるのか? 自分の好きなことばかりして暮してるのに」

「やりたいことだけをやっていたなら、絵を書いて暮らしていたでしょう。なのに、なぜアルテミスに入ったと思いますか、絵を描かずに? 美的才能と経営をマッチングさせたんです。アルテミスはファッションの会社です。美的感覚なしに、可能だったでしょうか?」

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「美的感覚?」

「スンジョさんの好きなことを、一度だけでも認めてください。それと、別れるかどうかは、私たちに決めさせてください。そうなさるべきです」

「どうするつもりだ?」

「スンジョさんと二人で別れることに決めたら、その時は別れます。でも、ユンジュが逃げたように、会長が追い払ったように、そしてスンジョさんが逃げたようには、私は終わらせたくありません。私はスンジョさんを愛しています」

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セギョンの真摯な言葉を真顔で受け取めるチャ会長です。

セギョンと分かれたあと、車の中でセギョンの言葉を思い出すスンジョ。

『自分をすべて捨てたのに、スンジョさんがまた取り戻してくれました』

セギョンが会社に着くと、机の上に荷物がまとめてありました。

チーム長の指示なのでしかたがないとキム代理。

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セギョンは頷き、箱を抱えて静かに出て行こうとします。

その時やってきたイナ。

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「セギョンさんも居づらいだろうし、こちらもやりづらいので、分かってね」

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セギョンは頷きます。

「考えてみたら、とんだ悪縁でしたね。うちは数千億規模の仕事が頓挫したし、セギョンさんはすべてばれちゃったから。でも私は、ビジネスを駄目にしてまで正義を実現しなければいけなかったんです。それが正しい世の中だから」

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その言葉に笑うセギョン。

「とりあえず、私とは全然違って見えた、雲の上の人みたいだったチーム長が、私と同じ人間だと分かって、嬉しいです。あの事業、諦めたご様子ですね。不本意ながら申し訳ないことになりました」

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去ろうとしたセギョンは、足を止め言葉を続けます。

「私はまだ、諦めてません。スンジョさんのこと。
スンジョさんにも諦めさせませんし」

会社にやってきたユンジュ。

夫と話し合います。

「なぜ呼んだんです?」

「君に最後のチャンスをあげる。アウトレット事業、諦められない。数千億規模だ。どうやってでも成功させないと」

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「それで?」

「チャ・スンジュを捕まえてこい」

「はい?」

「アウトレット事業はチャ・スンジョに掛かってるだろ? 君はうちで唯一、チャ・スンジョとラインがある。まあ、さほど愉快なコネクションではないがね」

夫の提案に呆れるユンジュ。
夫はユンジュの働き次第で処遇を決めるのでよく考えてみろと言います。

「君もいままで俺とのことビジネスだったんだろう? 俺も君のおかげで自分のビジネスをひとつ成功させてみようってわけさ。俺の望むビジネスができるなら、君の望むビジネスも続けられるだろう?」

ユンジュの目には見る見る涙がたまります。

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「こんなふうに罰を与えるんですか?」

「罰? 取引だよ。ビッグディールだと思わないか? 勿論、君の人生に数千億の価値があるとは思わないが、利益の出る商売だ。しっかり計算してみろ」

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エレベーターで顔を合わせるセギョンとユンジュ。

箱を持つセギョンに追い出されたのかとユンジュが尋ねます。
そうだと答えるセギョンに、自分はまだだとユンジュ。

「どういう状況か分からなかったから、電話できなかった。ごめんね」

「大丈夫。幸い、追い出されるかどうか、選択権ができた。
チャ・スンジョはどう?」

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「逃げられないようにした。私も逃げない」

「そう。それはよかった」

元気のないユンジュを案じるセギョン。

スンジョは車の中で何度もセギョンの言葉を思い出していました。

『あの時のハン・セギョンは、世界のどこからも、誰からも、求められない人間でした』

インチャンのためにセギョンが書いた手紙を読み返すスンジョ。

『私がいなければ、スンジョさんは駄目になるって。世界のどこからも、誰からも必要とされなかったハン・セギョンがです』

スンジョはセギョンの元へと車を走らせます。

会社を出たセギョンは、タミー・ホンからの電話を受け取ります。
既に会社をクビになったことを知っている、相変わらず情報通のタミー・ホン。

「僕もいま、ショップを何箇所か引き上げるところです」

「GNが手を回したんですか?」

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「そういうことですよ。でも、いい知らせもあります。
縁談の依頼がパッタリこなくなりました。終わりましたよ。これでいいんです。マダム・トゥをやめるのが望みだったから。いまどこです?」

会社の前まで来たスンジョ。

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電話をしようか迷っているところで、目の前にセギョンを見つけます。

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ところがセギョンは、なんとやってきたタミー・ホンの車に乗せられ。

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助手席にセギョンを乗せながら、セギョンの背中に手を添えるタミー・ホン。その顔には笑みが。

ドレスショップに駆けつけたタミー・ホンを思い出すスンジョ。

スンジョはタミー・ホンとセギョンの後を追います。
ブティックに入っていく2人を射るように見つめるスンジョ。

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オフィスで向かい合い、セギョンはタミー・ホンに尋ねます。

「後悔してません?」

「してますよ。めちゃめちゃ。実はソ・ユンジュさんが訪ねてきて、言ったんです。なぜそんなバカみたいな提案を受けたんだって」

「ユンジュが?」

「ええ。僕もソ・ユンジュさんも、セギョンさんみたいに純真な人間じゃないから」

「自分ではカッコよく説得したつもりだったんだけどな」

その言葉に吹き出すタミー・ホン。

「まあ、カッコよくはありましたけどね。人がそんなものにほだされると思います? ドラマでもあるまいし。あれからかなり後悔してますよ」

「でも、なぜ後悔してないような顔してるんです?」

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「これ、後悔してる顔なんですけど?」

まったくもってすっとぼけたようなタミー・ホン。

いけない、こんなところでちょっとキュートです。(笑)

「チャ・スンジョはどうです?」

「努力中です」

「本当に毎日訪ねて行ってるんですか?」

首を振るセギョン。

「行けませんでした」

「なぜ? 迷ってるんですか? 諦めるつもりですか?」

「私が訪ねていく前に、スンジョさんが先に訪ねてきたんです」

その言葉に呆れるタミー・ホン。

「ほんと、努力してるな。チャ・スンジョ」

独り言のように呟くタミー・ホンです。
ああ、遅れてきたラブラインがもったいない。(笑)

スンジョはブティックに車を止めたまま、セギョンが出て行く姿を見届けます。

セギョンの背を見つめるタミー・ホンの優しい目つきに怒るスンジョ。

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スンジョはその足でタミー・ホンに会いに行きます。

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「タミー・ホン。ハン・セギョンは何者ですか?」

「はい?」

「何者かと聞いてるんです」

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「それは、会長のフィアンセ・・・・・・」

「タミー・ホンのまとめていた縁談をぶち壊した張本人じゃないのか? 私をパトロンにしていると誤解したし。ところが、なぜあの人がここに出入りを? 随分仲良さそうに見えたけど。箱を持ってあげてたし、ドアを開けてあげてたし、それに、入る時にそっとこう、背中を・・・・・・」

タミー・ホンがセギョンのセギョンに手を添えていた光景を思い出すように、怒りながら自分の手を見つめるスンジョ。

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視聴者思わず爆笑。

ああ、この展開があと2回前にあったなら。(笑)

「一体どうなってるんだ?」

「僕がハン・セギョンさんに手を貸していると言ったら、理解されますか?」

「助ける? なにを?」

「セギョンさんがチョンダムドンに入るのをです」

「一体全体あなたたちにとってのチョンダムドンって、なんなんだ? なにをどうやってハン・セギョンを助けると? そしてなぜ?
まったく、なんでこんなにひとつも理解できないことばかりなんだ?」

ため息をつくタミー・ホン。

「会長・・・・・・」

「ちょっと待って。タミー・ホンがもしかして、目覚ましウサギか?」

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「・・・・・・はい?」

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「目覚ましじゃなかったっけ? ほら、あの、不思議の国のアリスに出てくる・・・・・・」

「ああ、時計ウサギですか?」

「そう、その時計ウサギ。私を時計ウサギにしろとコーチしたのか?」

「はじめから手を貸していたわけではありません。仰るとおり、僕は会長とシン・イナチーム長の縁談をまとめていましたし、ハン・セギョンさんは、邪魔だったので」

「それで?」

「あの動画は、僕がつくったんです。でも、通用しませんでした。ご存知でしょう、ハン・セギョンさんの粘り強さと努力と、ハンパじゃない強情を」

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思わず笑みがこぼれるタミー・ホンに敏感に反応するスンジョ。

「ハン・セギョンのなにを知っているからって、大口叩く?」

「ええ、僕は何も知りません。でも、ひとつだけ知っています」

「なんだ?」

「ハン・セギョンさんの気持ちは、本物です。会長には、どんなに努力しても崖っぷちに達人の気持ちが分からないというのも、分かります」

「崖? 崖っぷち? 俺も何度も崖っぷちに立ったさ。俺のなにが分かる? こんな俺が理解できないということは、俺じゃなく、あなたたちが間違ってるんだよ」

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そういい残して去っていくスンジョ。

スンジョがきたことを早速セギョンに電話で報告するタミー・ホン。
どうやら二人でいるところを見られたようだと告げます。
本当のことを喋ってしまったとすまなさそうなタミー・ホンに、セギョンはそれでいいと答えます。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。訪ねてくると思います」

まさにその時ドアを叩く音が。

「きました。切りますね」

電話を切り、セギョンは屋上でスンジョと話します。

「今度は何が知りたいんです?」

「いつからだ? いつから、ソ・ユンジュが昔の恋人だと知った? 動画があるのはいつから? 答えろ」

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「スンジョさんがUSBを送った日、あろうことかソ・ユンジュが昔の恋人だと知りました。それで告白できませんでした。
そしてまたこともあろうにスンジョさんが私にプロポーズした日、動画が転送されてきました。タミー・ホンの脅迫でした。でも負けたくなかったんです。それでプロポーズを受けました」

「なぜ? なぜそんな脅迫されてまで、諦めなかったんだ? そんなことをしてまで、君らの言うチョンダムドンに入ってこなきゃいけないんだよ?」

苛立つスンジョ。

「私も愛だけで生きたかったです。愛し、愛されて、愛だけで。でも、愛だけでは生きられませんでした」

「言い訳を言うな。愛が一番手に入れられない人もいるんだ!」

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「私は世の中が一番つらかったんです。スンジョさんは愛を信じたがっていたけど、私は世の中を信じたかったんです。どんなに一生懸命努力しても貧しいのは、絶対にお前のせいじゃないと言ってくれる世界は、なかったから」

「貧乏は特権階級か? 貧乏だったら、人の心をもてあそんでもいいのか? 貧乏と愛に、何の関係がある? 貧乏は特権階級じゃない。俺だって同じように経験してきた。
俺だって寝るところも食べるものもない中で耐えてきたんだ。そしてここまできたんだ。貧しさ? 言い訳を言うな!」

「スンジョさんには幸運があったでしょ」

「幸運?」

「絵のことです。そういう幸運、誰にでもあるもんじゃないんです」

「あれが幸運だったと? どこのバカが何の価値もないものを3万ユーロで買うっていうんだ? 3万ユーロの価値があるから買ったんだ。なぜそれを幸運だなんておとしめる?
いや、それでもいい。もし幸運だったとしたって、あんなひどい状況の中で一生懸命頑張ったおかげで、世界が対価として与えてくれたんだ」

「スンジョさん。私たちにはそんな世の中にはなかったんです。一生懸命生きていればすごいことが起きる世界なんて、一度も経験したことないんです」

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「じゃあ、俺が運がよくて助かって、運のおかげでここまできたって言うのか?」

「生まれつきの運を、引き継いでるんでしょうね」

スンジョはその言葉に興奮します。

「生まれつき? 俺が自分一人でどうやってここまで来たか、知ってるじゃないか」

「スンジョさんは幸運を信じられる人だからです。でも、私は幸運なんてたやすく信じられない人間なんです」

「そんな負け犬の言うセリフは、やめろ!」

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スンジョはたまらず大声を上げます。
その言葉に傷つくセギョン。

「じゃあスンジョさんも、どんなに努力しても貧しいのは、その人のせいだと思うんですか? どんなに努力しても貧しいのは、単にその人が愚かだからだと思ってるんですか? どれほどジタバタあがいても貧しいのは、自分が自分の人生を失敗したせいだと言ってるんですよね?」

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「・・・・・・そうだな」

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涙ぐむセギョンは言葉をなくし、部屋にもどってしまいます。

ドアの前に立ち、ドアを叩こうとするスンジョ。
中ではセギョンが泣いています。

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その声を背中で悲しく聞くスンジョ。

埋められない、恵まれた者と持たざる者との世界を見る視線。そこで与えられてきた経験と実感。
スンジョと絶望的に分かり合えないことを痛感し、涙の止まらないセギョンです。

一方。
一人で酒を飲むユンジュは。

弟を呼び出します。

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「ホミン、覚えてる? IFMの時、お父さんの事業が潰れて、半地下の家に引っ越したじゃない」

「あの家はマジで最悪だった」

「あの家に住みながら、お母さんは私にいい服、高い服を買ってくれるようになった」

「そうだった。いつも金がないと言いながら、姉ちゃんにはいいものを買ってあげてた」

「目が合うたびに、こう言われたよ。”ユンジュ、あんたは美人よ。それがあんたの幸運よ”」

「俺にはなんて言ってたか、知ってる? ”お前にはそれがない”」

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その言葉に笑うユンジュ。

「とにかく姉ちゃんについていけって言われたよ。うちを助けるのは、姉ちゃんだけだって」

うつむきながらユンジュは弟の言葉を聞きます。

「どうするんだよ?」

心配する弟を前に、考え込むユンジュです。

一方スンジョの家にはトンウクが訪ねてきていました。

「どうするんだ」

「俺、実はありがたかったんだ。空港に訪ねてきてくれたとき、頼りたい気持ちになった」

その言葉に笑顔を見せるトンウク。

「そうなんだ。じゃあ、またやり直す感じか?」

「駄目っぽい」

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ため息をつくスンジョに驚くトンウク。

「なんで?」

「俺の絵」

「絵?」

「3万ユーロで売れたやつ」

「ああ。あれがどうした?」

「本当のこと言ってくれよ。どう思う?」

「なにがだよ?」

「俺の絵が3万ユーロで売れたことを、どう思ってる?」

「なにをどう思うんだよ? お前が一生懸命描いた絵だから、誰かがその価値に気付いたんだろうよ」

さも当然と言わんばかりにスンジョと同意見を述べるトンウク。

「そう思うだろ?」

「そりゃそうだろ。他にどう考えようがあるんだよ?」

「セギョンさんは違うんだ」

「なんて?」

「運だってさ」

「運?」

「誰なのか見つけ出したい」

そこに重なる、絵を見るチャ会長の姿。

「実は、一人だけあの人じゃないかと思う人がいるにはいるんだ」

「そうなんだ。誰?」

「いいや。そんな筈はない」

ギャラリーで絵を眺めるチャ会長。

昔を思い出します。

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言われたとおり3万ユーロで落札したとの言葉に、こんなものが一体経営の足しになるのかと不満をぶちまけるチャ会長。
どこでもいいから寄贈してしまえと会長はすぐさま命じます。

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絵を買ったのはチャ会長でした。

「セギョンさんの言うことが正しかったことが多かったんだよ。それで、怒られながらも黙って聞いてきたんだ。だけど、今回は理解できないんだよ。セギョンさんを理解したいんだけど、俺を騙したことより、もっと理解できないんだよ」

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「人を信じられないほうが苦しいか、世の中を信じられないことのほうが苦しいか。真心がなくて愛を失うほうがつらいか、金がなくて愛を捨てるほうが苦しいか」

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ため息をつき悩むスンジョです。

セギョンは膝を抱えたまましゃがみ込んでいました。

一方、セギョンの元を再び訪ねるスンジョ。

セギョンは外の物音をスンジョと思い、何度も外に出て確認してしまいます。

セギョンの家に向かうスンジョ。
そうとも知らぬセギョンは、外に出てしまいました。やってきたのはスンジョの家の前。

互いの家の前まで来て、呼び出せない二人。

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セギョンを想いながらも、訪ねていけないスンジョ。そしてセギョン。

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スンジョは結局、朝まで車の中でセギョンを待っていました。

家を出るセギョンを見つけ、スンジョは後を追います。

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地下鉄に乗り込むセギョンについていくスンジョ。

少し離れた場所からセギョンを見つめます。

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セギョンは高級バッグ売り場にやってきます。
履歴書を渡すセギョン。

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バッグの品定めをするマダムの脇をすり抜け、街に出るスンジョ。

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『チョンダムドンがなんだからって、ハン・セギョンはあんなに必死にチョンダムドンに入ってきたがったんだろう。ここは単に、俺が住む場所に過ぎないのに』

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チョンダムドンを歩きながら一人呟くスンジョです。

その頃トンウクは、ムン秘書と会っていました。

スンジョとセギョンが喧嘩していると聞き、あんなことがあってもうまくいくと思っていたのにと残念がるムン秘書。
トンウクはムン秘書に、セギョンに失望したと打ち明けます。

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「スンジョを騙したこともそうですが、今回のことはセギョンさんが100%悪いと思います」

「なぜ喧嘩になったんです?」

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「絵のことで」

「絵?」

って、この二人が眼鏡屋で落ち合う必然性、まったくゼロですが。(笑)

スンジョが家に戻ると、部屋の前でユンジュが待っていました。

その頃セギョンはタミー・ホンのところに。

ユンジュと向き合うスンジョ。

「話があるんだろ? 離婚することになったのか?」

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申し訳なさそうに口を開くスンジョ。

「ううん。チャンスをくれたの」

「チャンス? どんな?」

ユンジュはスンジョの言葉に緊張します。ユンジュの様子に気付かず、話を続けるスンジョ。

「こんなこと言うの、恥知らずかもしれないけど。俺がお前の前に現れず、セギョンさんと係わり合いさえしなければ、こんなことにならなかっただろうに。でも、俺が助けられることなら、助けるよ。そのチャンスって、なんだ?」

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心からユンジュにすまないと思っているスンジョを感じ、ユンジュはかえって言い出せません。

「なんでもない。言えない」

「なんだよ。言ってみろよ」

ユンジュはスンジョに謝り、帰ろうとします。
立ち上がろうとするユンジュに、とうとう切り出すスンジョ。

「絵。もしかして、お前か?」

タミー・ホンに事情を説明するセギョン。

「スンジョさんには、本当に分からないんです。心当たりすら、つけないんでしょうね」

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「絵、ですか?」

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同じくトンウクから喧嘩の原因を聞かされるムン秘書。

「3万ユーロですって?」

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「ええ。オークションで売れたんです」

「はぁ。誰が買ったんですか?」

「それは分かりません。匿名で落札されたから」

「はぁ、匿名ですか。誰だか見当つきますけどね」

ムン秘書の反応にトンウクは驚きます。

「誰なんです?」

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ユンジュに尋ねるスンジョ。

「2008年のパリのオークション。一度だけ、お前じゃないかって思ったんだ」

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「父さんからもらった金が3千。絵の代金は3万ユーロ。お前が買ったのか?」

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セギョンはタミー・ホンに言葉を続けます。

「勿論私も知りません、誰が買ったのか。でもスンジョさんは、一番最初に当たりをつけるべき人を、まったく疑わないんです」

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スンジョの問いに答えるユンジュ。

「全財産をはたいて、絵を買う? 私がそんな人間だと思う?」

その言葉にホッとするスンジョ。

「だよな。お前のわけないよな」

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「当たり前でしょ。誰だかすぐ分かるじゃない」

「お前じゃないのに、すぐ分かるってどういうこと?」

スンジョはユンジュの言わんとすることが理解できません。
そしてユンジュは、そんなバレバレなことが分からないスンジョを呆れて見つめます。

「誰なんだよ?」

「分かんないの? それとも、わざとやってんの?」

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スンジョはその言葉に苛立ちます。

「なに言ってんだよ? 誰かって聞いてるだろ」

ため息をつくタミー・ホン。

「分かりきったことじゃないですか」

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「スンジョさんにとっては、分かりきったことじゃないんです」

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「お父さんですよ」

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ムン秘書の答えに、呆気に取られるトンウク。

「お父さん、ですか?」

「当たり前じゃないんですか?」

セギョンはタミー・ホンに答えます。

「見えてきました。エンディングが。不思議な国のアリスは、どんなエンディングでしたっけ?」

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「なんだったっけ?」

考え込むタミー・ホン。

ユンジュがとうとうスンジョに教えます。

「誰もなにもないでしょ。分かりきったことよ」

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「だから、誰なんだよ?」

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「夢だ」

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不思議の国のアリスのラストを思い出すセギョン。

「夢?」

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「あなたのお父さん。チャ・イルナム会長」

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驚愕とするスンジョ。

セギョンの言葉が重なります。

「夢から、覚めるんでした」

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自分の夢が終わるのだと沈むセギョンと、誰もが分かる真実にまったく思い当たらない自分に驚愕するスンジョで、ラスト。

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いや~~。きた~、これは!!

ちょっとブラボーじゃないですか?

メッチャ面白い!!

これって巷で噂されてた、「不思議な国のアリスはスンジョだった」パターン?!(笑)

えぇええ~、脚本家のみなさん、ほんとにこれが最初から描きたかったんですかね?(と疑り深い視聴者。笑)
いやほんと、出来すぎてて素晴らしいという意味です。よくぞ途中あんなに主軸がグダグダになりながらもここまで戻ってきたな、と。グダグダに見せかけていたのだとしたら、なんて高度なんでしょう。
皆がセギョンこそアリスだと思ってみていたのに、ここでまさかの、アリスはスンジョだ、つまり、世の中が分かってない不思議の国の住人はチョンダムドンに当たり前のように住んでる人たちだっていう反転は、見事じゃないですか?

いや~、ちょっと大興奮しました。
めちゃめちゃ面白いです。好きです、私。

そう。これが生まれた時から恵まれていて、恵まれていることすら意識しないで済むごく一部の人と、おとぎ話のような世界などどこにもないと身にしみて実感している普通の人たちの決定的な世界を見る目の違い。スンジョ&トンウクと、その他大勢との違い。
こうなってくると、もはやパラレルワールドとでも呼びたくなります。
これだけ世の中で「常識」や「当たり前のこと」と思っていることが違ったら、どうやってこの二つの階層の善良な人々は疎通したらいいのでしょうか。

ものっすごいチャレンジングなテーマ設定できましたね。
素晴らしい。
最終回、この二つの階層は疎通ができると独自の視点を提示するつもりなのか、それともパラレルワールドを生きるしかないと現状を追認するのか。
どっちもありです。
これを描いた後で二人が別れるなら、私はまったく納得します。

でも!!

疎通ができて欲しい。

大きな、本当に大きすぎる違いですが、あまりにパラレルワールドな二人ですが、こんなふうにチョンダムドンに暮らすことに自分の生まれ育った町くらいの意味しか付与しない「不思議ワールド」な住人たちに、これほど明白に疎通を呼びかけたドラマを私はいまだかつて見たことがないので、二人の疎通ができれば成功して欲しいと願います。
今すぐが難しくても、愛を基盤にした二人が、とりわけても多くのものを持っていると意識する必要もないほどに持っているスンジョが、自分の生きる世界だけが現実ではないことに気付いていこうとするラストであって欲しいです。
あなたが疑うこともなく持っているものは、私には逆立ちしても与えられない世の中なのだというもう片方の世界での事実に思いを馳せるスンジョが、自分の立場から今後の人生で富の分配や機会の平等はどうあるべきなのか考えてくれたなら、私はこのドラマを名作と呼びます。そんなことを、「愛するあなたへのメッセージ」として呼びかけるドラマなんて、見たことありません。チョンダムドンに住んでいる「愛するスンジョ」に送っている点が、とっても好きです。敵じゃないところが。

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いや~、もう最終回をむしろ見たくないです。

このブラボーな回で終わりたい。

ずっとラブラブシーンで終わって欲しいと思ってきましたが、すっかり二の次になりました。(笑)

もちろん、この上ラブがつけば、満額回答ですが。(笑)