みなさま、こんにちは。

いよいよもってうだるような暑さになってまいりましたが、お元気にお過ごしでしょうか。
人間だけではなく、動物たちも、草花までも暑さにぐったりさせられていますね。
夜も熱帯夜続きで眠りが浅くなりがちなので、健康管理に十分留意したいところです。

さて、本日もBTSの話題。
昨日未明に’Permission to Dance’がビルボードで1位を獲得しましたが、それを受けMBCのニュース番組「ニュース外伝」に音楽評論家のキム・ヨンデさんが出演され解説していたので、今日はその内容を取り上げてみようと思います。

韓国の音楽評論家キム・ヨンデさんは、BTSの解説本を出版されており、日本でも翻訳著書が出ている方です。

去る5月23日、BTSがBBMA(ビルボード・ミュージック・アワード)で4冠に輝きましたが、韓国で独占生中継していたMnetにBTSの解説者として出演されていたので、ご存じの方も多いかと思います。

キム・ヨンデさんは2007年から13年間米国に滞在され、米国で音楽評論家として活動されていたのですが、去年韓国に帰国。私がいつも視聴している時事番組で韓国中で最も聴取率の高いラジオ番組「キム・オジュンのニュース工場」に昨年9月に初出演され、BTSについて解説しているうちにどんどん大衆に知られるようになられたんですよね。
BTSについては、これまでしっかり深度をもって分析したり解説したりすることを韓国主要メディアがことごとく怠っており、グループが大きな成功を収めた後も意図的に活躍を隠すかのごとくスポットライトを当てずにいました。
実はそうした傾向は今も続いています。

米国にいたキム・ヨンデさんは、そもそもは当然ながら米国人歌手を対象に音楽評論家として活動していらしたそうですが、米国の音楽シーンで2014年からBTSがファンダムを形成していく様を目撃することになり、彼らに注目するようになったそうです。

‘Butter’がビルボードで5週連続1位を獲得した時もキム・ヨンデさんを招いて特集してくれたMBCのお昼の時事番組「ニュース外伝」が昨日も期待通りキム・ヨンデさんを呼んでくださったので、今日は7月20日放送分の翻訳をアップします。

 

 

アンカー:BTSがBTSに勝ちました。’Butter’に続いて新曲の’Permission to Dance’がビルボードのメインシングルチャート1位を獲得するという大記録を打ち立てました。音楽評論家のキム・ヨンデさんに詳しいお話を伺ってまいります。こんにちは。

キム・ヨンデ:こんにちは。

アンカー:まだ何週も経っていないのに、またお会いしましたね。

キム・ヨンデ:そうですね。

アンカー:記録を作り続けているので。

キム・ヨンデ:そういうことですね。

アンカー:「BTSがBTSに勝った」、この表現はいかがですか?

キム・ヨンデ:絶妙だと思います。

アンカー:はい。同じグループがずっと1位をキープした後、別の曲で1位を塗り替える。これは確かにすごい記録ですよね、ビルボードで。

キム・ヨンデ:そうした事例がほぼないです。ビルボードHOT100の集計が始まって以来63年なのですが、全体を通して今回のBTSがおそらく14番目だと思います。それほど希少な記録ですし、「バトンタッチ」ということで、ファンの間で一種の願い事のように語られていたことだったのですが、本当に叶ってしまいましたね。とても、なんというか意外な記録でもありますし、目にしてもなお非現実的な感じがします。

アンカー:14回ですか。

キム・ヨンデ:そうです。

アンカー:以前それを成し遂げが歌手やグループは、すごい面々なのでしょうね?

キム・ヨンデ:ビートルズなどのグループやボーイズⅡメン、テーラー・スウィフト、ドレイクといった最高の歌手たちです。なぜなら、ヒット曲自体を続けざまに放つこと自体が難しいですが、必ずしも1位だけがヒット曲ではないですよね?ですがそこでさらに1位にならなければいけないわけです。さらに時期的にも絶妙に合わせないといけませんので。

アンカー:時期というと?

キム・ヨンデ:本人たちの曲が1位にある状態で、自分たちの新曲がある意味引きずり下ろす形で上がらなければいけないわけじゃないですか?状況的にも色々と合致しなければいけないわけですが、それくらいBTSの人気が凄まじいということです。

アンカー:さらに目を引くのは、2位争いを繰り広げていた他の曲も錚々たる歌手のようですよね。

キム・ヨンデ:BTSと何週にもわたり、ほぼ7,8週間1位争いを繰り広げているオリビア・ロドリゴという、アメリカのポップシーンが大手を振って育てているポップスターが一人いますし、最近はジャスティン・ビーバーやポスト・マローンなど大スターがほぼ同時に新曲を出したんです。ですので音楽専門家の間では、「’Butter’まではいいとしても’Permission to Dance’は難しいのでは」という予想もあったんです。ですが、見たかと言わんばかりにいわゆるバトンタッチを成し遂げました。

アンカー:聞きたいことがたくさんあるのですが、’Permission to Dance’はどういう曲なのですか?

キム・ヨンデ:タイトルが難しそうに聞こえますが、’Permission’は「許可」という意味ではないですか。「ダンスの許可」ということですが、これが反語のタイトルなんです。実際には許可は必要ないという。多様な解釈が可能かと思いますが、基本的なテーマが最初の’Dynamite’から今まである意味繋がってまして、コロナ、パンデミックの渦中で挫折した人々に投げかける希望といったようなものなんです。特に今回の’Permission to Dance’はもう少しメッセージ性が強調された曲でもありますし、結局「君たちも僕たちみんな許しを得ず踊れるんだよ」と。ある意味では踊るという行為自体が今の厳しさに打ち克ち、払いのけ、ダンスで互いの傷ついた心を癒そう、そういった意味も持っているわけです。

アンカー:踊るのに許可などいらない、と。

キム・ヨンデ:そうです。私たちはみんな同じなんだと。今パンデミックが私たちに与えている教訓もそうなのですが、私たちは誰もが特別じゃない、こうした大きな災難の前では。そんなメッセージがあるんです。歌がそういう部分を反映しているのではないかと思います。

アンカー:ここまでくると、つまりバトンタッチをするほどまでになると、米国の音楽界に中心に完全に上り詰めたと。これは確かに評価できますよね?

キム・ヨンデ:HOT100というチャートがそういう意味で作られてるんです。目下の主流のバロメーターとなるものを指標として作ったのがHOT100なんですよね。そこで1年以内、1年にも満たない間、正確には10か月の間に5曲が1位になったんです。最後に同じような記録をうち立てたのが、マイケル・ジャクソンでした。マイケル・ジャクソンはたしか9か月間で5曲を1位にしました。なのでこれ自体歴史上2度目の記録なのですが、このこと自体、現在のアメリカの主流産業の中で相当な中心に立っていると。そうした姿を見せてくれているのではないかと思います。象徴的に表していると見るべきでしょう。

アンカー:音楽をよく知らない人たち―私を含め―としては、マイケル・ジャクソン級になったと思えば?

キム・ヨンデ:いまアメリカにいる私の知り合いは、BTSを個人的に好きか嫌いかはさておき、BTSを知らない人はいません。

アンカー:要はビートルズ級なんですね?

キム・ヨンデ:BTSというグループを知らない人はいません。単に認知度で見ても。実際にファンダムの強力な支持勢力を見ても今やトップレベルに上り詰めたグループであることは、疑いの余地がありません。

アンカー:ここまでくるとアメリカ市場ではなく、アメリカ市場が全世界のポップス市場を掌握していますので、全世界で1位の歌手だと見るのが、そういう表現はちょっとダサいですが、そう言えるのではないですか?

キム・ヨンデ:アメリカでの人気が、アメリカでだけ際立って人気がある、ということではないんです。南米やヨーロッパなど他の国でも実は似たような成績を収めているのですが、私たちが大衆音楽の象徴的な市場として、最も重要な市場としてアメリカを取り上げているわけです。つまり、メジャーリーグや他のスポーツも同様ですが、大衆文化として最も主導権を握っているものがアメリカで1位になるということは、当然全世界でトップクラスの人気を得ていると言えます。

アンカー:ヨーロッパや他の国は当然トップクラスでしょうけど、順位はどうなってるんですか?

キム・ヨンデ:イギリスのチャートでは最高2位まで記録したことがあります。イギリスのチャートのほうがアメリカのチャートよりも少し保守的だと評されています。

アンカー:後追いする感じですか、通常は?

キム・ヨンデ:後追いというよりは、もう少しローカル・アーティスト、つまり自国のアーティストに親和的なチャートになっています。いずれにしてもそこでも2位まで記録したことがありますし、他の国でも1位の行進は数十か国で実は続いています。

アンカー:すごいですね。前回も伺って、また伺わずにおれないんですけど、このパワーは一体何なんですか?ここまでのパワーは?

キム・ヨンデ:政治を例に挙げるなら、コアな支持層というものがあるじゃないですか。コアな支持層が強力に周辺の人々を説得し、関心のなかった人にも伝播していくじゃないですか?BTSの人気というものが、彼らの魅力と、彼らを最初に見出したコアな支持勢力が基盤となり、周りの人たちに徐々に知らせていく、若干下からの人気とでも言いますか、そういう性格を持っています。これはなかなかに崩れづらいです。また、短期間に成績を上げ得る集中力などが高いと。それが他の単に認知度だけが高い歌手と比べた時、BTSが大いに差別化できる点ですね。

アンカー:コアな支持層の忠誠度が強力で強固だと解釈すればいいですか?

キム・ヨンデ:そうです。実は大衆音楽では全ての人がそれを手にするために努力しています。誰もがそうじゃないですか?自分の音楽をいつも支持してくれるファンをどれだけ獲得できるか。ただし、それを成し遂げられる歌手は、時代別に見ても何チームもいません。今の時代、2020年代としましょうか、BTSがその点においては最も秀でている歌手と言えます。

アンカー:となりますと、質問からさらに質問がつながりますが、その強固なコア支持層が生まれた理由とは何なのでしょう?

キム・ヨンデ:色々あると思います。一つは人間的な魅力です。人間的な魅力というものが完璧さからくる場合もあれば、物足りなさからくる場合がありますよね。強さだったり弱さだったりも。BTSの場合はどこか足りない感じがしつつも(BTSの)人間的な魅力から、ファンとしては自分がその空白を埋めてあげたいという感覚を随分与えてきましたし、最初の頃BTSは英語では’underdog(負け犬)’と言いますが、弱者のポジション、国内でもそうでしたし、全世界的な市場から見ても弱者のポジションから出発したために、ファンの介入できる程度と言いますか、忠誠度と言いますか、ファンがBTSに対して感じる切なさが、相対的に他の初めからスーパースターとして誕生したグループとは異なる感情を抱かせたのではないかと思います。
私は音楽に負けず劣らず人間的な魅力、彼らのファンとの関係などを重要な理由としてあげたいです。

アンカー:でも、グループ全体としてのBTSがあり、構成する個々人としてのBTSがあるわけで、その個々の魅力やカラーは違うのですか?

キム・ヨンデ:面白いご指摘ですね。BTSというグループの中に実は多様な人が多様な理由で好きになれるものがすべて隠されているとお考えになればいいと思います。知的な面、軟弱な面・・・・・・。

アンカー:軟弱な面とは誰ですか?

キム・ヨンデ:誰とは言いませんが。センチメンタルな面など。こうしたことが各々人々が好きになる別々の理由を与えています。音楽自体を見ても、私たちが「エッジがある」と表現しますが、強烈な音楽から’Permission to Dance’のように楽しめる音楽までスペクトラム自体が非常に広いので、実は嫌うのが難しいんです。なぜなら、どこかには好きになる理由を発見できるので、実はそれが普遍的な全世界的人気を作り出す重要な理由ではないかと。

アンカー:先ほど’underdog(負け犬)’から出発してここまで上り詰めたためにコア支持層が強固だとおっしゃいましたが、それと合わせて、足りない面があるがゆえに好きになり、それを埋めてあげると。両者は同じ文脈ですか、それとも少し違う話なのですか?

キム・ヨンデ:似ていますよね、実は。ここでいう「足りない面」とは才能が不足しているだとかの意味ではなく、スーパースターというものが多くの資本とパワーに左右される面があるわけですが、BTSはグループとして相対的にそうした恩恵を受けられずに出発したんですよね。ですのでファンたちが「彼らのことは私たちが守ってあげなきゃ」、「一緒に歩んでいくグループだ」という意識を最初から随分持っていましたし、そうしたものが音楽を通じて継続的にフィードバックし合う中で強化された側面があります。常にBTSの音楽には、究極的にはファンに向かって投げかけるメッセージとして解釈できる余地がありますし、実際彼らがファンへのメッセージだと言った場合に、単純に何人のためということではありません。なぜなら今やグローバルに数百、数千万のファンがいるわけじゃないですか。先ほどの’Permission to Dance’の場合もファンに投げかけるメッセージでもありながら、それ自体がファンに代表される全世界の人々に向かって投げかける肯定的なメッセージだと解釈できます。

アンカー:となりますと、現在のこのパンデミックな状況下で色々な障害があると思うのですが、それ自体が特に障害にもなっていないのですね、BTSの躍進にとっては?

キム・ヨンデ:本来なら大きな打撃ですよね。なぜなら今が一番歌手として大きな収益を上げられる時ですし、知名度を維持するのがツアーなんですよね。公演を事実上できない状態なので、オンラインライブなどで代替しているのですが、こうした危機、パンデミック下において全世界の人々に投げかける希望のような歌を続けざまに発表し、ある意味「両王手」と言いましょうか、ウサギを二兎ともつかんだような状況になっていると評価できます。

アンカー:伺いたいことはまだまだあるのですが、時間が来てしまいました。のちほどまたyou tubeで詳しくお伺いします。この場はここまでといたします。後程またお会いしましょう。

 

この後you tubeで話が続けられ、その話も面白かったので、引き続き取り上げていく予定です。

それにしても、改めて聞くと驚きますね。
たった10か月の間に、ビルボードで1位になった曲が5曲もあるなんて!
‘Dynamite’、’Life Goes On’、’Butter’、今回の’Permission to Dance’のオリジナル曲の他に、リミックスのゲストとして参加した’Savage Love’まで。
その前に類似の記録を打ち立てたのが9か月間で5曲を1位に押し上げたマイケル・ジャクソンだというのには、本当にたまげました。

BTS、音楽の世界に確実に新しい章を書き加えてます。