みなさま、こんにちは。

今日は、先日13日に行われた韓国国会議員選挙に合わせて出されたちょっと面白いネタをご紹介してみようと思います。

翌日のニュースなどで結果をご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、韓国では4月13日に第20代国会議員選挙が行われました。

韓国の議員定数は地域区(選挙区)と比例を合わせて300議席なのですが、選挙前、最大で180ほどの議席を与党が持っていくのではないかという見通しが繰り返し報じられていました。
というのも第1野党が昨年暮れから分裂騒ぎの局面に入ってしまい、それまで2つだった野党は3つに。おまけに建て直しを任されたはずの第一野党の新指導部は不可解な候補者選定を繰り返すなどし、野党支持者たちの怒りと離反を自ら招く事態に陥っていたのです。

こういう状況になると、「漁夫の利」を得るのは与党ですよね。
分裂による野党の大敗はほぼ免れないものと、誰もが思っていました。

ところが。

今回は誰も予想し得なかった結果が待ち受けていました。

人々の生活に関わる経済状況はボロボロなのに与党には解決能力と意志が見られず。でも野党第1党は不甲斐ない内輪揉めに汲々とする状況を目の当たりにした有権者たち。投票で鋭く物申しました。
このまま与党を信任してはいけないと考えた多くの無党派層の人々が選挙区で「勝てる野党候補」に票を集め、結果、与党は過半数を得るどころか第一党の座も野党に明け渡す驚愕の状況となりました。
終わってみれば、一票差で野党第1党が第一党になっていたのです。

いやはや、分からないものです。
誰のことも圧勝させない「けん制」のメッセージと、状況を見る絶妙なバランス感覚。私も一有権者ながら、今回はこの結果を導いた有権者にちょっと感嘆しました。

と、なぜこんな選挙概要から先に書いたかと申しますと。

実は今日ご紹介する元記事、「与党圧勝の結果にどんよりしてしまった人々を少しでも癒す目的で用意されたネタ」なんです。
人々が選挙結果にダメージを受けるだろうことを考慮して仕込んでおいたのに、蓋を開けてみたら現実のほうに思いもよらぬドラマティックな展開があり。

ということで実はこの元記事、高クオリティなのに本来の目的を果たせず、盛り上がる機会を失ってしまったものなんです。

もし予想に沿った結果が出ていたら、この記事は人々の大いなる慰めになったでしょうに、記事が盛り上がらなくて幸いという、このアイロニー。(笑)
このまま埋もれさせるには惜しい力作なので、今回ピックアップしてみます。
ただ、正直この面白さをお伝えしきれる自信はありません。(笑)

出典はハンギョレ新聞の4月13日午後9時41分付けの記事です(リンクはコチラ)。

この記事は、直近で人々から人気を集めたドラマと映画の登場人物を国会議員候補に見立て、大学生を対象に仮想投票を行った結果を表したもの。

候補者は映画『ベテラン』のソ・ドチョル刑事(ファン・ジョンミン扮)、ドラマ『シグナル』のイ・ジェハン刑事(チョ・ジヌン扮)、同じく『シグナル』からチャ・スヒョン刑事(キム・ヘス扮)、ドラマ『六龍が飛ぶ』の太宗イ・バンウォン(ユ・アイン扮)、ドラマ『太陽の末裔』のユ・シジン大尉(ソン・ジュンギ扮)、同じく『太陽の末裔』の医師、カン・モヨン医療ボランティアチームチーフ(ソン・ヘギョ扮)の6名。
この中で誰がもっとも国会議員に適しているか、彼らにどれだけ政治家として資質があるかについての評価を加えています。

「架空の人物でありながらも、どんな人物が国会に行くべきかという‘民意’をそこから読み取ることができる」と記事。投票は7日に東国(トングク)大学政治外交学科の『政治学研究方法論』受講生61名を対象に行われたそうです。
特に学部が記されていない人は、政治外交学科の学生です。

さて、みなさまは6名のうち誰が1位になったと予想されましたか?

結果はこうなりました。


記号1番 イ・ジェハン  36%

記号2番 ソ・ドチョル  26%

記号3番 ユ・シジン   22%

記号4番 イ・バンウォン 8%

記号5番 チャ・スヒョン 5%

記号6番 カン・モヨン  3%

てかイ・バンウォン、すくなっ!!(笑)

イ・バンウォンが少なくて、これ幸いと思うべきですよね。
あれが国会議員なんかになった日には。ええ。エライことです。(笑)

ちなみに韓国の選挙では候補者や政党を選ぶ時は「記号」で選びます。
党名や候補者名に番号が振ってあって、右端の空欄に投票スタンプを押す方式です。
たとえば比例の場合、与党が記号1番、野党第1党が2番、野党第2党が3番と、所属議員数が多い順に並び、無所属はそのあとの届出順で番号が振られる仕組みです。

以下、分析記事を見ていきましょう。

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とことんやります党
「政治の世界、そこもこんなですか?」
記号1号 イ・ジェハン (『シグナル』チョ・ジヌン)


イ・ジェハン刑事が国会議員としていいです”

大学生らは『シグナル』のイ・ジェハン刑事を国会議員として最も適した人物として選んだ。有権者61名のうち22名(36%)が彼に票を投じた。次に得票が多かった候補は『ベテラン』のソ・ドチョル刑事(26%・16票)だった。

視聴率がうなぎのぼりの『太陽の末裔』ユ・シジン大尉は3位(22%・13名)に留まった。いま現在最もホットなドラマかつ登場人物である点を考慮に入れると、意外な結果である。チョン・ドジョンのような政敵と自身の兄弟をも殺して権力を握った太宗イ・バンウォン(『六龍が飛ぶ』)は4位(8%・5票)だった。今であれば国会ではなく刑務所に行くべき人物であるが、強力なカリスマが一役買ったと思われる。

女性候補であるチャ・スヒョン刑事(『シグナル』)とカン・モヨンチーフ(『太陽の末裔』)はそれぞれ5位と6位に留まった。映画やドラマの中心人物が男性中心であるためと解釈できる。

大真面目な分析に思わず笑ってしまいます。
そして選挙ポスターが絶妙すぎる。
ぐいぐい訴えかけてきますよね。
「そっちの世界もそうなんですか?」と。(笑)

続けて見ていきましょう。

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カオ党
「カオがある政治」
記号2番 ソ・ドチョル (『ベテラン』ファン・ジョンミン)


“ソ・ドチョルが国会議員になれば‘カオ’が立ちそう’”

国会議員に最も適しているとされたイ・ジェハン刑事は、『シグナル』で韓国社会における権力の不条理を最後まで探り、極限的な窮地に追いやられる人物である。彼の名台詞「とことんやります」が人々の口に上るほど、強力な推進力が長所である。チョン・ヒョヌ(国語国文学科4年)さんは「正しいことをすることに、ためらいがない。私利私欲で迷うことがなさそう」と支持の理由を明かした。ノ・ソヨン(4年)さんも「権力の圧迫に屈せず被害者と弱者のために正義を実現する人物。実際にこんな人が国会に行けば、国が変わると思う」と投票の感想を述べた。

2位に選ばれたソ・ドチョル刑事も、イ・ジェハン刑事と同様、映画『ベテラン』で権力に屈することなく自分の思うとおりに行動を押し通す人物である。ソ・ドチョル刑事の妻が「私たちはお金がないだけで、カオ(顔を意味する日本語の‘顔’から由来した言葉で、メンツを意味する俗語)がないわけじゃないでしょ?」と語った台詞は「時代の金言」となった。

学生らもこうしたまっすぐなキャラクターに支持を送った。チェ・ウギョム(4年)さんは「ソ・ドチョルは何が正しいかが分かっている。彼が国会議員になったら地域の‘カオ’が立ちそう」と語った。体当たりの彼の推進力も魅力として挙げられた。パク・ウンソ(2年)さんは「大きな事件をひとつ放り込んで国会を大騒ぎさせたりしそうで、面白そう」と期待をこめた。

ただ、学生らはソ・ドチョル刑事のような権力から自由な「義の人」が現実にも存在するとは捉えていない。パク・キョンゴン(3年)さんは「現実では出会えない人物なので、国会議員になるのを見たい」とし、現実の政治を遠まわしに皮肉った。

「カオ党」とか意味不明。(笑)

文中にもありますが、これは日本語の「顔」をそのまま音を残して用いられる俗語で、メンツやプライドといった意味になります。
要するに「プライド党」。

・・・・・・あんまり入れたくない。(笑)

そして次は。

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というわけです党
「今から僕にだけ票を入れます」
記号3番 ユ・シジン (『太陽の末裔』ソン・ジュンギ)


“ユ・シジンは無所属、私はあなたに所属”

3位を記録したユ・シジン大尉は、外見から醸し出される魅力もありつつ、いわゆる軍隊精神と呼ばれる強い推進力も票につながった。「彼女が好きなんです。国会に送ってください」(パク・ユンジェ、4年)といった意見などは、女性たちの間における現在の彼の人気のほどをうかがわせる。

「ユ・シジンは無所属。私はあなたに所属」(チョン・ジヘ、3年)、「魅力的なので外交や政治を行う際のプラス要因になる」(ウ・ゴウン、3年)、「すっきりとした印象とユーモア感覚で、若者から中年層まで人気を集められる」(ヤン・ソウン、3年)という外見上の好感度に対する意見も多いものの、「‘死にものぐるい’の精神で、推進すべき目的を粘り強く成し遂げそう」(チョン・ナヒョン、3年)のように推進力の面から好感を示す意見もあった。

ヤバイ。

これはヤバイです。私の投票先。(笑)

「今から僕にだけ票を入れます」とか、ドラマをご覧でない方には意味不明ですよね。それ以前に党名がワケ分からない。(笑)

以前このドラマのOSTを取り上げた時にも書きましたが(記事はコチラ)、このドラマはとにかくそのギャグとしか思えないソン・ジュンギさんの言葉遣いがミソで、ドラマが終わってもいまだにみんなおかしな命令口調やら、持ってまわった「~というわけです/○○ジ マリンミダ」の呪いが解けてません。

しかし「ユ・シジンは無所属、私はあなたに所属」と答えた人、センス最高です。絶対お友だちになれる気がする、私。
「マリンミダン(党)」とかめっちゃ笑えるのに、この面白さを伝えられない無念さよ、ああ無念さよ!(笑)

そして。

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呆れ党
「腐敗勢力、呆れるな」
記号4番 イ・バンウォン (『六龍が飛ぶ』ユ・アイン)


4位の太宗イ・バンウォンは軍事クーデターによって兄弟を殺し、父イ・ソンゲを駆逐した「問題の人物」だ。支持率が8%と高くはないものの、彼の権力へと突き進む「一貫した」野望が一部学生の支持を引き出した。キム・ヒョンギュン(4年)さんは「権力に対する欲求を率直に表現している。不必要な取り繕いがない。公式・非公式の場で同じ価値観を示すところが長所」という。「兄弟を殺した決断力で、腐敗勢力を一掃しそう」(キム・チャンヨン、3年)とし、強い推進力を高く買う意見もあった。

かぶってませんか、『ベテラン』の悪党と?(笑)

「呆れるな」は『ベテラン』のチョ・テオの台詞で、バンウォンはそんなこと言ってなかったと思いますが、まあ多目に見ます。
しかしこれも党名が絶妙ですね。「オイオタン(党)」。(笑)

続いて女性たち。

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諦めない党
「政治の世界も諦めない」
記号5番 チャ・スヒョン (『シグナル』キム・ヘス)


“チャ・スヒョンはキレ者でカリスマがある”

女性キャラクターであるチャ・スヒョン刑事とカン・モヨンチーフは5位と6位となった。それぞれ支持率は5%、3%と高くはないものの、チャ・スヒョン刑事の場合、支持層の意見は確固としていた。未解決事件を粘り強く追う彼女の姿から「冷徹な判断が可能と思われる。自らの信念が見て取れる」(ハン・スンア、2年)や「キレ者。カリスマがある」(ソン・ジヒョン、4年)といった評価が出された。

素敵。

フツーに素敵です、お姉さま。(笑)

真剣に票持ってるとしたら、私はここに一票ですね。

そして最後。

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忙しい党
「政治を救います」
記号6番 カン・モヨン (『太陽の末裔』ソン・ヘギョ)


カン・モヨンチーフの場合、演じたソン・ヘギョが過去に脱税疑惑にさいなまれたことに関連し、「脱税疑惑があっったので国会議員としての資質が不十分」というシニカルな意見もあった。政治家の脱税があまたある現実を皮肉っているのである。

相当どうでもいい。(笑)

キャッチコピーのあざとさで、ついうっかり誰かが一票入れちゃいそうですね。
いや、一票というより、もっと??
この美貌の外科医に「政治を救います」だの「生かします」だの言われたら、確かになんか入れちゃいそうです。
どう見ても泡沫候補ですが。(笑)


投票結果について東国大のキム・ジュンソク教授(政治外交学)は「最も視聴率の高い『太陽の末裔』のユ・シジン大尉よりもイ・ジェハン刑事やソ・ドチョル刑事が上回ったのは、民意の代表者とデート相手を区別して投票したため」とし、「女性の順位が低いのは、ドラマの中での女性キャラクターが男性主人公の恋愛対象に縮小されているためもあるが、この間韓国の一部女性政治家が表した限界が投影した結果とも見てる」と分析した。

なんのこっちゃ!(笑)

ソン・ヘギョさんは過去の疑惑までほじくりだされて、ちょっととばっちりですよね。流行の韓国的表現で言うところの「疑問の一敗」といった感じでしょうか。ご愁傷様です。(笑)

いや~、それにしても情熱感じる特集でした。
なにしろポスターの文句が秀逸すぎる!
この面白さを伝えきれないことがもどかしいです!(笑)

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この記事まとめた方、よっぽど選挙結果から読者が受けるであろう精神的ダメージを案じたんでしょうね。

本気で面白いとこ狙ってるのが、そこかしこから感じられます。

うなだれた有権者を吹き出させて精一杯元気付けようとしたんでしょうね。

爆笑を誘うこの力作がそこまで日の目を見れなかったのが、残念でなりません。(笑)