みなさま、こんにちは。

昨日は韓国映画のみならず、世界の映画界にとっても画期的な一日となりました。
なんと、ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族(原題:寄生虫)』がアカデミー賞で4冠を獲得、中でも最高の栄誉である作品賞に選ばれました。
感動冷めやらぬ中、今日はポン・ジュノ監督の受賞スピーチなどをご紹介しようと思います。
目下日本で絶賛上映中なので、ネタバレはありません。


オスカー4部門受賞

やだ~~~~。

もう、すごすぎる!

一夜明けてもまだ感激とにやにやが止まりません!(笑)

昨日はアカデミー賞の受賞発表がある日だったので、私も数日前からそわそわしながらその時を待っていました。

ポン・ジュノ監督の『パラサイト』は既に去年5月、カンヌ国際映画祭で最高の栄誉であるパルム・ドールを受賞していて、以来ハリウッドで開かれるアカデミー賞でオスカーを手にできるか注目されていたんですよね。

日本時間午前10時から始まるということで、仕事をしながらも気になっていたのですが、最初の速報が出ると同時に上がってきた「HUFFPOST KOREA」のこんな絵。

脚本賞?!

すごーーい!!

もう一つ確実に来るはず・・・・・・と思っていたら、きました! 国際映画賞!

ソダムちゃ~ん!
いや、ここはジェシカと呼ぶべきか?(笑)

すごいな~。オスカー2つも獲っちゃうなんて。すごい、すごい。

と勝手にこの二つで満足しかけていたのですが、なんとまた上がってくるではないですか!

監督賞?!

えー?!
アカデミー賞、どうした?!

このあたりから若干パニックになりかけましたが、最後本当に信じられないのが来ちゃいました。

むぁじで?!

はーーー。
本当にびっくりじゃないですか? 作品賞ですよ? 作品賞ってアカデミー賞の最高峰ですよね?
アカデミー賞に異変あり!(笑)

カンヌ国際映画祭でパルムドールの栄誉を手にしたポン・ジュノ監督でしたが、いつからか目にするようになった「アカデミー賞は?」の声。
昨年10月には米国の雑誌New York MagazineのWebサイト「Vulture」(バルチャー)の記者に、こんなことを聞かれていました。
「過去20年間、韓国映画は映画に大きな影響を与えたにも拘らず、ただの一度もオスカーにノミネートされなかったのはなぜだと思うか。」

ポン・ジュノ監督の答えは、こうでした。


私(記者)は彼に、過去20年間、韓国映画は映画に多大な影響を及ぼしたにもかかわらず、一度もオスカーにノミネートされたことがないという事実についてどう思うか尋ねた。「それは少し妙なことではありますが、大したことではありません」と彼は肩をすくめて言った。 「オスカーは国際的な映画祭ではありません。 オスカーは非常にローカルです。」

I ask what he thinks of the fact that no Korean film has ever been nominated for an Oscar despite the country’s outsize influence on cinema in the past two decades. “It’s a little strange, but it’s not a big deal,” he says, shrugging. “The Oscars are not an international film festival. They’re very local.”
(出典はコチラ

これはたまげました。
天下のアカデミー賞を「ローカル」、すなわち「アメリカ国内映画祭」と言い切っちゃったんですから!

このインタビューが行われた10月は、アカデミー賞候補に名乗りを上げるため監督や俳優、制作者が積極的にインタビューに応じ、アカデミー投票者たちにアピールを行う時期なのだそう。
実際アカデミー賞は前年度の1月1日から12月31日まで、米国LA地域の劇場で上映された映画をノミネートするそうなので、「ローカル」で正しいんです。だからこそ「外国語映画賞」というものが別枠で用意されているのです。
アメリカはこれまで世界のナンバーワンということを誰からも疑われてきませんでした。アメリカでナンバーワンということは、世界のナンバーワンであると。

カンヌ映画祭は日本の是枝裕和監督も『万引き家族』でパルム・ドールに輝いているとおり、作品性を重視し多様性を尊重する国際映画祭。
かたやアカデミー賞は、多くの人が「当たり前」とすんなり受け入れ、疑問の余地もないほど、「ハリウッドで作られた映画の中からナンバーワンを決める賞」だったんですよね。実際、長らく映画と言えばアメリカ、ハリウッドでした。

ポン・ジュノ監督のこの発言が相当な衝撃をハリウッド映画界およびアカデミー会員にもたらした結果かは分かりませんが、今年からアカデミー賞は「外国語映画賞」の名称を「国際映画賞」に変えました。
ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が受賞するとしたら、この賞だろうと誰もが思っていました。
ところが正式ノミネートだけでも国際映画賞(旧外国語映画賞)を皮切りに美術賞、編集賞、脚本賞、監督賞、作品賞と6部門も選ばれてしまい。
ひょっとしたら国際映画賞以外にも獲れてしまうかも、といやがうえにも期待が高まっていましたが、まさか4部門、それも監督賞と作品賞を同時になんて!

様々な媒体が報じている通り、1929年から始まり今年で92年目のアカデミー賞始まって以来、非英語映画が作品賞に選ばれたのは初めてです。
ちなみに同映画でカンヌ国際映画祭のパルム・ドールと翌年のアカデミー賞作品賞を受賞したのは、1955年-1956年のデルバート・マン監督のロマンティック・コメディ『マーティ』しかなく、ポン・ジュノ監督がこれで歴代2人目。

いやほんと、色々すごい!(笑)

この絵面見ただけで、感動です。(笑)

ポン・ジュノ監督とソン・ガンホさんは、互いに無名な頃から信頼し、関係を築いてきたお二人なので、最も輝かしい舞台で喜び合う姿が再びみられて、本当に嬉しいです。
(ポン・ジュノ監督とソン・ガンホさんの関係性については、カンヌでパルムドールを受賞した時のコチラの本文記事およびコメント欄で紹介しています。)

ポン・ジュノ監督、アカデミー賞に先立って1月6日(現地時間5日)に発表された全米の映画およびドラマに与えられる賞であるゴールデングローブ賞では、監督賞、脚本賞、外国語映画賞にノミネートされ、外国語映画賞を受賞。

その時は受賞の辞でこう述べていました。


「字幕の壁・・・・・・壁というほどのこともない、1インチほどの壁を乗り越えれば、みなさんはずっと多くの映画を楽しむことができます。ペドロ・アルモドバルをはじめ素敵な世界的監督と共にノミネートされ、光栄でした。私たちが使っている言語は一つだと思います。それは、『映画』という言語です」

素晴らしい。

「外国語映画賞」受賞者として、これ以上のスピーチはないのではないでしょうか。

悔しかったんでしょうね、正直。「外国語映画」の枠に閉じ込められるのが。

この短くもインパクトのあるスピーチがまたまたアカデミー会員たちの投票行動に影響したのかは分かりませんが、蓋を開けてみるとアカデミー賞で4度もステージ上に呼ばれるという、予想を超えた嬉しい事態となりました。

まずはじめに名前を呼ばれたのが、脚本賞。
ハン・ジンウォンさんと共にステージ上がり、ポン・ジュノ監督はこう述べました。

「ありがとうございます。大変光栄です。
シナリオを書くというのは、実は孤独な作業です。国を代表してシナリオを書いているわけではありませんが、この賞は韓国がもらった最初のオスカー賞です。ありがとうございました」

こちらが動画です。

ダイアン・キートンとキアヌ・リーブスからオスカー賞を受けるなんて、それだけで大興奮!

続いて受賞した「外国語映画賞」では、こう話していました。


「ありがとうございます。大変光栄です。この賞のカテゴリー名が変わりましたよね。外国語映画賞から国際映画賞に変わりましたが、名前が変わった後の初めての受賞となり、より意義深く感じています。名称が象徴するものがあると思うのですが、オスカーが追求する方向に支持と拍手を送ります。」

いちいち言うことが素晴らしい。

そして圧巻は、クエンティン・タランティーノ監督(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)、トッド・フィリップス監督(『ジョーカー』)、トーマス・ニューマン監督(『1917 命を懸けた伝令』)、そしてアカデミー作品賞に過去9度もノミネートされている巨匠マーティン・スコセッシ監督(『アイリッシュマン』)という錚々(そうそう)たる顔ぶれの中から選ばれた、監督賞。

この時の受賞スピーチが本当に感動的でした。


「先ほど国際映画賞を受賞し、今日やることは終わったなとリラックスしていたのですが・・・・・・。
本当にありがとうございます。若かりし頃、映画を学んでいた頃に、常に胸に刻んでいた言葉がありました。『最も個人的なことこそ、最もクリエイティブなものだ』。それが誰の言葉だったかというと、本で読んだ言葉だったのですが、我らが偉大なるマーティン・スコセッシの言葉でした。
私は学校でマーティンの映画を観て学んだ人間です。ともに候補になれただけでも光栄なのに、賞を頂けるなんて思ってもみませんでした。
私の映画がまだアメリカの観客、人々に知られていなかった頃から、いつも私の作品をリストに挙げて喜んでくださったクエンティンさんがいらっしゃいます。本当に愛しています。クエンティン、アイラブユー。そして、ともにノミネートされたテッドとサム。お二人とも私がとても尊敬する素敵な監督です。このトロフィーをオスカーが許してくれるのでしたら、テキサス・チェーンソーで5等分したい気持ちです。ありがとうございます。明日の朝まで飲み続けたいと思います。」

「クエンティンさん」と訳しましたが、実際は”쿠엔틴 형님(クエンティン ヒョンニム/クエンティン兄さん)”と言ってるんですよね。
「ヒョンニム」からにじむ、敬愛の念。(笑)

でも何と言っても、巨匠マーティン・スコセッシ監督に栄光を捧げた感動のシーン。
一緒にノミネートされた監督たちへの賞賛と配慮を忘れないポン・ジュノ監督に、多くの人が魅了された瞬間ではなかったかと思います。

スパイク・リー監督がプレゼンテーターを務めたこちら、動画でご覧ください。
まずはスピーチ全文を載せたYTNの映像。

そしてこちらは、名前を呼ばれた直後の様子とマーティン・スコセッシ監督を称える姿がより詳細な「聯合ニュース」の動画。

マーティン・スコセッシ監督が感激している姿に、うるうるきてしまいます。

感動。

とても美しいスピーチシーンでした。

東アジアの小さな半島で、自分の言葉を胸に刻み、自分の映画を観て学びながら映画監督を夢見てきた青年が、自分と一緒にオスカー候補に選ばれ、こうしてトロフィーを手にし、ステージ上から思いがけず賛辞を送ってくれる。
こんなに誇らしいことって映画監督にとってあるでしょうか。
マーティン・スコセッシ監督の感激した面持ちと、巨匠を称えるスタンディングオベーションがまた美しく、胸を打ちました。

・・・・・・しかし「テキサス・チェーンソー」というのは、まさかギャグですか?
『悪魔のいけにえ』のリメイクホラー映画に『テキサス・チェーンソー』というのがありますが、殆どの人は「テキサスの電気斧って???」になってますよね。間違いなく。(笑)

浮かれついでにこんな浮かれた動画も載せておきましょう。
4回も壇上に上がって大忙しのポン・ジュノ監督をまとめた聯合ニュース。
見どころは、最初に脚本賞を獲った時のポン・ジュノ監督。
人のスピーチ、聞いてません。(笑)

あー、何回見てもいい。(笑)

もう、最高です。
観客として、心から嬉しいです。
昨年アカデミー賞作品賞を受賞した『グリーンブック』も本当に素晴らしく感動的な作品で、大好きなのですが、『グリーンブック』もオスカーで作品賞と監督賞を同時受賞した作品だったんですよね。
私の人生ベスト10映画に入る『グリーンブック』に続いたのがポン・ジュノ監督だったのも、個人的ながらとても嬉しいです。

ポン・ジュノ監督のおかげで昨日は一日中浮かれ、今日もまだ興奮が冷めません。

最後に、昨日また人々を大爆笑させてくれた俳優キム・ウィソンさんのフェイスブックを貼っておきましょう。

ポン・ジュノ監督、兵役免除いっときましょう。

爆笑!

とっくに終わってるっちゅうねん!

なにか国家的な偉業を成し遂げると「兵役免除してあげるべき!」となる韓国ならではの発想を生かしたギャグがここに。(笑)

キム・ウィソンが誰だがお分かりにならない方は、『新感染 ファイナルエクスプレス(原題:釜山行き)』の悪役おじさんです。(笑)
実は密かに出てるんですよね。『パラサイト』で長男を演じるチェ・ウシクさんが『新感染』にも。
隠れた接点発見。(笑)

昨日の発表以降、『パラサイト 半地下の家族』を見に行く人がまた増えているみたいです。
まだという方、是非ご覧になられてみてください。
なんでもポン・ジュノ監督とソン・ガンホさんが2月下旬に日本に再びPRにくるとの情報も目にしましたが。
もし本当なら、人が殺到するでしょうね。
かくいう私も行きたいです!(笑)