韓国100万人集会響き渡ったK-POPとペンライト
People fought for democracy in S.Korea

Author: PAEK Hyang Ha

9 2024年12月

みなさま、こんにちは。

今日は、12月3日に尹錫悦(ユン・ソクヨル)が平和な韓国社会に「非常戒厳令」を宣布したのを受け、韓国の人々がどのような形で対抗しているのかをお伝えしてみようと思います。

内乱を企てた首謀者の尹錫悦は国会に戒厳令を解除されたあとは表向きはなりを潜めていますが、依然大統領の地位にあり、軍を動かす全権を持っています。また同じことをするに違いないという危機感から弾劾を求める集会が直後から全国各地で起こったのですが、厳しい状況に対峙するための集会が、K-POPの歌と各ファンダムのペンライトであふれる年末の音楽祭のようになっているんです。

この写真は12月7日、尹錫悦の弾劾を求めて国会前に繰り出した韓国市民によるデモの様子です。
左端上方に韓国国会議事堂の丸い屋根が見えます。
とんでもない数の市民が集まりました。
100万と言われていますが、もっといる気がします。

写真はハンギョレ新聞12月7日付の記事からお借りしました。
リンクはコチラになります。

今回尹錫悦が出した戒厳令は、1979年10月27日以来まさに45年ぶりのもの。
50代以下は、軍事独裁政権の厳しさを経験すらしていません。

その後87年6月民主化運動で光州事件の主犯である全斗煥を下野させ、韓国に大統領直選制を導入することで制度上の民主化を成し遂げてからは、「闘争歌」と呼ばれる民衆歌謡を歌う機会もめっきり減っていきました。
30代以下はそうした歌を知らない世代と言えるでしょう。

それでも民主化運動の流れを汲む団体や性質の集会の時は、昔ながらの歌が歌われてきました。
2016年10月に始まった朴槿恵弾劾集会の時も、80年代に歌われた「民衆歌謡」が歌われていました。

あれから8年。

2024年の年の瀬に起きた大統領自身によるクーデター・内乱を前に、教科書や映画、ドラマ中の出来事だと思ってきた軍隊が野党の国会議員を狙い、市民の前に銃を構えるというにわかには信じられない光景をみんなで目撃することになり、韓国社会全土が大きな衝撃と怒りに包まれました。

朴槿恵とは比べ物にならないクレイジーな尹錫悦、軍隊まで動員した尹錫悦に、老いも若きもみんな立ち上がる状況です。

ところがですね。

ここで大人たちはびっくりする光景を見ることになったんです。
集会にやってきた圧倒的多数の10代、20代、30代の女性たちが手にしていたのは、ロウソクではなく大好きな推しのために振るペンライト！

（出典：X @Naddu309）

すみません、私自身がARMYなもので、BTSのペンライトからえこひいきしてご紹介。(笑)

でも今回の尹錫悦弾劾を求める集会で、一番目立っているのは、誰が何と言おうと、これです。

（出典：X @taem_mini）

素晴らしすぎる、このペンライト！
NCTのペンライトです。
ファンの方がSNS上で、デモに行く人のために「弾劾」とちょうどいい大きさでデザインした紙をみんなにシェアしているのを見ました。貼ってあるのは「탄핵/弾劾」の文字です。(笑)
四角いからこそ、これが可能ですよね。私も欲しい。
実際中古マーケットで今売れてるそうです。(笑)

（出典：X @taem_mini）

これは、もう。今回の弾劾デモに参加している方で、これ持っている方が最も誇らしいんじゃないでしょうか。
少女時代のペンライトです。「即刻逮捕」と書かれたピケットとの組み合わせが、何とも非現実ですね。(笑)
なぜこれが誇らしいかと言いますと、今回の弾劾デモで民衆歌謡にとって代わったのが、少女時代のデビュー曲『Into The New World/다시 만난 세계/また巡り合えた世界』なんです。

少女時代の『また巡り合えた世界』は、これまでも2016年の朴槿恵弾劾の導火線になった梨花女子大生たちのデモでも歌われ、若い女性たちが主流になる集会で流れてきた歌ですが、今回晴れて100万人デモソングになりました。(笑)

（出典：X @taem_mini）

これはSHINee（シャイニー）のペンライト。
シャイニーの歌『Sorry Sorry』も流れています。

（出典：X @h3adinthec1oud）

こちらはEXOのペンライト。カッコいいですよね、こちらも。カクカクしてて。
「即刻退陣」と書かれたピケットを手にしたこのXの投稿には、「EXOよ、生きやすい世界作ってあげるからね/엑소야 살기좋은 세상 만들어 줄게」と書かれてありました。」

（出典：X @taem_mini）

Red Velvet（レッド・ベルベット）のペンライト。
Rのデザイン可愛いです。

あれ、ここまで全部SMのペンライトですね。

ニュジのもあります。

NEW JEANSのペンライト。

可愛いバニーちゃんも怒ってます。「弾劾」と。

これは12月3日、光州での弾劾要求デモに登場したgod様のペンライト。

少女時代の『また巡り合う世界』と同じくらい今回の集会で流れているのが、90年代を代表する名曲『One Candle/촛불 하나/ロウソク一つ』。
ユン・ゲサンさん、きっと喜んでくれてると信じてます。勝手に。(笑)

「解散した推しのペンラがまた日の目を見る日が来た」との文言と共に掲載されたWanna One（ワナワン）のペンライト。

（出典：X　@escescesc_8）

最高じゃないですか？

1って書いてある。これも欲しい。

そして、12月7日の国会前集会で「どこのですか？」と一番注目を浴びたと言われているのが、これ。

（出典：X @UDong___）

爆笑！こんなペンラ、あるんですね！(笑)
これはEPIK HIGH（エピックハイ）のパクキュボンと呼ばれるペンライト。分かりますよね、発音してみればどういう意味か。(笑)

これを持っていったかたは、みんなに「それどこの？」と聞かれたとXに書いていらっしゃいました。
多分みんな中古マーケットで一番狙ってるやつじゃないかと思います。(笑)

このペンライト、こんな用途もありました。

尹錫悦の人形を叩きながら。

応援棒が役に立ってるとこ

文言といい、最高ですよね、このツイート。(笑)
これはスクショなのですが、実際は動画です。

与党「国民の党」が卑劣にも弾劾評決に参加せず、みんなが失望した瞬間も、彼女たちは力強く、ペンライトを振り続けていました。

（ここまでの画像の出典は全てX）

いつもはチャートで誰が首位になるかけん制し合っている各ファンダムが、それぞれの星を輝かせている光景を見て、胸が詰まるやら、感動するやら。

さらに、好きなアイドルの名前を書いて、アピールする姿も。

（出典：「キム・オジュンのニュース工場」からのキャプ画）

성훈아 생일 축하해!!
너와 나의 민주주의 꼭 지키자.
윤석열 탄핵!!!!!

ソンフン、誕生日おめでとう！！
君と私の民主主義を必ず守ろう。
尹錫悦、弾劾！！！！！

성훈아 생일 추카해
생일선물로 윤석열 탄핵(해줄게)
윤석열 탄핵

ソンフン、誕生日おめでとう
誕生日プレゼントに、尹錫悦弾劾（してあげる）
尹錫悦、弾劾

ENHYPEN（エンハイプン）のソンフンさん、翌12月8日がお誕生日だったんですね。

エナプの後ろにも手書きのピケットが見えます。

성찬아
살기 좋은 나라 만들어 줄게

ソンチャン
生きやすい国を作ってあげるからね

RIZE（ライズ）のメンバー、ソンチャンさんに向けたメッセージだと思われます。

また、その前列にはこのメッセージも。

용복아
살기 좋은 나라

ヨンボク
生きやすい国を

Stray Kids（ストレイキッズ）のフィリックスさんのことですよね。文字が切れていますが、恐らく生きやすい国を作ってあげる、と続いていたのでしょう。

誰もが仕事や勉強も手に就かず、眠れない夜を過ごしているので、アイドル達もきっとここに自分たちのファンがいることは伝え聞いていると思います。

NMIXX（エンミックス）のキュジンさん、 B1A4（ビーワンエーフォー）のゴンチャンさんとシヌさん、STAYC（ステイシー）の全メンバー、NCTのシオンさん、今月の少女のメンバーだったイブさんとヘジュさん、IZ*ONE（アイズワン）出身のソロ歌手イ・チェヨンさん、Stray Kids（ストレイキッズ）のヒョンジンさん、イ・チェヨンさんの妹でITZY（イッチ）のメンバー、チェヨンさんなどなど、たくさんのK-POPアイドル達が、集会やデモという単語を直接使わなくともファンを気遣い、自分も同じ気持ちであることを伝えています。

それでなくても同じ気持ちなのに、100万の群衆の中に自分のファンがいたら。黙っていられないですよね。誇らしいファンを持って、幸せだと思ってくれていたらいいなと思います。

実際の12月7日の映像をいくつかご紹介します。

こちらはオーマイニュースのYouTube公式アカウントより。

流れてる音楽は、1曲目が2NE1の『私が一番イケてる/내가 제일 잘 나가』、2曲目がG-DRAGONの『ピタカゲ（Crooked）』、3曲目はBLACK PINK（ブラックピンク）のロゼとブルーノ・マーズの『アパート』。
「弾劾せよ！」、「国民の党は大統領弾劾訴追を可決しろ！」と叫んでいます。

この時は既に与党が一人を残して議場から退出し、弾劾の評決に必要な最低数200を確保できない状態、つまり廃案確定の状況でした。
人々は怒りと失望を抑えながら、それでも戻ってくる議員を待っているところです。実際に2人は良心の呵責に絶えず議場に戻ってきました。108人中105人が尹錫悦の弾劾に反対した罪は、国民の党の解散というかたちで、いずれ帰結することになるでしょう。

もう一つ。

これは、少女時代の『また巡り合えた世界』に合わせてみんなが歌っている動画です。
PTTNEWSというチャンネルより。

よく聞くとハモッてる。（笑）

こんな時にもハモッてるアナタタチ、大好きです。（笑）

一人ひとりが集まって、100万の星を形作っているんですよね。胸が一杯になります。

さて、ここでとても面白いものも発見したので、ご紹介します。

X（旧ツイッター）に載っていた、プレイリスト。

ツイートの主は恐らく若い女性。

「ああ。年配者のカカオトークで回ってるんだって。ロウソク文化祭、事前学習用の弾劾プレイリスト」
そう書かれた文字の下には、「50代以上の皆さん！」という呼びかけで始まる曲名リストがずらり。

50代以上の皆さん！
ロウソク文化祭への円滑な参加のために、事前学習が必要です^^。
弾劾プレイリスト

(G)I-DLE(アイドゥル) – クラクション
ロゼーアパート
ユン・スイル – アパート（ロゼのアパートからユン・スイルに続くリミックス曲のほう）
なになに
シャイニー – Ring Ding Dong
PSY(サイ）- チャンピオン
G-DRAGON – ピタカゲ
スーパージュニア – Sorry Sorry
少女時代 – Way to Go
少女時代 – Into The New World
防弾少年団 – Fire
エスパ – Supernova
ミュージカル　レ・ミゼラブル – 民衆の歌
ミュージカル英雄 – タンジ同盟
GOD -　One Candle
無限軌道 – あなたに
TWS(トゥアス) – Sparkling Blue（最初の出会いはとても難しい）
ユ・ダビンバンド – いいじゃないか
ブソクスン – Fighting

幸いなことに
シン・ヘチョル – あなたに
キム・スチョル – 若い君よ
キム・ヨンジャ – アモーレパーティ　もありますｗｗ

ここにぶら下ってるコメントが大爆笑で、「昨日集会に行ってついていけなくて挫折した50代、ここにいます」とか「ブソクスンってなんですか？」とか書かれてあって、笑って涙が出そうになりました。

かたやＭＺ世代と呼ばれる若い方々の間にも、民主化運動の集会などで歌い継がれてきた「民衆歌謡」のプレイリストが出回っているんですよね。

50代以下の子ども、青少年、非青少年の皆さん！
ロウソク文化祭への円滑な参加のために、事前学習が必要です！^.^
弾劾プレイリスト

1. あなたのための行進曲
2. コッタジ – 岩のように（YouTubeにダンスも載ってます）
3.コッタジ – 団結闘争歌
4. ノチャッサ(歌を探す人々) – その日がくれば
5. ウリナラ – 友がいるから
6. ノチャッサ(歌を探す人々) – 荒野にて
7. コッタジ – 呪文
8. コッタジ – 火の蝶

幸いにも、まずは8曲だけ集めてみましたｗｗ

なんですかね、これ。

面白すぎます。（笑）

若い子たちは韓国で民主化運動の流れを引く各種の集会の時に流れるお馴染みの曲を、存在すら知らず、50代以上はペンライトに目を丸くし、「その蛍光棒、どこで買ったの？」な状態で、お互い全然知らない曲と文化がいきなり鉢合わせしたわけですが、互いに尊重して学ぼうという姿が素晴らしくないですか？
私は大笑いしつつも、心底感動しました。
尹錫悦がしでかしたとんでもないことが100万もの人を一堂に会させ、その場が世代と世代を融合させ、過去を現在、未来へと繋げる場になっていること自体に、感嘆せずにおれません。

「集会」などというものに参加したことない10代20代は、自分の行って怒りの意思表示をしたいけど、行くのが怖いと思っていたそうです。目の前でリアルタイムで精鋭部隊が戦車が国会に、市民の前に送り込まれたのを見てしまった後なので、もしまた同じことが起きたら光州の時のようになるのではないかと。

その怒りから50代以上は再び街に飛び出したわけですが、若い女性たちは推し活のコミュニティなどで「集会は人が多ければ多いほど手出しができなくなって安全なんだよ。だからひとりでも多く行って欲しい。ペンラ持って行けば、現場で仲間に会えるよ。それでも怖かったら、金属労組の旗を探して、その人たちの近くにいたらいいよ」との趣旨で誰かが書き込んだのに従って、ペンライトを持ってきた人が多かったそうです。
常に労働者や労組の人たちを迫害してきた尹錫悦ですが、その力強い年季の入った闘争方法に目を付けるとは！（笑）
「金属労組」というのは労総のカテゴリーの一つで、「自動車、鉄鋼、造船、機械など、金属産業を中心に国内製造業全般が属した19万規模の全国レベルの産業別労働組合」だそうです。

もしも現場で同じペンライトを持っている人が見つからなかったら、この下に集まれとのメッセージも。

オタクに推し活の心配だけする権利を
応援棒連帯

全部女の子たちが自分で作って持ってきてるんですよね、現場にこうした面白い旗を。

向こうは銃剣と戦車を持ち出してきたのに、怖いです、誰だって。
光州でどれだけ残忍に何の罪もない市民が殺されたか、みんな教育の過程で知っています。
強そうなおじさんたちの旗の下に集まり、大好きな推しに振るためのペンライトを持っていったということに、この対比の象徴性に、示唆に、書いていてちょっと泣きそうです。

最後に、ペンライトを手にやってきた若い女性たち、女の子たちに焦点を当てたMBCニュースを載せておきます。

[アンカー]
今回の弾劾要請集会は、100万人に達する参加人数だけでなく、過去とは異なる風景でも話題となりました。
過去の集会でよく歌われた歌よりもK-POPに親しみ、ロウソクよりもアイドルグループの応援棒が身近な2、30代が多数参加したからです。
海外メディアも「まるでお祭りのようだった」と韓国の集会文化を紹介しました。
コ・ビョンチャン記者です。

[レポート]
人気アイドルグループ「ブソクスン」の歌「ファイティン」が響き渡ります。
市民は歌に合わせて歓声とスローガンを叫びます。

「ユン・ソクヨルを弾劾しろ！」、「弾劾しろ！」

まるでコンサート会場を思わせる雰囲気だった昨日の国会前ユン・ソクヨル退陣集会現場でした。

[イ・ヒョンジ/集会参加者］
「とりあえず、やっぱり興の民族です。少し若い世代がデモをあまり重く考えずに出てくることができるようになったと思います。同じ応援棒を見つけると、ああ、あの方もこうして出てきてくれたんだ、と元気が出ます。」

民主化運動世代に続き集会の中心に立った20-30世代は、楽しく個性的に自分の声を出しました。
そしてK-POPとアイドルの応援棒は、恐怖に打ち勝つ連帯の象徴となりました。

[カン・ジユン/集会参加者］
「ストレイキッズの応援棒です。デモがあまり殺伐とせず、より身近に感じられたと思います。私と同じように考えている人が多いようで、共感できました。」

[シン・ソヨン/集会参加者］
「朴槿恵弾劾の時、ロウソクはすぐに消えると言ったとある国会議員の発言が思い出されて、持ってきました。SNSで昨日たくさん（集会に）出て来たというのを見て、一緒に持って行かなきゃと思ってきました。」

市民が自作して持ち出した色とりどりの旗も注目を集めました。
笑いを誘う協会名はもちろん、好きな動物「ワラビー」を描いた旗を掲げている人もいました。

[チョン・ウジョン/「全国ワラビー保護協会」旗製作者]
「誰でもデモに参加できるという自信を持たせるために、実はちょっと笑えるような、面白そうな旗を持ってデモに参加することになりました。」

[ソン・アルム/「全国ワラビー保護協会」旗製作者]
「デモに出るのに何か必要な要求条件などはない、一般市民もアイドルファンも、何が好きでも、（デモに）参加できると、そんな意味を伝えたと思っています。」

海外メディアは国会前で行われた集会の様子を詳細に報道しました。
AFP通信は「色とりどりの光る棒とLEDキャンドルを振って楽しそうに踊る、ダンスパーティーを思い起こさせた」と昨日の集会を紹介し、ニューヨークタイムズは「お祭りのような雰囲気」と報じました。

MBCニュース、コ・ビョンチャンです。