みなさま、こんにちは。

毎日気が滅入るほどの酷暑ですね。
みなさまどうぞくれぐれも熱中症にお気を付けください。

さて、今日はドキュメンタリー映画をご紹介します。
大規模干拓事業で残った最後の干潟、「スラ干潟」を守ろうとする人々と干潟に生息する鳥たちを描いた『スラ(英題:Sura: A Love Song)』。

まずはポスター。

 

 

 

 

 

監督はファン・ユン(황윤)さん。
これまで5つのドキュメンタリー映画を発表されており、本作『スラ/수라』が6作目となります。

息子とともに全羅北道群山市に移住した監督が、再び干潟と干潟を守る人々と繋がり、干潟の鳥たちを追いかける7年間の記録が収められたこの映画。
監督は、以前セマングム防潮堤工事が行われた干潟を題材にした映画制作を進めていたものの、挫折しやめた経緯があります。
移住先にセマングム干拓事業で残った「スラ干潟」と地元の人々に呼ばれる干潟があり、もうすぐ駐韓米軍基地の新たな滑走路が作られる予定であることを知った後、監督は最後の干潟を守ろうとする人々と再び繋がることになるのですが、「セマングム市民生態調査団」の人々の自然を守ろうとする献身的な姿に胸を打たれただけでなく、そこに尊い生物たちがまだ死なずに息づいていることを知ったからでした。

 

 

みんなが終わったこととして記憶から消し去っていた「セマングム干拓事業」でしたが、このわずかに残った干潟に絶滅危惧種をはじめとしたさまざまな生き物が生きていたなんて。
それだけでも奇跡を目の当たりにした気分だったであろうことは、想像に難くありません。

1991年、盧泰愚政権の時に着工した国策事業「セマングム干拓事業」は全羅北道の扶安郡、金堤市、郡山市を結ぶ防波堤を築いて海水をせき止め、干拓地28,300ヘクタール、湖沼11,800ヘクタールを造成しようという国策事業です。
33.9kmに及ぶ防波堤は世界一の長さとしてギネスブックに掲載されているそうです。
「金堤平野」の別の呼び名「萬金平野」から名を取り、新たな(새)という意味をくわえてセマングム(새만금)と名付けられています。
開発こそが至上命題だった時代、疑うことなくその名前を付けたのでしょう。

海で魚や貝を取って生計を立ててきた漁民は生活の手段を奪われ、多くの生き物が死に絶え、海流をせき止められた海は淡水化どころか呪いの湖となって朽ち果てました。
無謀かつ人間の傲慢の極みである環境破壊を国策として推し進めたのは初めこそ保守政党でしたが、その後の民主党政権になっても変わらずずっと推進されてきたというのが、本当に人間の愚かさという他ありません。

でも、みんなが死んだと思っていたその干潟に、美しい渡り鳥たちが羽を休めに来ていたなんて。
世界に6000羽しかいないとされている絶滅危惧種のクロツラヘラサギやズグロカモメの姿がそこにありました。

 

 

 

 

 

映画は6月21日に劇場公開となり、現在までに3万7千人ほどの観客動員を数えています。

1万人入れば大成功と言われるのがドキュメンタリー映画界の現状で、上映館もほとんどないのですが、まるでスラ干潟そのもののように孤軍奮闘しています。ここにいるよ、ここにまだ死なずに生きているよ、と訴えかけるようです。

私は今月しばらくソウルに行っていたのですが、とても見たかったこの映画を真っ先に観に行きました。

本当にこんな場所があるのかと思うほど干潟の生き物たちは美しく、でも一体誰が得をするのかさっぱり分からないこの愚かな国策事業は、ブレーキのないブルドーザーのように人々を蹴散らしながら進められていて。
もう終わったことと思っていた自分が恥ずかしくなりました。
小さな劇場の中で響いていたすすり泣きとため息は、きっとみんな同じ気持ちなのでしょう。

異常気象や生態系の変化など、様々な形で行き過ぎた開発、自然破壊のツケを払わされている現在、この映画が本当に心に突き刺さりました。
人間が始めたことは、智慧と勇気を集めて人間が止められると信じたいです。

この映画、昨年の釜山国際映画祭でもドキュメンタリー部門にノミネートされ、年末に行われた「ソウル独立映画祭」では「観客賞」を、先月行われた第20回ソウル国際環境映画祭では「韓国部門大賞」を受賞しています。

取り扱っているのは韓国内の問題ですが、日本国内でも同じような問題を抱えているかと思いますので、ぜひ日本でも公開の機会があればと願っています。

 

では、予告編をご紹介します。
まずは釜山国際映画祭の編集した予告編。

 

私は数年前にソウルから群山に引っ越してきた。
セマングム干拓事業30年

私はいつしか「目撃者」から「被害当事者」になりつつある。

「今更なぜ埋め立てをやめろというのか」と言われたら、「現場に来たことはあるのか」と尋ねたいです、本当に。

奇跡みたいなもんですよ。本当に驚きました。
「お前たち、一体どうやって10年間生き延びてきたんだい?」って。
人々はみんな言うんです。「全部死んだよ」って。
でも、それも干潟なんですよ。干潟という名前を捨てなければ、いつかは干潟として蘇ると思うんです。
干潟だったのだから、干潟と呼んであげなきゃ。そうしてこそ蘇らせられる。

 

予告編をもう一つ。
こちらは『スラ』のメイン予告編です。

 

一日二回、満ち潮と引き潮が繰り返され、星のようにたくさんの命が干潟で生まれ、育つ。
スラ村はあらゆる貝と生物であふれ、金色の砂がきらめく漁村だった。
私たちがまったく知らなかった最後の干潟「スラ」の物語
セマングム干拓事業は、海を堰き止め、干潟を埋め立てる事業だ。
世界最大の防波堤は、世界最大の生態破壊を意味した。
シロチドリが抱卵してるよ!
人々はみんな言うんです。「全部死んだよ」って。
でも、それも干潟なんですよ。干潟という名前を捨てなければ、いつかは干潟に戻るから。
スゲ!
法定保護種を見つけました。
空港をなくして、干潟!
奇跡のように生き残った命たち
全部なくなったと思ってました。でも耐えていたんです。
あまりにも美しいんですよ。

頼むから埋め立てだけはしないで欲しい。
海を望む
スラ

 

まずいですね。
予告編見たら、また鼻先がツーンときてしまいました。
ただの涙もろい人なんじゃないかと、日々自分を疑い始めておりますが。(笑)

もうほんとにね、誰が得する事業なの?誰も求めてないし得しないよね。
なのになんで止めないの?
っていう怒り。
しかもいらない米軍滑走路をまたここに作るというんですから、もうほんとにね、マジでね、怒るよ、って。
ええ、なります。なりました。

なかなか人間は愚かですよね。
喉元過ぎれば熱さもケロッと忘れ。
でもこうして日々地球が壊れたとしか言いようのない世界的な異常気象に直面すると、自分の国が犯す環境破壊が自国にとどまらず、ひとつの海を共有し、同じ空を抱く世界全体、地球上の生き物すべてに災いとなって、いずれ自分たちに帰ってくるのはもはや疑いようもないので。

せめてこういう映画をひとりでも多く見て、一緒に考えていけるきっかけになればと願います。