10 2021年11月
みなさま、こんにちは。
遅れてやってきた分を取り戻すかのように一気に秋が進んでいきますが、みなさまお元気にお過ごしでしょうか。
朝晩冷え込むようになってきたので、ここから紅葉が始まる地域も多いかと思います。
気づけば年末、なんてことにならないよう時々の自然も楽しんでおきたいですね。
さて、今日はソル・ギョングさんとピョン・ヨハンさん主演映画『茲山魚譜-チャサンオボ-』がもうじき日本公開が始まるようなので、今一度取り上げてみようと思います。
これは韓国でのポスターです。
いやー、『茲山魚譜-チャサンオボ-』は韓国で今年の3月31日に公開された作品ですが、こんなに早く日本に入ってくるなんて嬉しすぎます!
以前韓国での公開を受けて、ここでも取り上げています。
映画『茲山魚譜』は朝鮮時代の歴史上の実在人物である丁若銓(チョン・ヤクチョン)が流刑に処された地・黒山島(フクサンド)で記した海洋生物の百科事典ともいえる専門書「茲山魚譜(チャサンオボ)」からそのまま名前が付けられています。詳しくは過去記事をご覧ください。リンクはコチラです。
韓国では公開当時からすこぶる評判がよかったのですが、にもかかわらずコロナ禍により観客が伸びず34万人という信じ難く低いスコアで劇場公開を終える憂き目に遭いました。
それでも映画としての価値は認められ、第57回百想芸術大賞では大賞を受賞しています。
っていうか今年これ以上の映画があるのかなっていう私の率直な思い。
ほんとに、後世に残る名画ってこれのことじゃないかと思うんですよね。
脚本、映像、演技、すべてがほんっっとうに! 素晴らしいです!
ええ、久しぶりにウザ芸かましてみました。(笑)
私はこの映画は見たのですが、実はやっぱり見る前は「白黒」に身構えていました。
白黒映画ってもはや見ることないですよね。
暗い、痛い、悲しい、みたいなイメージもありますし。
「ミッシェール!ミッシェール!」みたいな。
・・・・・・あ、すみません。『禁じられた遊び』です、今の。(笑)
でもこの『茲山魚譜-チャサンオボ-』は、見終えたらもう「この映画は白黒以外の選択肢はなかったなと」と思われるはずです。
私が太鼓判を押します。なんの役に立つか分かりませんが。(笑)
本当に映像が素晴らしくて、白黒の世界で息を呑みます。
白黒の世界で息を呑むということがあるのだなと知りました。
白黒のおかげでいやでも記録映画のような趣が確かに出るのですが、であるがゆえにまるでタイムスリップしてその場を覗いているかのような感覚になったり。
そして、見る前までは「白黒画面で疲れそう」と思っていたのですが、本当に癒されました。
癒されたのが、白黒効果なのか、映画そのもののストーリーなのか、そのどちらもなのかは分かりませんが。
と絶賛したところで、日本版の予告編を貼っておきます。
こちらは本予告。
こちらはもう少し長いバージョンの予告編。
前半部分に本編予告編には含まれていないタコを食べるシーンが含まれたものです。
あー、予告編を見ただけで、また見たい。(笑)
この島に赴任している役人に扮するチョ・ウジンさんが、またいい味を出しているんですよね~。
チョ・ウジンさんはこの映画では「友情出演」という位置づけになっているのですが、この方の芸達者ぶりには本当に作品を見るたびに感嘆します。
声の出し方、目の開き具合だけでもう笑っちゃうっていう。(笑)
この映画は本当にいい映画でした。
私の中では既に2021年ナンバーワン作品です。
みなさまもよろしければ是非ご覧になられてみてください。
11月19日から順次公開だそうなので、こちらに映画公式サイトのリンクを貼っておきますね。
リンクはコチラです。
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6 Responses for "映画 『茲山魚譜-チャサンオボ-』 11月19日より日本公開 ソル・ギョング ピョン・ヨハン"
お久しぶりのこんにちは(*^_^*)
この映画、日本で公開されるのですね・・・といっても都会のミニシアターでの公開で、とても残念でなりません。つくづく都会に住む人を羨ましく思います。
以前の白香夏さんの映画紹介でタイトルを記憶していました。いつぞや衛星劇場でこの映画の製作発表会のようなものを見ました。2人の主演男優はカラーで(*^_^*)
白黒の作品ながらとても魅力溢れる紹介だったので、機会があればぜひ見たいと思っていました。
調べてみたら、この監督の作品は結構みていて、この最新作も気になってしようがありません。
古くは「王の男」、最近ではイ・ジェフンの「金子文子と朴烈」、カン・ハヌル「雲と風と星の詩人~ユン・ドンジュの生涯~」など7作品見ていました。
チョ・ウジンさんをはじめイ・ジョンウンさんなど脇で演技が光る俳優さんたちを見るのもすごく楽しみな作品です。
白香夏さん絶賛の映画ですから間違いありません(*^_^*)
我が町では年内の上演予定はありませんが(;ーー;)
みーちゃんさま
こんにちは!
コメントどうもありがとうございます。(*^_^*)
そうなんですよね~。
劇場が都会のミニシアターに限られる点、本当に残念です。
とてもいい映画なので、そのうちどこかオンラインで見られるプラットホームででも配信されるといいのですが。
コン・ユさんとパク・ぽゴムさんの『徐福』は劇場公開の他にオンラインでも配信されたので、コロナを機に家でも韓国映画を見られるサービスが普及して欲しいです。
イ・ジュニク監督、本作でも素晴らしい演出です。
私が以前韓国版の予告編を紹介した時の映像には出ているのですが、『王の男』の王様役だったチョン・ジニョンさんがこの映画でも王・正祖役で友情出演されてます。
そして触れるのを忘れておりましたがイ・ジョンウンさんが本当に大活躍でした。
イ・ジョンウンさんが出てくるだけで、説得力が画面いっぱいに広がりますよね。
みーちゃんさまにもきっといつかご覧になれる機会があるといいのですが。
秋も深まってまいりましたので、風邪など召されませんようご自愛くださいませ。
ありがとうございました。(^^)
こんにちは。白香夏さん。
ご無沙汰しております。大変な2年間でしたが、慌ただしく過ぎていき、もう年末とは泣けてきます。
なんだか呼ばれた気がしてやってきました(笑)。
祝!「茲山魚譜~チャサンオボ」日本公開!
実は有料で見られる韓国の正規映画サイトに会員登録して見たのです。見る前に時代背景を調べ、イ・ジュンイク監督が推薦していた韓国の小説「黒山」も読み、もちろん白香夏さんの以前書かれていたブログも拝読し、さまざまなネット記事を読み臨みました。
で。
だいたいストーリーはわかりました・・・。
が。
言葉が・・・、時代劇だし、ピョン・ヨハンさんの役は方言ですし、日本語字幕で見たいよーと切に願っていたので、本当に嬉しいです。
しかし! 言葉はわからなくても、良い映画は1シーン1シーンが多くのことを物語りますよね。ピョン・ヨハンさんとソル・ギョングさんの演技や繊細な表情も素晴らしいし、白黒なのに(白黒だから?)、この映像の大きな広がりはどうしたことでしょう。大きなスクリーンで見るのが楽しみです。
今年の百想の審査評の記事を読んだのですが、ユ・アインさんとピョン・ヨハンさんの票は1票差だったそうです。以下、記事抜粋です。
*****
ユ・アインは「チャサンオボ」のピョン・ヨハンと投票1票差で百想トロフィーを獲得した。特に男最優秀演技賞は毎年最も激しい部門で数えられるほど、今年も異変なしに5候補すべての審査員たちの愛情のこもった評価を受けたが、ユ・アインの存在感が少し優れていた。審査員は、「ユ・アインは昨年、映画産業的な側面でも一番ありがたい存在だ。早目に認められた俳優だから何をしてもうまく思ったが、よりよくやった。本人のイメージを変化させる恐怖がなく勇敢である。キャラクターへの適応も早い。ユ・アインの年であった」とし、「ユ・アインがあまりにも上手いとすでに知っていた俳優だったら、ピョン・ヨハンは再発見であった。これからとても良くしていく俳優としての可能性を再見せた。《チャサンオボ》の前と後のピョン・ヨハンは明らかに異なる」と説明した。
*****
ヨハンさん本人も「もう以前の僕ではありません」と「チャサンオボ」の会見で言っていたのですが、この記事を読んで本当に嬉しかったです。
(ユ・アインさんの受賞は納得です。Netflixでもうすぐ配信される「地獄が呼んでいる」も期待しています)
それにしても、変な日本語タイトルや、サブタイトル付きや、ファンシーなポスタービジュアルにならなくてよかった・・・原作リスペクトが一番です。
ピョン・ヨハンさんは出演した日本映画の「太陽は動かない」が11月10日から韓国で公開になり、映画通の韓国のみなさまにどんな評価を受けるかドキドキですが、楽しんでもらえたら嬉しいなあと思っています。
「チャサンオボ」、映画館で観たらまたお邪魔いたします!
eripodさま
こんにちは~!
本当にお久しぶりです!お元気でお過ごしでしたか?
コメントありがとうございます。(*^_^*)
eripodさまもご覧になられたのですね!それはなによりでした!
ピョン・ヨハンさん、本当に良かったですよね~!
以前監督のインタビュー記事を読んだのですが、監督は撮影現場の島にほぼ住んでいるかのような状態だったそうですが、監督の次に島の住人と化していたのがピョン・ヨハンさんだったとのことで。
本当にキャラクターそのものになり切っていました。
確かにセリフが時代劇の上に全羅道の方言なので、字幕なしではどうしても鑑賞に難しさが伴いますが、日本語字幕付きでご覧になることができるようになって、私も嬉しいです。
百想芸術大賞、ユ・アインさんとは一票差だったのですね!教えて下さってありがとうございます。
ユ・アインさんが『声もなく』で各種の賞を総なめにするのも勿論納得ですが、本当に、ピョン・ヨハンさんはもうなんというのか、ソル・ギョングさんと並んでも全く引けを取らない素晴らしい存在感と演技で、『茲山魚譜』の前後で異なるという評は頷けます。
うちのヨハン君、もうすっかり主演を任せられる「俳優」ですよね!
どんどん作品が公開されるので、私も楽しみに見ていきたいと思っています。
劇場での『茲山魚譜~チャサンオボ』鑑賞、是非楽しんでいらしてくださいませ。
お越しくださってありがとうございました。
気温も下がってきましたので、eripodさまもどうぞお風邪など召されませぬようお気を付けくださいませ。(^^)
こんにちは、白香夏さん。
「チャサンオボ(茲山魚譜)」、日本語字幕で2回観ました。
1回目は日本語字幕で見られるワクワク感で「わわわわわー」という感じで見てたのですが、2回目はユーモアがあって楽しく見られる中に、散りばめられている細部が、頭と心に入ってきました。
以下、ネタバレあります。
「朱子学はてごわい」という言葉が2回出てきました。1度目は丁若銓(チョン・ヤクチョン)が言われ、2度目はヤクチョンが昌大(チャンデ)に拒否されて言うのですが、朱子学の鎖が人や社会を縛っている時代なのですね。
末弟のチョン・ヤギョンはある意味、ベストセラーを出す学者(良い意味で)のような、という理解でよろしいのでしょうか・・・韓国歴史ドラマにも登場する有名人ですが、冒頭に正祖が「やはり弟より兄がよい」と言う一言がキーワードだった、ということも今回気づきました。最初に彼ら3兄弟を陥れる官吏たちも、一番怖いのは長兄のヤクチョンだから彼を始末したいのに、名分がないと言って策をめぐらせていたし。
結局、弟ヤギョンは赦免され、兄のヤクチョンは赦免されませんでした。どれだけヤクチョンの思想や存在が時の朝廷にとって脅威だったか、そこからイ・ジュンイク監督は、こんな物語に発展させたのが、さすがです!
でも、ヤギョンの弟子?が「なのに先生は何故つねに兄上様のヤクチョン先生を頼られるのか」(日本語字幕はそんな感じだったですが、多分「あなたのほうが立派な本を沢山出しているのに、どうしてお兄さんにそんなにへりくだるのか」というようなニュアンスだと思います)と言うほど、弟は兄を尊敬しているところが良かったです。
詩を詠めるということが、どれほどすごいことなのか、ということも初めてわかりました。「学問しただけでは詩は詠めない」とヤクチョンがチャンデに言うくだりがあってこその、お寺での詠詩合戦でチャンデの成長がわかるというストーリーの流れがありました。
「紙と筆があるとつい本を書いてしまう」という台詞がありましたけど、実は学ぶことは手段ではなく快楽だ、というテーマもあるんだなーと思いました。。儒学の四書、西学、海の生き物、イ・ジョンウンさん扮する島の寡婦の語る言葉の中にあるもの、すべて同等で。チャンデは学問を手段にしようとした心もあり、そこでヤクチョンに「別な考えがあるな」と見抜かれてしまったけど。でも、ヤクチョンにも書きたい書物への自分の欲があって、それにはチャンデが必要だという葛藤も見えたし、崇高な部分だけしか描かないわけではないのが、かえって深みを増していたと思います。
ピョン・ヨハンさんの探求心溢れるキラキラした目と、貝の声の話をするときの純朴な目と、学問して上に行ってやるというギラギラした目の対比、身分に遮られることに関しての諦めと怒りに満ちた目、本土に行ってからの苦悩と絶望の目。
前から思っていますが、彼は本当にイケメンですけど、それを超えて「役」が前に出てくるのは、その多彩な目の表情が大きいな、と改めて思いました。
それを見つめるソル・ギョングさんの枯れた、しかし懐の深いチョン・ヤクチョンの造形がまたすばらしかったです。チャンデがこれから通ろうとする道で、自分が経験してきたこと(挫折と現実)と対峙することがわかっているから、彼を心配しながらも、チャンデがやりたいことを止めてはいけないと見ている感じが伝わってきました。
地味ではあるけれど、いろいろなことを考えさせる本当に良い映画でした。最初に「hulu」のクレジットが出たから、そこで配信されるのかも。でも大きなスクリーンで見たほうが、映像の素晴らしさがわかりますよね、特に白黒映画なので。
ソル・ギョングさんが、青龍映画賞で、最優秀主演男優賞を受賞したとき「〈チャサンオボ〉で俳優賞を受けるなら、ヨハンに、という気持ちで来ました。本当に。ピョン・ヨハンさんにありがたく申し訳ないと思います」とスピーチしたのが、なんだかとても嬉しかったです。
長文、失礼しました。
eripodさま
こんにちは!
コメントどうもありがとうございます。(*^^*)
きゃ~、もう素晴らしすぎます!
このまま映画解説の雑誌に載って欲しいです!
さすがeripodさま!
ありがとうございます。感銘を受けながら読ませて頂きました。特に『「紙と筆があるとつい本を書いてしまう」という台詞がありましたけど、実は学ぶことは手段ではなく快楽だ、というテーマもあるんだなーと思いました。』と書かれていたくだりに。
本当にそうですよね!
売り込みたい、ああ、映画雑誌の批評欄にeripodさまの読み解かれた映画評を売り込みたい!(笑)
そう考えるとそのセリフすらも対比なのですよね。チョン・ヤクチョンとチャンデの。
深いです。深いな~。eripodさまの文を読み、今すぐまた見直したい衝動でうずうずしております。(笑)
今年の青龍映画賞は全般的に納得&見どころが満載で、私も取り上げようと思いながら時間が経ってしまっているのですが、時間が経っていようが後ほど取り上げますね!
私も仰っている「ヨハンに」のくだりに大感動してしまいました。(笑) ヨハン君、目潤んでたし!
素晴らしい映画評をありがとうございました!(^^)
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