みなさま、こんにちは。
松の内はとうに過ぎてしまいましたが、新年明けましておめでとうございます。
今年もみなさまにとって幸せな1年になりますようお祈り申し上げます。
韓国は24日から旧正月連休なので、旧正月バージョンでの新年のご挨拶ということでお許しくださいませ。(笑)

年明けからずいぶん遅れての初投稿となってしまいましたが、今年も気ままに綴っていきたいと思っています。

新年初投稿の今日は、1月22日に韓国で公開の始まったイ・ビョンホンさん主演映画『南山の部長たち』(邦題仮)の予告編などを取り上げてみたいと思います。


これはちょっと、すごい映画がまた来てしまいました。

まずはポスターからご覧ください。







「『南山の部長たち』?サラリーマンの映画?」
と思われていそうですが。(笑)

「部長」の響きがどうにも「赤ちょうちん」で繰り広げられる汗臭い人間ドラマかなにかを連想させますが、すみません。全然違います。(笑)

いや、これ、ほんとに。
よく映画にしたな、と。
「監督、怖いもの知らずか!」と。
私はこの映画を知り、本気でのけぞりそうになりました。
恐らく日本のみなさまが『南山の部長たち』というというタイトルから連想する、何やらほんわかとした雰囲気とは全く真逆の映画。

この「南山(ナムサン)」はソウルの名所「南山タワー」と同じ場所を指しますが。
韓国で「南山」と言えば、「韓国中央情報部(KCIA)」のことなんです。
アメリカのCIAにKOREAをつけた、「韓国中央情報部(KCIA)」。
つまり、「南山の部長」とは、「中央情報部長」のこと。
かつて中央情報部の本部が南山に置かれていたことからきています。
そしてこの映画、朴正煕(パク・チョンヒ)暗殺を描いたものなんですよね。

軍事クーデターによって1961年に政権の座に就いた軍人・朴正煕は、1979年10月26日に側近に暗殺されるまで延べ19年間独裁政治を強いてきたのですが、その朴正煕を暗殺した「側近」こそが、時の中央情報部長、キム・ジェギュでした。

まずは簡単に映画のあらすじを。


1979年10月26日、中央情報部長キム・ギュピョン(イ・ビョンホン扮)が韓国大統領を暗殺する。
事件の40日前、米国では前中央情報部長パク・ヨンガク(クァク・トウォン扮)が聴聞会で全世界に向かって政権の実態を告発し、波乱を巻き起こしていた。
パク・ヨンガクを止めるため、中央情報部長のキム・ギュピョンと警護室長のクァク・サンチョン(イ・ヒジュン扮)が名乗りを上げ、大統領の周辺には忠誠派勢力と反対派勢力が入り乱れ始めるのだが・・・・・・。









映画の中で、朴正煕は「パク大統領」、キム・ジェギュは「キム・ギュピョ」に名前を変えています。
同じく警護室長チャ・ジチョルも映画では「クァク・サンチョン」、前中央情報部長キム・ヒョンウクは「パク・ヨンガク」に。

史実を基にしているため、この映画も「歴史がネタバレ」な映画ですが、日本のみなさまは恐らく朴正煕暗殺にまつわる詳しいいきさつや話をご存じないでしょうから、ここでは誰が何をどうしてどうなったのかはネタバレを避けるため触れずにおきます。

軍事クーデターにより延べ19年もの間独裁による恐怖政治を行った朴正煕(パク・チョンヒ)は、弾劾訴追された朴槿恵(パク・クネ)の父ですが、日本による朝鮮植民地時代は満州国の一員になるべく軍官採用試験を3度も受け、合格ののちは日本陸軍の将校となるなど、日本帝国側の一員として朝鮮独立軍を討伐する側にいた人物で、解放後も1961年の「5.16軍事クーデター」、1969年の「3選改憲クーデター(大統領の3選を禁じていた憲法を改正)」、1972年の「10月維新クーデター(大統領の権限を極大化し国会を弱体化。権力の永久化を狙って大統領を間接選挙で選出する民間団体「統一主体国民会議」を創出。「維新」の名は朴正煕が憧れる「明治維新」からとっている)」など3度のクーデターを起こし、19年の間に3度の戒厳令を宣布するなど、強権による統治を行ってきました。

不正選挙を堂々と行い、民主化を求める人々を暴力で抑え込み続けた朴正煕は、1979年10月、「維新独裁」に反対して立ち上がった釜山と馬山の大学生と市民らによる反政府大規模デモ(「釜馬民主抗争」)を、戒厳令および衛戍令(えいじゅれい)を宣布して鎮圧し、戦車を出動させ銃殺する計画をも立てていたことが、キム・ジェギュらの証言で明らかになっています。

南北の敵対状況を利用し、「反共」の旗のもと政敵のみならず多数の無辜(むこ)なる人々を死に追いやった朴正煕は、様々な手段で私腹を肥やし、不正腐敗の限りを尽くしたことも明らかにされていますが、北朝鮮との敵対関係が長引く中、こうした朴正煕の「不都合な真実」に目を背け、朴正煕やその流れを引く保守政党が作り上げた「神話」をいまだに盲信する人々が決して少なくないという現実も、韓国には存在します。

いまなお朴正煕を信奉する人が一定数存在することから、朴正煕暗殺を映画のテーマにすること自体、非常にスリリングに感じざるを得ないのですが、このチャレンジングな映画のメガホンを取ったのは、朴槿恵政権下の2015年に『内部者たち インサイダーズ』を公開したウ・ミンホ(우민호)監督でした。
やっぱりこの監督さん、ただものじゃないです。(笑)

『内部者たち インサイダーズ』は、正義や公正とは程遠い韓国検察の実態と、長年権力を欲しいままにしてきた保守政党、朝鮮日報に代表される保守系新聞の真っ黒い癒着のトライアングルを実にリアルに描いた映画で、現実でも検察改革を阻止しようとチョ・グク法相をターゲットに総力戦を展開した韓国検察とメディアの実際の共犯関係を理解する上で非常に役立つため、未見の方は映画『ザ・キング』と合わせて是非ご覧になって頂ければと思うのですが、ウ・ミンホ監督、実は「朴正煕体制下の暗部」についても、既に一度映画で取り上げているんですよね。

2018年12月に公開されたソン・ガンホさん主演映画『麻薬王』も、朴正煕が麻薬の密輸を「愛国事業」と称え、稼いだ外貨を貢がせていたことを時代背景にした映画で、映画そのものはあまりのアグレッシブさと救いのなさ故か180万ほどの観客しか入りませんでしたが、監督はこの時既に次作『南山の部外者たち』を予告していたと言えます。

本当にウ・ミンホ監督、ただものじゃないです。
『内部者たち』から『麻薬王』、そして『南山の部長たち』と続くラインナップ、恐れ入りました。


ちなみにこの映画には、原作があります。

元東亜日報記者キム・チュンシク(金忠植)さんによる同名の書籍『南山の部長たち』。
1978年から東亜日報記者として活動し、取材で知りえた膨大な韓国現代史の裏面をまとめた書籍『南山の部長たち』は、1990年から2年間にわたって東亜日報で連載された記事をもとにしており、93年に韓国で書籍化されましたが、実は日本でも講談社から『実録KCIA―南山と呼ばれた男たち』というタイトルで1994年に翻訳出版されています。








残念ながら今は手に入らないようです。
私もこの本は確かに持っていたのですが、いつ手放したのか本棚に見当たらず。
ああ、手に入らないと聞くと、にわかに惜しくなるこの心理。(笑)

原作は歴代10名の中央情報部長を扱っているのですが、映画は4番目の中央情報部長キム・ヒョンウクと8番目のキム・ジェギュの部分を抜粋しています。
ちなみにこの書籍、日韓合わせて52万部も売れたそうです。金大中大統領が朴正煕の政敵だった1973年、日本に拉致された「金大中拉致事件」は大変な関心事だったので、日本でも興味を持たれた方が多かったのでしょうか。


さてこの映画、イ・ビョンホンさんを起用している時点で既に成功が約束されたようなものですが(・・・・・・と書いて気付く。『麻薬王』はソン・ガンホをして180万だったんでした。笑)、チャ・ジチョルをモチーフにしたクァク・サンチョンを演じたイ・ヒジュンさんが、役作りで大幅に体重を増やしたことでも話題となりました。









「寝る時以外は食べ続けた」というイ・ヒジュンさん。

なんと25キロの増量!!

25キロと言えば、ちょっとした小学1、2年生くらいの体重ですよ!

って、小学生に例える必要性皆無ですが。(笑)



こちらが実際のチャ・ジチョル。







恰幅の良さが見てとれますよね。


ちなみにクァク・トウォンさんがパク・ヨンガクの役名で演じた、4代目中央情報部長キム・ヒョンウクは、こちら。














公聴会での服装、そっくりですよね。

朴正煕を演じたイ・ソンミンさんも、立ち耳にすることで随分似て見えます。


イ・ビョンホンさんがキム・ギュピョの役名で演じているキム・ジェギュはこちら。














韓国では上記の写真より、暗殺後のキム・ジェギュの写真のほうが知られていますが、ネタバレ要素を含む写真なので出さずにおきます。

「朴正煕大統領暗殺」という韓国では誰もが知る歴史的事実を、ノワール映画に昇華したと評価される本作。
映像面でも70年代の色合いを意識して映像化したそうですが、予告編でもその雰囲気は存分に伝わってきます。


というわけで、予告編をご紹介しましょう。
まずはこちら。
動画はyou tubeのSHOWBOX公式アカウントより。





閣下 私に何をお望みなのですか

1979年10月 韓国大統領暗殺事件

私がこの場に立った理由は まさに腐った権力の先にあるプレジデント・パク!

あの裏切り者をどうすればいい?

今すぐ捕まえてムクゲの肥料にでも…

私が静かに解決します

お前の隣りには私がいるじゃないか
お前がやりたいようにやれ

閣下に許しを乞うんだ

お前 アメリカがいつまでパク大統領をあのまま置いておくと思う?

その40日間の話

パク大統領は終わった

変わる 俺が必ず変える

2020年1月

人には人格というものがあり 国には国の品格というものがあるんだ

閣下こそ国家だ 国家を守るのが俺の仕事だ

ここはお前みたいなやつがいる場所じゃないんだよ!

韓国前中央情報部長回顧録掲載
パク大統領の実態を暴露


俺とお前はただの下僕だったんだよ ギュピョン

揺れる忠誠

閣下 戒厳令はなりません

今私を脅迫しているのか?

カンボジアでは300万人も犠牲にしたのに 100万 200万を戦車で轢いたからって どうってことありますか?

あの日の銃声

あの野郎の天下はいつになったら終わるんだ?

世の中が変わると思う? 名前が変わるだけよ

南山の部長たち

閣下 政治を大局的におやりください

1月22日公開





続けてこちらは「キャラクター予告編」。





南山の部長たち キャラクター予告編

私が静かに解決します

閣下に許しを乞うんだ

閣下 私に何をお望みなのですか

中央情報部長 キム・ギュピョン
イ・ビョンホン


あの裏切り者をどうすればいい?

キム部長も私が辞めるのを望んでいるのか?
お前の隣りには私がいるじゃないか
お前がやりたいようにやれ

韓国大統領 パク大統領
イ・ソンミン


私がこの場に立った理由は まさに腐った権力の先にあるプレジデント・パク!
お前も俺と同じようにやられるぞ
閣下はナンバー2を生かしておかない
太陽は一つだからな

前中央情報部長 パク・ヨンガク
クァク・トウォン


カンボジアでは300万人も犠牲にしたのに 100万200万を戦車で轢いたからって どうってことありますか?
閣下 キム部長は完全に終わりました
閣下こそ国家だ 国家を守るのが俺の仕事だ

大統領警護室長 クァク・サンチョン
イ・ヒジュン


パク部長が一度やってみようって
主人の替え時だって
世の中が変わると思う? 名前が変わるだけよ

ロビイスト デボラ・シン
キム・ソジン


1979年10月 韓国大統領暗殺事件
その40日間の話
南山の部長たち 1月22日公開





「カンボジアでは300万を殺したのだから、100万200万くらいは戦車で轢いてもどうってことない」というセリフが、フィクションじゃないところがポイントです。
ポル・ポト政権とクメール・ルージュによるカンボジアのジェノサイド(大量虐殺)は当時300万人におよぶと言われていました。
のちの研究により被害者の数は下方修正され、現在ではその数170万人ほどとされていますが、いずれにしてもおぞけ立つ数字です。
このようなことを韓国でも時の権力者が企てていたと思うと、恐ろしいです。


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1月22日の公開日初日、25万人もの観客を動員した『南山の部長たち』。
とにかく俳優たちの演技が素晴らしく、中でもイ・ビョンホンさんの演技が神がかっているとの絶賛の声を多数目にしました。

いかにして最側近による大統領暗殺という事態に至ったのか、登場人物の心理描写を丁寧に行っていると評判のこの映画、テーマ的にも非常に興味があるので私も必ず見たいと思っています。

日本にも早く入ってくるといいですね。