みなさま、こんにちは。

ゴールデンウイーク初日、いかがお過ごしですか?
なかなかお天気が全国的によろしくないようですが、みなさまのお出かけの日は晴れるといいですね。

さて、引き続き百想芸術大賞。昨日行われた授賞式でお披露目された「特別ステージ 石つぶて」を取り上げてみようと思います。

百想芸術大賞といえば、ここ数年話題になっているのが、特別な意味を付与した「特別ステージ」。
時にはどんな受賞スピーチよりも胸を打つメッセージ性が込められていたりしますよね。
2017年の「特別ステージ」は、まだ世間に知られていない無名の俳優たちが『夢を見る』と題した舞台に立ち、「俳優であり続けることが夢だ」、「俳優と呼ばれることが夢だ」と語る映像に、華やかな場に招待された主役クラスの俳優たちがみなさん涙を流していました。(過去記事はコチラ

今年の特別ステージは『石つぶて(돌팔매)』と題し、「弱者」をテーマに行われました。

ガッセことGOT7のパク・ジニョンさんが映画『クリスマスキャロル(邦題:聖なる復讐者)』で知的障害を持つ弟と、弟の復讐をする双子の兄の一人二役を演じ、百想芸術大賞の映画部門新人賞を受賞されたのですが、今年はこの1年間にドラマと映画で公開されたあらゆる「社会的弱者」の物語を織り交ぜながら、実際に演じた俳優さんたち6人が特別ステージに立ちました。

パク・ジニョンさんとともにステージに立ったのは、先日私もご紹介した、映画『次のソヒ』の主演、キム・シウンさん。
キム・シウンさんも新人賞を受賞されたんですよね。
他に、映画『同じ下着を着るふたりの女』でDV被害者を演じたイム・ジホさん、『次のソヒ』でソヒ同様に実習でひどい目に遭った実習生を演じたカン・ヒョノさん、映画『キョンアの娘』ではDV被害者を、ドラマ『アンナ』では聴覚障がい者を演じたキム・ジョンヨンさん、そしてウ・ヨンウの子ども時代を演じたオ・ジユルちゃんが舞台を務めました。

MCのジスちゃんの言葉で始まる冒頭。

「 いつもそうであったように、私たちは単純で平凡な日常を生きています。学校に行き、職場に通い、友人に会って互いにどうしていたか尋ねます。
お元気ですか?私たちは本当に、元気だったのでしょうか?
昨年1年間、大衆文化芸術は平凡な日常を送ることができない誰かの物語に、安寧ではなかったあなたの物語に、耳を傾けていました。聞いていました。
だからこそ百想は流れる水のようだったあなたの日常に、大きくうねる波を立てようと思います。私たちが気付いていなかったその場所で、苦しみ、粉々になっているあなたに、この物語をお伝えします」。

 

そして映し出された映像には、この1年間映画やドラマで取り上げられてきた登場人物たちのシーンが次々と映し出されます。

 

「できません。つらいです」

「どういうつもりなんだ」

「ウザ ブス リサイクル不可 失せろ」

「誰もあんたを守らないってことよ、ドンウン。警察も、学校も、あんたの親もね。それを5文字で言うとなーんだ?社・会・的・弱・者」

「お前らの何が問題か分かるか?怠け者のバカのくせに、人並みに暮らそうとするからそのザマなんだよ」

「何が正常なんですか?」

「口がきけなくて、電話ができないんです」

「私は、自閉症スペクトラム障がいがあるため、言葉がたどたどしく、行動がぎこちないかもしれません」

「私がなんでこうなったと思って?私だって嫌なんだよ。こんなふうに生きるのが」

「私が毎日どれほどつらかったか、どんな気持ちで生きているか、少しでも考えたことある?」

「僕もこんなふうになりたくなかった」

 

かいつまんでほんの少し見るだけでも、胸が詰まるシーンの数々ですよね。
そんなつらいシーンの後、6人の出演者による歌が続きます。
イ・ジョクさん原曲の「石つぶて」をアレンジしたものとなっています。

では、特別ステージの公式動画をどうぞ。

 

僕らは互いに違う
互いに似た存在だったら むしろそのほうがおかしい
僕らは同じなはずがないんだ
人生とは言うならば それを知ること

けれど誰かが君のことを
単に違うからといった理由で苦しめるなら
その時は 僕らは一つだよ
石つぶてを見て見ぬふりはできない

Get up 一緒に抱き合って起き上がろう
土を払って 僕らは互いに味方なんだ
Hands up 再び手を差し出そう
しっかりと握って一歩ずつ歩んでいこう

僕らは完全なる他人だよ
互いのすべてを理解することなどできない
僕らは時には敵だ
同じ場所に向かって競うこともある

けれど誰かが君のことを
単に違うからといった理由で苦しめるなら
その時は 僕らは一つだよ
石つぶてを見て見ぬふりはできない

Get up 一緒に抱き合って起き上がろう
土を払って 僕らは互いに味方なんだ
Hands up 再び手を差し出そう
しっかりと握って一歩ずつ歩んでいこう

「誰かには言いなさい。私にでもいいから。大丈夫だから」
「ありがとうございます」

「いまはみすぼらしくても、一度花を咲かせたら誰より明るく輝くはずだよ」
「突き破っていくわ」
「ファイト」
「逃亡じゃなく、希望よ」
「産まれてくれてありがとう」
「私の人生は奇妙で変わってますが、価値があり、美しいです」
「私たちみんなが幸せだったらいい。熱く太陽が上ったみたいに。曲がったところなどなく」

Get up 一緒に抱き合って起き上がろう
土を払って 僕らは互いに味方なんだ
Hands up 再び手を差し出そう
しっかりと握って一歩ずつ歩んでいこう

「お願い。あなたはあの人たちとは違うと言って」
「土を払うんだ。僕らは互いの味方なんだから」
「傷だらけの私の手をもう一度つかんで」
「しっかり握って一歩ずつ歩んでいこう」

 

完全に泣かせにかかってますよね。

参りました。(笑)

この曲を知りませんでしたが、イ・ジョクさん、恐ろしいですね。
こんないい歌まで作ってたんですね。

 

今回の百想芸術大賞は、実はもう一つ、とても意義のある方の受賞がありました。
演劇部門演技賞に、脳病変障がいの俳優ハ・ジソンさんが選ばれたのです。

 

 

 

タキシードにセウォル号追悼の黄色いリボンをつけてこられた時点で、私などはもうウルっときてしまいます。

今回選ばれた演劇は、米国の劇作家マイク・ルーの代表作『ティーンエイジ・ディック』。
シェイクスピアの「リチャード3世」を脳性麻痺高校生の話に脚色したもので、昨年11月に韓国初公演が行われました。
障がいを持つがゆえにいじめに遭うリチャードが、生き残るために強くなろうと決意し、生徒会長なろうとする過程で自らの障がいまで利用する欲望の物語だそうですが、主人公リチャードを演じたハ・ジソンさんが舞台部門演技賞を受賞されたことで、百想芸術大賞もより一層世の中から認められる授賞式になったのではないかと思います。

 

ハ・ジソンさんの受賞スピーチもご紹介します。

 

ゆっくりお話しします。
テレビをご覧の視聴者のみなさま、そして芸術家の同僚、先輩後輩のみなさま、そしてここにいらっしゃる観覧客のみなさま。
こんにちは。『ティーンエイジ・ディック』でリチャード役を務めた俳優ハ・ジソンです。
ここに来てみて、非障がい者の環境で私がリチャード役として言うなら、学生会の学生会長になった気分です!
すみません、何を言うべきか思いつかなくて。
1分という持ち時間があって、1分以内に話さないといけないのですが、障がいを利用してあと1分だけ使わせて頂きます。
こんなふうに思ったことがありました。『ティーンエイジ・ディック』を演じる中で、たくさんのセリフと3時間の舞台に立つこと自体がすごく怖くて緊張したのですが。にもかかわらず演出家と俳優のみなさまが私のつらさを察して下さるので、ずっと舞台にいようとし、ずっと舞台で演じていました。
そして、少しの間であろうとより多くのセリフに少しでも挑戦したくて、舞台にいるというのもあります。
そうしたことをすべて待ってくださり、一緒に認めてくださった演出のシン・ジェユンさん、ありがとうございました。
すごく緊張しています、今。なのでゆっくり思い出しながらお話しします。
また、俳優の皆さん、ヘリ、ガリン、ソジョン、わがヌナ、ヨンス、そしてプロデューサーの皆さん、サポートマネージャー、他にも私が忘れている方がいましたら、個人的にご連絡します。
この賞は私にとっては重いです。なぜなら私は、演技が上手ということが何なのか分からないからです。ですが舞台に立てば上手にやりたいですし、やろうとしますし、ずっと舞台に存在し続けようとします。
もうすぐニュースルームなのにすみません。
私とこれまでの道のりを共にした劇団員たちと一緒に栄光を分かち合いたいです。
お母さん、お父さん、弟/妹ジュヨン。こんなに大きな賞を頂いたよ!
そして、現実を重要視する父に一言言わせてください。
これも、現実だよ!
最後に。もっと健康になり、自分の体を守り、健康でいられるそんな俳優に、それを自分自身でやれる、そんな俳優になります。
ありがとうございました。

 

「もうすぐニュースルームなのにすみません」などと緊張の最中にもユーモアを交えてのスピーチでした。

現実を見ろというのが口癖のお父さんに一言、「これも現実だよ」と舞台の上から伝えられたのが印象的でしたよね。
この舞台に立つまでに、大変な経緯と努力がおありだったと思います。
受賞、おめでとうございます。

いやー、ほんとに。
やってくれますね、百想芸術大賞。
授賞式での華やかな歌手たちによるステージも勿論素敵なのですが、個人的にはこうして俳優の役割とは何か、大衆芸能の意味とは何かを自ら考え伝えていく姿勢に、より一層の共感を覚えます。
俳優さんたちの姿勢や眼差しがいつも真摯で温かく、こういうところが文化の力にも繋がっているんだよなと、また改めて感じた授賞式でした。

今回の百想芸術大賞はいちいち取り上げたいスピーチばかりで、ほんと、困ります。
というわけで、まだ続く予定です。(笑)