みなさま、こんにちは。

12月3日深夜、歴史のかなたに葬り去ったはずの亡霊が、再び韓国全土を震撼させる出来事が起きました。

いよいよ正気を失った尹錫悦(ユン・ソクヨル)が、いつもと変わらない平穏な日常を紡いでいた韓国社会に突拍子もなく「非常戒厳令」を宣布し、実弾を装着した空挺部隊と狙撃隊、戦車など軍を動員して国会を乗っ取ろうとする内乱、クーデターを実行に移しました。
大統領就任前から検察の捜査権限を悪用し自身と妻およびその家族の犯罪を揉み消してきた疑惑の人物が、公職選挙法違反という権力の根拠を揺るがす甚だしい疑惑が明るみに出始めた矢先に起こした、身勝手かつ凶暴なクーデターでした。

一報を聞いてすぐさま国会周辺に駆けつけた数千から2万人とも言われる市民と、素早く国会に結集し非常戒厳令の解除を議決した民主党をはじめとする野党議員及び少数の与党議員により一旦は非常戒厳令を解くことができましたが、本日7日午後5時に予定されている大統領弾劾決議の評決は、尹錫悦を輩出した与党が「否決」を党論で決め、可決の見通しが厳しい状況にあります。

そんな中、韓国映画界は12月5日付で2518人の実名で罷免・拘束を求める声明を発表し、今日付けで一斉に取り上げられています。
今日はそのことを取り上げようと思います。

【12月8日付訂正:カン・ドンウォン、キム・ゴウン、チョン・ジヒョン、ソン・イェジン(敬称略)などのお名前を報道に基づいて掲載しておりましたが、8日付に最終名簿が発表され同姓同名の別人など誤ったリストであるとの情報があるため、代表的な4名のかた以外にお名前と写真を削除しました。】

この声明には、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督をはじめ、『白雪姫に死を』の放映が終わったばかりのピョン・ヨンジュ監督、映画『1987 ある闘いの真実』のチャン・ジュンファン監督をはじめとした大勢の監督の他に、最近『ジョンニョン』で大きな話題をさらった女優のムン・ソリさんなど日本でもその名を知られる監督・俳優の方々が名を連ねています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1次ということですので、もしかしたらこの後増えるのかもしれません。
こういう時に当然名を連ねるであろうキム・ウィソンさんやクォン・ヘヒョさんのお名前が見当たらないので、まわり切らなかったのかもしれません。

報道によりますと、今回の声明は、非常戒厳令が解除された翌日の5日から6日の夜12時までおよそ30時間の間に集められたものだそうです。
77の団体と2518名の映画関係者個人の連名となっています。

以下、声明文全文を翻訳しましたので、ご紹介します。

 

<映画人緊急声明>
「内乱罪の現行犯」ユン・ソクヨルを罷免・拘束せよ!

12月3日夜10時22分、現職大統領が非常戒厳令を宣言し、2時間30分後に国会が非常戒厳令の解除を議決してから2日経った。違法で違憲な非常戒厳令の宣布、軍部独裁を思い起こさせる非常戒厳令布告文、国会の議決後3時間経ってようやく国務会議の議決定足数が成立していない前提で発表された非常戒厳令解除、行政府システムが正常に機能しているのかさえ疑わしい一連の過程に加え、12月4日にはユン・ソクヨルの非常戒厳令宣布の理由が、野党に警告メッセージを伝えるためだったという呆れ果てる報道が相次いでいる。

「正気なのか?」、「おかしくなったんじゃないか?」。

非常事態宣言を目の当たりにした大多数の国民の、最初の反応はそうだった。

映画人たちも大して変わらない。人文学的な常識では到底理解できないことが、いくら映画的な想像力を働かせても妄想に過ぎないようなことが、現実に起こったのだ。常識のある国民なら、法律的な判断に先立って、次のような結論に導かれるのが自然である。「大韓民国の存立に最も危険な存在はユン・ソクヨルであり、大統領という職務から降ろすことが民主共和国を守るための最も急務の課題にならざるを得ない」ということ。

すでに大韓民国と国交を結んでいる大多数の大使館では、韓国に滞在中または滞在する目的で訪問した自国民に「危険」と警告しており、非常戒厳令解除にもかかわらず、危険警告を維持している。ユン・ソクヨルという危険要素が解消されていないからだ。

まるで政権の功績かのごとく宣伝に躍起になっていた韓流の地位は地に落ちた。大韓民国の民主主義の成長と表現の自由が文化芸術分野の成長の最も大きな土台だと指摘していた海外のメディアは、韓国のイメージ低下と訪問者の減少を予測し連日報じている。自分の好きな韓国の「アーティスト」の安否を心配する懸念の声も続いており、外貨両替を拒否されたという大韓民国国民の通報も相次いでいる。

国会という憲法機関を蹂躙し、独立した憲法機関である中央選挙管理委員会と一連の報道機関に戒厳軍を急派し、「(職務に)復帰していない専攻医を処断する」という戒厳司令部の措置に加え、映画人たちを怒らせたのは、「すべての報道と出版は戒厳社の統制を受ける」という戒厳司令部布告令の第3項をはじめとする国民基本権の制限だった。

韓国の憲法は「表現の自由」という明示的な表現を使用していないものの、良心の自由、言論・出版の自由と集会・結社の自由、学問と芸術の自由などを、憲法で保障する「表現の自由」と通常称する。つまり、ユン・ソクヨルは真夜中に「違憲的なブラックリストを全面的に実行」してしまったのだ。現職の法務部監察官が「戒厳令を受け入れられない」と即座に辞表を出したという報道だけが聞こえてくるのみ、現職国務委員の誰も辞意を表明したという報道以外に、違法な戒厳令に立ち向かって国民の生命権を守るために行動した形跡は見られない。指示と命令によって魂のない仕事を進めたというブラックリストの作動原理と、もっともらしい言い訳が、いかに偽りであったかが明白に証明された。

ユン・ソクヨルの在任期間中、韓国映画人は政府の一方通行の映画予算案について不便かつ不当であると指摘してきた。法律に明記された権限である映画振興委員会と文化体育観光部の予算編成案は、ユン・ソクヨルの一方的暴挙によって座礁した。
野党が国務委員の弾劾を試みたことと予算案の処理などが非常戒厳令の根拠なら、反国家勢力はユン・ソクヨル本人だ。良心のある公職者なら、反問してみよ!民主主義が定着して以来、ユン・ソクヨルほど企画財政部とすべての政府機関の上に君臨し、勝手に予算を編成した者がいただろうか?

昨今の混乱した状況を克服し、墜落した大韓民国の位相を克服できる第1の前提条件は、ユン・ソクヨルの大統領職務遂行を停止させることだ。

弾劾が最速の道なら弾劾を選択しなければならないだろうし、それ以外に罷免させる方法があれば、最も迅速な道を探さなければならないだろう。生中継で満天下に内乱罪の現行犯であることが明らかになったユン・ソクヨルと、国防部長官をはじめとする戒厳勢力に対する拘束及び断罪は、妥協の余地のない自明な手順である。

政権再創出のための政治工学に没頭している「国民の力」の国会議員たちに警告する。

常識外れで制御不可能な、大韓民国第1の危険要素であり、内乱の首謀者であるユン・ソクヨルの大統領職務を今すぐ止めることが大韓民国が生きる道だ。誰に政権を任せるかは国民が決める。内乱の同調者として歴史に残るのか、国民の生命と安全を最優先する政治家として残るのか、自ら選択しろ。

韓国の映画人にとって、ユン・ソクヨルはもはや大統領ではない。内乱罪の現行犯に過ぎない。

速やかにユン・ソクヨルの大統領職務を停止させ、罷免・拘束せよ!

2024年12月5日
ユン・ソクヨル退陣を求める映画人一同

 

声明文の原文は、MBCのニュースをリンク貼っておきます。コチラからご確認いただけます。(訂正:このMBCのリストは誤りがあります。)

また、団体個人の名前はジョイニュースのリンクを貼っておきます。コチラです。(訂正:このジョイニュースのリストは誤りがあります。)

 

日本でも公開された映画『ソウルの春』は、1979年12月12日、全斗煥が起こしたクーデターを描いたものでした。
映画の中でファン・ジョンミンさん演じる全斗煥を模したチョン・ドゥグァンが、「失敗したら反逆、成功したら革命じゃないですか!」と声を張り上げるシーンがあります。

実は朴槿恵の時も、朴槿恵が弾劾を逃れようと戒厳令宣布について綿密に計画を立てたことがありました。民主党党首に軍から内部リークがあったためにすんでのところで防げたのですが、尹錫悦の今回の非常戒厳令という名の内乱、クーデターは、分析した結果朴槿恵の時に立てた計画書を参考にしています。
朴槿恵の時に立てた戒厳令の計画書も、全斗煥のクーデターをトレースしたものでした。

「失敗したら反逆、成功したら革命じゃないですか!」。
映画『ソウルの春』のこのセリフを聞いた時、常識のある人たちが怒りに震えるのとは反対に、独裁者に憧れる尹錫悦は「これだ!」と思ったかもしれません。

いずれにしても、1979年10月、朴正煕が暗殺された時に発令された戒厳令は、その後全斗煥のクーデターと80年5月光州の残忍極まりない光州市民虐殺を経て1981年に解除されるのですが、あの悪夢そのものの「戒厳令」、「戒厳軍」というものを2024年の暮れも押し迫った韓国で見ることになるとは。本当に言葉では言い表せない衝撃です。

尹錫悦の内乱はまだ終わっていません。
鬼を生み出した与党が、その罪を痛感するは愚か、弾劾したら次の大統領選挙で負けて政権を失うという尹錫悦並みの身勝手な理由で弾劾に反対しています。
尹錫悦には正常な判断が既にできないことが明らかにも関わらず。

こういうことがあるたびに、矢面に立つことが決して簡単では政権下で、常に常識に基づいて是正を求める韓国映画界の勇気に、深い感謝と敬意を表します。
朴槿恵政権の時にも大衆芸能文化人約1万人がブラックリストに入れられ、不利益を被らされた苦しい過去があるにもかかわらず、あれよりひどい政権下でもなおこうして声を勇敢に上げて下さる姿に、一市民として感動と感謝の思いです。

ちなみに、日本からは遮断されていて見れないのですが、尹錫悦の内乱、クーデターが起きた後、韓国内では今YouTubeで『ソウルの春』を無料公開しています。
1300万人以上見た映画ですが、多くの人がこの知らせに、「今度こそ阻止しなければ」と怒りに震えています。

また、地上波のMBCとSBS、ケーブルテレビのJTBCなどは、土曜ドラマの放送を中止することに決めました。
国の命運がかかった、内乱犯を弾劾できるかどうかがかかっているのに、ドラマを楽しむ気分になど到底なれません。賢明な判断だと思います。

もし今日与党が内乱の共犯者になることを決めたなら、韓国の民主主義は再び大きな危機を迎えることになります。
到底正気とは思えない尹錫悦をそのまま軍統帥権者の地位に置いておけば、いつでもまたやるのが目に見えているからです。次はわざと北朝鮮を挑発し、局地戦を起こすかもしれないと人々は危惧しています。
保身と永久執権のために、本物の戦争を起こして戒厳令を成功させるかもしれないと。

韓国市民は、また民主主義を守るために身をなげうって戦わなくてはならなくなりました。
それでもきっと最後にはまた勝ち取るだろうと信じています。
これまで韓国民衆の歴史と歩みがそうであったように。