みなさま、こんにちは。

今日は7周忌を迎えたセウォル号事故の日にちなみ、韓国で4月1日から公開されているセウォル号事故を扱った小さなドキュメンタリー映画『あなたの4月』(邦題仮)を取り上げてみようと思います。

 

2014年の4月16日以来、4月になると胸が苦しくなるようになりました。

3月になると東日本大震災を思い出し、心が沈むのと同じように。

今日は楽しい話題を書けなくてごめんなさい。

ここ3年くらい、韓国では4月になるとセウォル号のことを扱ったドキュメンタリー映画などが公開されるようになりました。社会全体が目撃した事故があまりにむごく、言葉にしたり表現するのに時間がかかりましたので、最初にメタファーとして登場したのは2016年の冬公開の映画『隠された時間』だったような気がします。

私の周辺をとってみても、セウォル号のセの字を耳にしただけで、仕事関係だろうが友人たちであろうが、みんな泣いて崩れてしまうという状況が何年も続きました。今でもそれはあります。

事故後数年は映画や音楽で直接的な表現はなかなか現れず、メタファーやモチーフとしてセウォル号をしのばせるような感じだったのですが、月日が経つにつれ直接的に表現したものが増えていくのは、やはり風化を恐れてのことなのでしょうね。相変わらずつらく苦しいけれども、相変わらずみんな泣き出すけれども、それでもこうした悲劇、社会的な惨劇については、忘れまいとする努力のほうが忘れようとする努力を上回る地点があるように思います。もしかしたら、それが今年の7周忌かもしれません。

今日ご紹介する小さな独立系ドキュメンタリー映画は、あの日どう過ごしていたのかを何人かの人々に問う、とても素朴な、まさに記憶を記録するための映画です。

 

 

 

 

登場人物は名もなき市井の人たち。

「2014年の4月16日、あなたは何をしていましたか?」

その問いに答えるのは、沈みゆく船を見ながら悲しんだ教師、大統領に会いに来た遺族を見かけ、一言も声をかけられなかったカフェの店主、遺族のそばで支えてきた人権活動家、事故の起きた海域で遺体を収拾した記憶に苦しむ漁民、授業中に事故を知り、ただニュースを見ているしかなかった学生。

こう書いているだけで、やっぱりつらいですね。

予告編がいくつかあるのですが、「キャラクター予告編」と名付けられているものをご紹介します。

 

私の名前はイ・ユギョンです。記録管理学を学んでいる学生です。
イ・ユギョン 大学院生

『コーヒー工房』という店を10年前から営んでいる、コーヒーを作っているパク・チョルウと言います。
パク・チョルウ カフェの社長

私はチョ・スジンです。中学教師で、仁川で教鞭をとって2年になります。
チョ・スジン 先生

私は人権教育団体で活動しているチョン・ジュヨンです。
チョン・ジュヨン 人権教育活動家

2014年4月16日
あなたは何をしていましたか?

あの時は高校3年生だったのですが、先生がニュースを見ていたんです。
私たちも何年か前に修学旅行に行ったのに、済州島に行ってきたのに、船にも乗ったのに。

「どうしよう」と言いながらも「すぐ助けるだろう」と思ってはいたんです。心配しながらも、同時に、助けられないだなんて全く思っていなくて。

だって本当に理解できないじゃないですか。一人を助けられていたら、状況が違ってたと思うんですよね。

もし私が教えている生徒たちと私があの状況に陥ったら、私は何ができるだろうって。

私は高3だからという言い訳もしつつ、少しずつ遠ざかって行ってました。惨事が起きた初期の状況は大体覚えているのですが、後になるほどだんだんおぼろになってました。

あの時妻と一緒にタクシーに乗って光化門を通りがかったのですが、タクシーの運転手さんが「あー、うざい、うざい」と言うんです。妻が即座に言い返しました。「何がうざいんです?これの何がうざいんです?これが運転手さんの子どもに起きたことでも、そんなこと言えますか?」

小さいけど明確な勇気で私たちが作り出した奇跡

既にあまりに傷つき苦しんでいるであろう方々が、少しでもまたつらい思いをするのがあまりに申し訳なくて。

わたしたちの4月がまた帰ってきます

文字通り耐えたって感じです。消され続けるので、家じゅうに黄色いリボンをつけて。ある時からは視線の先に犠牲になった生徒たちの名前があるようにして。そして「そうだった、まだ解決してなかったんだ」、「私たちはまだこの課題をやり遂げていない。まだやることが残ってる」ってまた思い出して。

こういう悲劇がまた起きないようにするために、記録を通じて何かもっといい社会を作るのに自分が役割を果たせたらと思っています。

今年は希望を感じました。「一緒にやろう」と言ってくれる先生たちが出てきたんです。他の人たちが引き続き動けるように、心に響いたんだなって。

4月16日は巡ってきちゃうものを、どうしようもないじゃないですか。それは私が無くせるものではないので。この問題が解決しなければ、前に進めないと思うんです。時には止まったり、怠けたりしても、これは私の闘いなんです。

セウォル号、忘れません。

あなたの4月
2014年4月1日公開

 

この映画、製作は2019年なので、2年経ってから公開の運びとなりました。
コロナで劇場もガラガラの状況なので、この小さな映画も逆に映画館にかかることができたのかもしれません。

みんなの心にあるからこそ、私と変わらない平凡な人たちがどんなふうにセウォル号を刻み、それぞれの場所で努力しているのかを知るのは、とてもいい試みだと思います。
二度とあのような悲劇が起きないために、私にもできることが見つかるかもしれないので。
なぜ起きたのか。どうしたら防げたのか。責任者は誰なのか。
こうしたことをまた改めて問いたい7周忌です。