みなさま、こんにちは。

今日は、昨日韓国で「4.19革命60周年」を記念して発表された往年の名曲『常緑樹』の2020年バージョン、『常緑樹 2020』をご紹介します。
今回のリメイク版公開は、「新型コロナと闘う世界の医療従事者へ」との副題が付けられており、新型コロナウイルス対策で日々闘ってくださっている世界の医療従事者に向けた感謝と励ましが込められています。

歌の紹介に入る前に、先日4月15日に行われた韓国国会議員総選挙。

300議席中、与党の「共に民主党」が選挙区と比例を合わせて単独180議席獲得と、歴史的大勝利となりました。

祝!

あー、もうほんとに!
どうなることかと!
どうなることかと肝を冷やしました、この数か月!

韓国で与党が単独議席5分の3を獲得したのは、1987年の民主化以来初めてのこと。
COVID-19事態の最中に迎えた総選挙でしたので、当初投票率が非常に低いのではないかと危惧されていたのですが、予想を覆し期日前投票だけで27%、最終投票率は66.2%にも及びました。
海外に住む在外有権者の半数にあたる8万5000人余りががコロナ事態による移動制限などで投票できなかったことを考えると、行ける人たちはかなり行ってくれた、高投票率ではなかったかと思います。1992年、民主化後初めて迎えた総選挙で71.9%を記録して以来の数字です。
高い投票率が与党の圧勝に繋がり、本当に胸をなでおろしました。

検察改革の旗印となっていたチョ・グクさんの法務長官任命をきっかけに突如吹き荒れた、検察クーデター。
家族に対するいわれなき誹謗中傷やでたらめなフェイクニュースが世の中を瞬時に席巻する中、家宅捜索に続いて無理な起訴・拘束まで次々と行われ、検察が4月の総選挙での野党を勝利させることを目的にしていると気づいた時は、本当に血の気が引く思いでした。
やっと「常識」が国会でも圧倒的多数に。

日本もそうですが、実は韓国もマスコミの偏向報道が相当に酷いんですよね。
朴槿恵弾劾の局面で信頼を集めたJTBCは、検察クーデター事態では一貫して検察の立場に立って報道し続けたため、メインニュースの視聴率が急落。ソン・ソッキさんも一気に信頼を失い、アンカーも退きました。
JTBCは親会社が中央日報なのですが、ここは創業者が検察出身で、オーナー一家と検察との黒い癒着が公然と噂されているところなのですよね。設立当初から危惧されていたJTBCの限界が、ここにきてあからさまになってしまいました。
こういう新聞社ばかりが日本語訳を付けてまことしやかに日本に偏った韓国情報を流布するので、本当に困りものです。
検察の共犯となりメディアが流すフェイクニュースと偏向報道の洪水に多くの市民が飲まれていましたし、新型コロナ事態では感染爆発が局地的に起こりもしたため、メディアがこぞって政府バッシングを繰り広げる中で迎えた不安いっぱいの選挙戦だったのです。

もし韓国の報道機関がせめて今の10分の1でも公正な報道を行っていたら、朴槿恵弾劾と共に淘汰されるべきだったあの腐敗した勢力が、3年を生き永らえた上いまだ100席以上も議席を取ることにはなかったでしょうから、それを思うとメディアの偏向報道が腹立たしい限りですが、賢明な有権者たちが常識的な判断を下してくださって本当に幸いでした。

というわけで安堵して迎えられた今年の「4月16日セウォル号6周忌」および「4.19革命」60周年。
「4.19革命」は日本のみなさまには馴染みのないかと思いますが、不正選挙により長期独裁を目論んだ韓国初代大統領、李承晩(イ・スンマン)を1960年4月に民主的なデモ隊が倒した、韓国現代史上の大きな事件のことです。
「4.19学生革命」とも呼ばれるのですが、その名のとおり、李承晩打倒のために先頭に立って立ち上がったのは学生たち、しかも最初に街頭に出たのは大学生ではなく高校生たちでした。
186名の尊い犠牲者と6000人余りの負傷者を出した末、圧迫に屈して下野した李承晩。李承晩はのちにハワイに亡命したのですが、その後も新たな独裁者朴正煕(パク・チョンヒ)が登場するなど、韓国の歴史は民主化のために戦う歴史なんですよね。
今年の4月19日をその残党に大勝して迎えられたのは、示唆的でした。

今年は例年とは異なり、世界的に猛威を振るうCOVID-19と格闘する全世界の医療スタッフたちにエールを送ることになった韓国の「4.19(サイルグ)」。
新型コロナ防疫でいうと、韓国は世界のどの国も試みなかった感染ルートの徹底追跡を当初から行い、圧倒的検査量で感染者を見つけ出し、拡大を遮断する作業を行っているので、目下世界的に「防疫の新たな教科書を書いている」と評されています。
とはいえ勿論、ウイルスの流行を完全に抑え込むことなどできる筈もなく、韓国社会も次の感染爆発に重々備えていなければならない、気を引き締めていなければならない状況なのは変わりありません。苦しみの中にある世界の人々、助けを求める人々を救うため孤軍奮闘する世界の医療スタッフに、「共に頑張ろう!」とエールを送るこの連帯の思いが、この歌を通じて少しでも伝わればいいなと思います。

歌のリメイクに参加してくれたのは、24チーム36名の人気歌手のみなさん。

アリ

キム・フィール

ハ・ドンギュン

パダ

カンサネ

ナ・ユンゴン

EXID ソルジ

キム・ジョハン

Red Velvet ジョイ

Super Junior リョウク  イェソン  ギュヒョン

ミュジ

LABOUM

Brown Eyed Girls  JeA

B1A4 サンドゥル

ホン・ジニョン

ペク・チヨン

ユン・ドヒョン

TIGER JK

Bizzy

Ailee

TOMORROW X TOGETHER

OH MY GIRL  ユア

イ・ウンミ

映像に登場する順に並べてみました。他に、美声で有名なオ・ヨンジュン君も参加しています。

『常緑樹』の作者は、韓国フォークソングの代名詞、キム・ミンギさん。
1951年生まれのキム・ミンギさんはソウル大生だった1970年に『朝露/아침이슬』を作り、世に知られました。
朴正煕の軍事独裁政権下、自由に歌うこともかなわなかった当時の韓国。キム・ミンギさんの作った歌は、殆どが「禁止曲」扱い。
自らも歌を理由に投獄されています。

キム・ミンギさんの歌は名曲揃いで、詩も寓話的なものが多いのですが、直接的な政治批判を行ったものでなくても、「抵抗」や「不条理」、「苦痛」、「世のはかなさ」を感じさせるだけで取り締まりの対象とされてきました。

『常緑樹』はそもそもは1977年、投獄後、紡績工場の労働者として働いていたキム・ミンギさんが同僚の結婚式での祝歌として作ったものだそうで、1993年に発表されたキム・ミンギさんの3枚目のアルバムに収められています。

キム・ミンギさんと言えば、セットで思い浮かぶのが、歌手のヤン・ヒウンさん。

ヤン・ヒウンさんは『朝露』を歌った歌手として知られています。
1971年にはレコードが出ており、勿論これもすぐに禁止曲になってしまいましたが、『朝露』は70年代の韓国学生運動を象徴する歌となりました。

また、この『常緑樹』も1979年にヤン・ヒウンさんがアルバムで発表しているんですよね。
「『常緑樹』といえばヤン・ヒウン」というくらい、ヤン・ヒウンさんの代表曲。
ちなみに1979年、ヤン・ヒウンさんがアルバムに収録した当時の曲名は、「荒野の青々とした松の葉のように/거치른 들판의 푸르른 솔잎처럼」だったそうです。
その後1997年にリリースされたアルバム『朝露』の中に『常緑樹』のタイトルで収録されています。

韓国がIMF危機を迎え非常に苦しかった1998年。発足したての金大中政権下、プロゴルファー、パク・セリさんの映像とヤン・ヒウンさんの歌『常緑樹』を組み合わせ「困難に打ち勝ち、最後に勝とう」というメッセージを込めた公共広告が製作され、大きな共感を呼びもしました。

そう考えるとこの歌は、70年代の民主化運動、IMF危機で歌い継がれていたのですよね。

こちらが当時の広告映像。

のみならずこの歌は、廬武鉉大統領が大統領選に出馬する際、肉声で歌ったものをキャンペーンソングにしていたので、廬武鉉大統領を偲ぶ歌としても記憶されており、2016年11月26日、150万人が集まった朴槿恵弾劾を求めるロウソクデモでもヤン・ヒウンさんがこの歌を歌ってくれたため、歌を知らなかった若い世代にも認知されました。

こちらが2016年11月26日、朴槿恵弾劾を求めるロウソク集会のステージで歌うヤン・ヒウンさんの動画。

韓国の大事な局面ごとに歌われ、そのたび人々に慰めと励ましを与えてきた、実にストーリーの多い歌です。改めて。

というわけで、お待たせしました。
こちらが今回リメイクされた『常緑樹』です。

動画はyou tubeの韓国青瓦台公式アカウントより。
各国言語で字幕が付いており、日本語字幕もあります。

歌のクライマックスで入る言葉は、韓国疾病対策本部長のチョン・ウンギョンさんのもの。

『保健医療スタッフの献身と、積極的な防疫対策にご協力下さった国民のみなさまに敬意を表します』とあります。

日本語字幕のみの公式動画もありましたので、合わせて載せておきます。
こちらには最後のセリフが入っていません。

世界中が大変な状況ですが、国際的にも助け合い、手を差し伸べ合える世界であれればと願います。

『상록수 / 常緑樹』

저 들의 푸르른 솔잎을 보라
돌보는 사람도 하나 없는데
비바람 맞고 눈보라쳐도
온누리 끝까지 맘껏 푸르다

서럽고 쓰리던 지난날들도
다시는 다시는 오지 말라고
땀 흘리리라 깨우치리라
거칠은 들판에 솔잎 되리라

우리들 가진 것 비록 적어도
손에 손 맞잡고 눈물 흘리니
우리 나갈 길 멀고 험해도
깨치고 나아가 끝내 이기리라

우리들 가진것 비록 적어도
손에 손 맞잡고 눈물 흘리니
우리 나갈 길 멀고 험해도
깨치고 나아가 끝내 이기리라
깨치고 나아가 끝내 이기리라

あの野の青々とした松の葉を見よ
構うものなど誰もいないのに
雨風に打たれ吹雪にさらされようとも
世界の果てまで存分に青い

侘しく苦しい過ぎ去った日々が
もう二度と訪れることのないよう
汗を流そう 目覚めていよう
荒れた野原の松の葉となろう

たとえ我ら持たざる者であろうとも
手に手を取りあって涙を流せるのだから
我らの行く手が遠く険しくとも
承知の上で進み 終には勝たん

たとえ我ら持たざる者であろうとも
手に手を取りあって涙を流せるのだから
我らの行く手が遠く険しくとも
承知の上で進み 終には勝たん
承知の上で進み 終には勝たん